社会運動史研究者の塩田庄兵衛先生が先月亡くなられていたことを新聞で知りました。
大学・大学院で日本史を専攻したとはいえ、僕は近世史、塩田先生は近現代の労働運動史ということで、学生・院生時代は先生の著書の熱心な読者ではありませんでした。しかし、その後、小選挙区制導入反対などで先生が呼びかけ人となって学者・文化人のアピールを発表するときなどに実務的な仕事をお手伝いをさせていただき、先生のご自宅もお訪ねしたことがありました。先生からは「回りから実務作業はどうしているんだと聞かれるので、『最近、優秀な秘書ができた』と答えているんだ」とおっしゃっていただいたこともあります。
そんなおり、「僕がはじめて読んだ『共産党宣言』は角川文庫のもので、塩田庄兵衛訳でした」とお話したら、たいそう喜んでいただきました。機会があれば、ぜひその本にサインをいただこうと思っていたのですが、その後、ご病気になられお見舞いにうかがうこともかなわず、そのままになってしまったのが残念です。
塩田先生、安らかにお休みください。
東京都立大・立命館大名誉教授の塩田庄兵衛さん死去(朝日新聞)
東京都立大・立命館大名誉教授の塩田庄兵衛さん死去
[asahi.com 2009年4月2日23時58分]
塩田 庄兵衛さん(しおた・しょうべえ=東京都立大名誉教授、立命館大名誉教授・経済学)が3月20日、肺炎で死去、87歳。葬儀は近親者で行った。後日、お別れの会を開く予定。喪主は長男博(ひろし)さん。
日本の社会運動史・労働運動史研究の第一人者で、「日本社会運動史」「幸徳秋水」などの著作がある。日本学術会議や非核の政府を求める会などで活動した。
塩田先生は「ぼくはテイコク主義者です」といっていました。「テイコク」はもちろん「帝国」ではありません。「定刻」です。井出洋さんを偲ぶ会の司会をおねがいしていたのですが、ぴったり開会時刻に開口一番そう言ったのです。
さて、塩田先生がチェコだったかカイロだったから細川嘉六さんあてに出した絵葉書が細川さんの遺品に含まれています。そのコピーを差し上げたらびっくりしていました。
その細川さんの葬儀の記録には、ありし日の細川さんがタバコの煙をくゆらしている写真が掲載されているのですが、「あの写真はぼくが最初の給料で買ったライカ?fで撮ったんだ」とのこと。で、(おそらく複製でしょうが)プリントしたのがたくさんありますよ、といったら手元にないから一枚ほしいというので、さしあげたことがありました。