井村喜代子『「資本論」の理論的展開』(4)

ノートはまだまだ続きますが、本のほうはそろそろ読み終わりつつあります。引き続き、井村さんの『恐慌・産業循環の理論』(有斐閣、1973年)にとりかかりたいと思います。

第4章 マルクスの相対的過剰人口論にかんする一考察

初出:『三田学会雑誌』第53巻第4号、1960年。論争史的なところは1960年に書かれたものだということをふまえて読むこと。

はじめに

・『資本論』における相対的過剰人口の分析は、「資本一般」体系たる『資本論』の論理次元によって限定をうけている。(84ページ)
・すなわち、『資本論』第1部第7篇「資本の蓄積過程」では、「資本はその流通過程を正常な仕方で通過することが前提」されている(K,I,589)ほか、大小の資本の対立・競争もそれ自体としては分析されていないし、産業循環の変動・恐慌も分析対象となっていない。
・したがって、商品市場の資本制的制限と変動のもとで、そこにおける諸資本間の対立・競争のもとで、資本蓄積と生産力発展・資本の有機的構成高度化の「現実的」運動がいかにすすみ、相対的過剰人口の「不断の形成、その大なり小なりの吸収、さらにその再形成」(K.I,661)がいかに展開するかは、部分的には言及されていても、分析課題にはなっていない。(85ページ)
・第3部第3篇第15章でも、「資本主義的生産の総過程」において資本過剰と人口過剰の併存する事態がとりあげられているが、そこでも分析は、基本的に「資本一般」の枠内にとどまっており、資本過剰と人口過剰の併存する事態がなぜ、いかにして生じるのかは解明されていない。

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