共産党が発行している雑誌『議会と自治体』2009年4月号。巻頭2論文や特集「雇用・地域経済と自治体」で、各地での「派遣切り」とのたたかいをとりあげている。
なかでも、福島県、三重県、広島・福山市の3人の議員さんの手記は、「非正規切り」で文字どおり仕事と同時に住むところも失いつつある労働者たちを励まし支え、労働組合づくりを支援しているとりくみが紹介されていて、読み応えがあった。
雇い止めされたという派遣労働者から話を聞き、ハローワークや労基署に実態の聞き取りや懇談をおこない、直接企業にも雇用維持を申し入れるなど、共産党議員のとりくみが紹介されているだけではない。
広島・福山市のシャープ関連企業の派遣労働者の話は感動的でさえある。
シャープが派遣労働者を全員解雇するらしいという情報を得てから、ともかく実態をつかもうと、党員、支持者、「しんぶん赤旗」読者などあらゆるつてをたどって、派遣社員とのつながりを探した。ようやく12月15日付ですでに解雇されたという女性に話を聞くことができた。それが12月20日のことだ。翌21日には、その女性が友人を誘って、地域労組の事務所に2人がやってきた。さらにその人たちが他の派遣社員に連絡をとって、22日の広島市内での国会報告会に9人が参加。翌日には23人が労組事務所に集まり、全員がその日に労働組合に加入して「シャープ関連労働組合」を立ち上げた、という。できすぎた話のようだが、労働組合が待たれていたということだろう。互いに名前も知らなかった派遣労働者どうしが、どんなふうに語り合って、労働組合結成を決意したのだろうか?
いろいろな人の支援で、ようやく雇用促進住宅に入居が決まっても、電灯は自分で用意しなければならないから、最初の夜は真っ暗な部屋で生活をスタートさせたのだという。そこに、「しんぶん赤旗」の折り込みチラシを見て、食料品、電気製品、毛布や衣類、募金が多数寄せられる。
いま、「非正規切り」にあった労働者、青年が労働組合をつくったり、加入したりして立ち上がっているけれども、その背後には、このように共産党の議員や労働組合のはたらきかけだけでなく、共産党の党員や支部の人たち、さらに無数の地域の人たちの支援がある、ということが伝わってきて、胸が熱くなる。
巻頭の吉永純「『派遣村』が突き崩した生活保護行政の“壁”」は、「派遣切り」などで仕事と住居を同時に失って、食うや食わずの困窮状態に陥っている人たちがともかく生活保護を申請していく上で、実践的にも非常に有益な論文。
生活保護については、長い間ホームレスでは申請さえ受け付けないという状況が続いてきたけれども、同論文は、住居がなければ生活保護の申請ができないというのは誤解であり、運用として間違っているということを明確に指摘している。「年越し派遣村」のとりくみの中で、日比谷公園を現在地として生活保護申請が受け付けられたが、これは特例でも何でもなく、ほんらい生活保護制度とはそういうものなのだ。
同論文はまた、昨年12月に東京都が出した通知「雇用状況悪化に対する福祉事務所の相談援助体制について」(2008年12月22日付、20福保生保第749号)を紹介して、生活保護をまともに運用していく上で非常に重要な意義をもっていることを詳しく解説している。通知そのものも資料として紹介されているので、活用を期待したい。
【書誌情報】
誌名:『議会と自治体』2009年4月号/発行:日本共産党中央委員会出版局/定価:760円(税込み)/送料:84円
一般書店か、共産党事務所で申し込めば入手可。直接申し込む場合は日本共産党中央委員会出版局03-3470-9636へ。