「常用派遣」も壊滅…

昨年10月以降、ことし3月までに解雇された、あるいは解雇する予定となっている非正規雇用の労働者は15万7000人。1月調査から約3万3,000人の増加。ただしこれは、事業所への任意の聞き取りをもとに集計したもの。これが「派遣切り」「期間工切り」のすべてだと思ったら大間違い。

ところで、「毎日新聞」の記事で、ちょっとびっくりしたのは、同じ派遣でも、「登録型」(人材派遣会社に登録だけしておいて、仕事があったときだけ、雇用関係が生じる)ではなく、派遣会社に常用雇用されている「常用型」の83%が失職していること。

他方で、旧グッドウィルが製造業派遣から撤退。日研総業も派遣労働者は4割減となり、自社社員の希望退職を募り始めた。労働者派遣法の改正が議論になっているが、すでに派遣の時代は終わりつつあるのかも知れない。

雇用情勢:派遣先解除、「常用」82%が失職 非正規は15万人――厚労省調査(毎日新聞)
旧グッドウィル、製造業派遣撤退 技術者派遣4千人削減(朝日新聞)

雇用情勢:派遣先解除、「常用」82%が失職 非正規は15万人――厚労省調査

[毎日新聞 2009年2月27日 東京夕刊]

 厚生労働省は27日、来月までの半年間に職を失ったか、失うことが決まっている派遣など非正規雇用労働者が15万7806人(今月18日現在)に上るとの調査結果を公表した。前回調査(1月26日時点)から約3万3000人増加した。派遣先から中途解除された調査対象者のうち、雇用が安定しているとされていた「常用型」の派遣労働者の8割以上が失職していることも新たに判明。雇用情勢悪化の深刻さがさらに鮮明になった。
 調査は、全国のハローワークなどが聞き取りで行い、11月から結果を公表し今回で4回目。毎回数万人単位で人数が増えている。今回は初めて、派遣先から中途解除された派遣労働者のうち2万1088人について派遣会社から状況を聞いた。派遣会社に無期、あるいは有期更新を繰り返す形で雇用され、安定した雇用とされた常用型派遣では、1万2456人のうち1万320人(82.9%)が、派遣先の中途解除で派遣会社から契約を切られるなどして失職していた。雇用が継続したのは1630人(13.1%)に過ぎなかった。
 派遣会社に登録して派遣され、不安定とされる登録型では89.4%が失職し、雇用継続は5.8%だった。
 厚労省は今国会に提出した派遣法改正案で常用型派遣へ誘導する方針を打ち出しているが、調査結果は常用型の不安定さも示した。
 一方、15万7806人の内訳は、派遣が10万7375人(前回比2万1632人増)で全体の68%。他は期間労働者2万8877人▽請負1万2988人▽パートなど8566人。いずれも前回から増加した。業種別では製造業が約96%を占めた。パートでは卸・小売業での解雇が1187人と多かった。
 契約途中での中途解除や解雇は6万5333人、期間満了の雇い止めは7万9393人で、共に増加。失職で住居を失った人は確認分だけで3085人(前回比410人増)だった。
 就職内定の取り消しは、大学生で1280人(前回比271人増)、高校生294人(同88人増)。
 派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「経済の悪化はもちろんあろうが、常用型でも安定していないという間接雇用の矛盾が噴き出した形だ」と話している。【東海林智】

■ことば
◇常用型派遣

 派遣会社に常時雇用されている労働者。期間を定めることなく働いている者が基本だが、一定期間を定められている者でも、契約が反復更新されている者も含まれる。契約が中途解除されても、次の派遣先が見つかるまで、派遣会社の雇用が継続するとされていた。設計などの技術職などに多く、仕事がある一定期間だけ働く登録型派遣より雇用が安定していると言われていた。

ということで、厚生労働省の関連資料はこちら↓。

厚生労働省の一連の資料を見ると、たとえば、失業給付の受給者の割合は65.2%。実際、こんなに受給割合が高いのかどうかもちょっと疑問ですが、それは別にしても、受給資格ありと推定される人は87.6%で、12.4%は受給資格があるにもかかわらず受給していない、ということになります。実数では約8万人。このあたり、もっときちんと受給できるようにできないもんでしょうか。

旧グッドウィル、製造業派遣撤退 技術者派遣4千人削減

[asahi.com 2009年3月2日22時40分]

 人材派遣大手のラディアホールディングス(旧グッドウィル・グループ)は2日、製造業派遣事業から完全撤退すると発表した。また、4月15日付で技術者派遣部門の正社員の25%にあたる4千人を削減する。製造業派遣からの撤退や技術者派遣の大規模なリストラが明らかになったのは、大手では初めて。
 事務系派遣を減らす動きも広がっており、急成長を続けてきた派遣業界も急速に業務の縮小を迫られている。
 同社は製造業への「登録型派遣」を手がける子会社を6月までに売却する。同社の技術者派遣は全員が「常用型派遣」の正社員で、3月末に契約更新する例が多いが、今年は更新時期を待たずに解約されるケースが増えている。管理部門500人も減らし、グループ全体の15%にあたる4500人を削減する。
 同社は違法派遣が相次いで発覚し、08年7月に主力だった日雇い派遣事業の廃業に追い込まれた。製造業派遣も縮小し、正社員の技術者をメーカーに派遣する技術者派遣への特化を進めてきた。だが、需要の急減で中核事業も大幅削減に追い込まれた。
 派遣先の減産に加え、「派遣切り」をきっかけとする派遣制度への批判や製造業派遣禁止を含む労働者派遣法改正の議論も影を落とす。
 製造業派遣最大手の日研総業は、自動車や電機などの工場で働く1月の派遣社員が前年同月比4割減。正社員対象の希望退職制度を新設した。
 製造業派遣が3割を占めるスタッフサービス・ホールディングスの本原仁志社長は「派遣切りなどと強く批判されたため、禁止されなくても、製造業派遣の大規模な活用は期待できない」とみる。
 製造業への派遣・請負会社で作る業界団体は、3月末までに40万人が失職すると試算している。(小室浩幸)

     ◇

 〈常用型派遣と登録型派遣〉 「常用型」は派遣会社が正社員などとして長期に雇用する。技術者に多く、派遣先がないときも給与を保証する。「登録型」は仕事がある期間だけ数カ月単位で派遣会社と契約を結ぶ。事務系や製造業の生産現場で多く、仕事がある時だけ給与を支払う。

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