すでにあちこちで話題になっている『理論劇画 マルクス資本論』(かもがわ出版)。私もようやく手に入れました。(^_^)v
このマンガは、もともと門井文雄さんという方が1982年に描かれたもの(大陸書房刊)ですが、それを今回は、マンガ評論家の紙屋高雪氏が一部再構成して再刊(新刊?)されたものです。また、新しく10項目の「解説」がつけ加わり、いまの金融危機や派遣労働の問題をとりあげ、より現代的に仕上げられています。
この『理論劇画 マルクス資本論』の最大の魅力は、紙屋氏も解説で指摘されていますが、ドレス工場での女性労働者の「たんなる過労死」やシーニアの「1時間」など、マルクスが当時の労働者がどんな状況に置かれていたかを告発した部分を、ページを割いて、しっかり描き込んであることでしょう。「ここがロドス島だ、ここで跳べ」のところも、わざわざイソップ童話の話までマンガに描かれています。マルクスが『資本論』で何を明らかにしようとしたか、たんに理論にとどまらない迫力、面白さが伝わってきます。
で、紙屋氏には申し訳ないですが、大陸書房版と比べながらぱらぱらと読んでみました。
あちこち「再構成」されたところがありますが、そのなかでも大きく変わったのは、まず価値論のところ、とくに、2つの商品の交換という事実から、価値の実体が人間労働の支出であることを導き出すあたり。それから、市場経済での等価交換のルールを守りながら剰余価値を導き出すところ、そしてシーニアの「1時間」に関連して、固定資本部分の価値移転と、可変資本部分の価値創造(剰余価値の生産)との関係の説明、それに相対的剰余価値の生産の説明、などでしょうか。(他にも気づいたところがありますが、全部書いてしまったのではせっかくの新機軸が艶消しになってしまうので、やめておきます)
大陸書房版のときは、門井さんは、おそらく金子ハルオ『経済学の学習』(新日本新書)などを手がかりに、独力でマルクスの理論をマンガ化されたのでしょう。理論にかんしては、相当てこずったと思われます。しかし、そうした部分がしっかり「再構成」され、理論的にもより的確に、すっきり分かりやすくなっています。ご苦労さまでした。m(_’_)m
ということで、『資本論』の雰囲気を味わってみたい、という人にはお薦めの1冊といえるかも知れません。
【書誌情報】
書名:理論劇画 マルクス資本論/原作:門井文雄/構成・解説:紙屋高雪/協力:石川康宏/出版社:かもがわ出版/発行:2009年4月/定価:本体1,300円+税/ISBN978-7803-0257-8