いまをときめく西本智実さん。まだ一度も聴いたことがなかったのですが、マーラーを振るというのでミューザ川崎まで出かけてきました。
颯爽と登場した西本さん。要所要所はしっかりポーズも決めて、まるでタカラヅカのよう。
しかし残念ながら、演奏の方は、ポーズほどには決まらなかったようでした。こないだの飯森範親×マーラー交響曲第7番のときもそうだったのですが、どうも第1バイオリンがしっくり来ません。マーラーらしい“艶めかしさ”が感じられませんでした。それから気になったのは、フルートにやたら大きなタンギングをさせていたこと。西本さんはいろいろと歯切れのいい演奏をやろうとしたのかも知れませんが、どうもねらったようにはうまくいかなかった感じです。
そんな中で、救いだったのはソリストの2人。伊原直子さんの独唱をドイツ語の歌詞を追いかけながら聴いていると、本当に大きな苦悩、大きな責め苦の中にいる人類への思いが伝わってくるようでした。そして、合唱のなかから浮かび上がってくる澤畑恵美さんのソプラノは、本当に天上の響きのようです。会場には、西本さんの意向で字幕(電光掲示)もつけられていました(対訳は西本さんによるもの)。
それにしても、会場に着いてみると、やっぱりクラシックファンというより西本智実ファンというお客さんがあちこちにいらっしゃいました。会場中そんなお客さんばかりでは? と事前に心配していたほどではありませんでしたが、何が大変かって、1時間を超える演奏時間がもたないのか、後半になるにつれてゴソゴソガサガサ。咳も増えるし…。挙げ句の果てに、8時になったときには時計のアラームまで鳴る始末。ちょうど第5楽章に入る静かなところで、最悪のタイミングでした。バンダが舞台の袖で演奏するだけで、何あれ?みたいな雰囲気でざわつくし…。オイラの右隣は、明らかに西本ファンと思われる奥さんに連れられてきた、これまた明らかにクラシックには興味のなさそうな旦那で、これが寝るし、プログラムはぱらぱらめくるし。左は左で、音楽をやっていると思われる彼女にくっついてきたやさ男で、普通にしてても鼻息が荒い上に、リズムをとるし、寝るし…。あ〜、なんとかしてくれ〜〜!!
さらに、ホール内にはステージ上も含めて4台以上のカメラが配置されて、各方面から西本智美さんの指揮ぶりを撮影していました。まあ、そういうこともありえますが、困ったのは、オイラ(2階LA)の席のちょうど真向かい(2RA)に据えられたカメラに張り付いていた男性――なぜかここだけ、女性のカメラマンとは別に上司らしき男性が張り付いていたのですが、この男性が演奏中にちょこちょこ動いて非常に目障りでした。それから、第5楽章の途中では、ステージ上のカメラマンが突然倒れこんでしまって(理由は不明)、トロンボーンとチューバの奏者が少々あせっておられました。すぐに本人が起き上がったので、演奏が中断されるようなことはありませんでしたが、音楽に集中したい演奏家には迷惑この上ない話です。
ま、西本智実さんが振るという以上、こういうことになるのは覚悟していなければならないんでしょう。(^^;) 会場で配られていたチラシによれば、9月にはマーラーの5番を振られるようです。是非こんどはマーラーらしい艶っぽい演奏を期待します。
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【演奏会情報】 東京交響楽団特別演奏会
指揮:西本智実/ソプラノ:澤畑恵美/メゾ・ソプラノ:伊原直子/合唱:東響コーラス/管弦楽:東京交響楽団/コンサートマスター:グレブ・ニキティン/会場:ミューザ川崎シンフォニーホール/開演:2009年3月11日 午後7時