「水際作戦」と言っていましたが、もはや日本国内が渡航制限すべき「蔓延国」状態。検疫も、外国が日本からの飛来便に実施した方がいいんじゃない、という状況では、もはや続ける意味がありません。
また、各地の「発熱外来」も、電話が殺到したり、発熱者が直接やってきたり、すでに相当混乱しているようです。もともと、「発熱外来」は、新型インフルエンザが疑われる発熱者が、一般の病院で、他の人と接触しないようにと設置されるもの。そこに、新型インフルエンザではない人が直接やってきてしまったのでは、「発熱外来」を設置する意味がなくなってしまいます。
しかし、一般病院には「新型インフルエンザかもしれないから」といって診察を断られ、なおかつセンターに電話しても通じないとなれば、発熱した人が直接発熱外来にやってくるのは当然です。「発熱外来」を設けて患者を区別する、というやり方は破綻しているのではないでしょうか。
世界の感染者数、9665人…日本は4番目(読売新聞)
機内検疫を週内にも終了…政府、感染拡大防止に重点(読売新聞)
メキシコへの「渡航延期勧告」解除へ…外務省方針(読売新聞)
クローズアップ2009:新型インフル 発熱対応「限界寸前」(毎日新聞)
世界の感染者数、9665人…日本は4番目
[2009年5月19日01時11分 読売新聞]
新型インフルエンザの世界の感染者数は19日、メキシコで500人以上、米国で400人以上増え、日本を除くと40か国・地域で、9665人になった。
死者は、4か国で計78人。
日本の感染者数は、英国やスペインを超え、米国、メキシコ、カナダに続いて4番目に多い。
機内検疫を週内にも終了…政府、感染拡大防止に重点
[2009年5月19日03時09分 読売新聞]
政府は新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の国内感染の広がりを受け、これまで重視してきた水際対策から感染拡大防止に重点を移す方針だ。
旅客便の機内検疫を週内にも終え、医療体制充実などを図ることにしている。同時に、弱毒性と見られることを踏まえ、高齢者や乳幼児、基礎疾患のある患者以外に自宅療養を認めることなどを盛り込んだ、より柔軟な対応策を新たにまとめる考えだ。
舛添厚生労働相は18日、厚労省で緊急に記者会見し、「検疫に人的資源を集中することから、国内対策にシフトすることは必要だ」と述べた。現在はメキシコ、米本土、カナダからの旅客便で実施している機内検疫を週内にもやめる方針だ。
厚労相はまた、「政府の専門家諮問委員会から『感染力、病原性等の性質から見て、(新型は)季節性インフルエンザと変わらないという評価が可能』と報告を受けた」と述べた。その上で、「新たなH1N1(新型インフルエンザ)を前提とした新しい対処方針に切り替えた方がいいのではないか」と語った。
政府の行動計画は、国内発生早期の場合、感染者はすべて指定医療機関に入院すると定めている。新たな対応策には、こうしたケースでの自宅療養も認めるなど柔軟な対応を盛り込む予定で、今後1週間程度をめどにまとめる。
政府のこうした対応は、地方自治体や企業が強く要請したためだ。政府はすでに強毒性の鳥インフルエンザを想定した行動計画を弾力的に運用し、「外出の自粛要請」「企業への業務縮小要請」などは見送っている。それでも、18日に厚労相を訪ねた大阪府の橋下徹知事が「国が方針を出してくれると自治体はやりやすい」と訴えるなど、政府により柔軟で具体的な対応を示すよう求める声が強い。
麻生首相は18日、首相官邸で記者団に、「病気をお持ちの方は重篤化する確率は否定されていない。今の状況をきちんと見極めた上で柔軟に、適切に対応していく」と述べた。
メキシコへの「渡航延期勧告」解除へ…外務省方針
[2009年5月19日11時29分 読売新聞]
外務省は19日、新型インフルエンザの発生地とされるメキシコへの渡航延期勧告を週内にも解除する方針を固めた。
日本への入国者の査証(ビザ)免除も再開する。
インフルエンザが弱毒性であることに加え、日本を含めた世界各国に感染が拡大し、メキシコだけに厳しい対応をとる必要がなくなったためだ。メキシコ政府も日本政府に対応の見直しを求めていた。今後は他の感染国と同様、渡航者に十分な注意を呼びかけるにとどめる。
外務省は先月28日、メキシコへの不要不急の渡航延期に加え、在留邦人に早期退避の検討を勧告する感染症危険情報を出していた。
クローズアップ2009:新型インフル 発熱対応「限界寸前」
[毎日新聞 2009年5月18日 東京朝刊]
新型インフルエンザの感染が拡大する大阪や兵庫では、急増する受診者への対応に医療機関が苦慮している。保健所の発熱相談センターには電話が殺到し、検査キットなどの不足を訴える医師も多く「限界に近づきつつある」と悲鳴が上がる。感染がさらに広がれば、診察する医療施設は発熱外来から全施設に広げられる。だが、診療した医師が「濃厚接触者」として自宅待機させられたり、感染しても休業補償する制度はなく、国の対策の不十分さが浮かんでいる。
◇やまぬ電話、医師に休業補償なし――大阪・兵庫
「1週間分の相談電話が1日でかかってきた。電話が鳴りやまない」。大阪府の発熱相談センターの担当者は疲れた表情を見せた。
各保健所などのセンターには17日午前までの24時間で1039件の相談が寄せられた。大阪市のセンターに17日午前9時?午後5時半に381件、神戸市のセンターには16日588件の相談が殺到し、パンク寸前だ。回線を増やすなど対応する方針だが、情勢は不透明だ。
神戸市では、発熱相談センターの電話につながらなかった人などが、相談なしに市内の医療機関の発熱外来に直接来院するケースも相次いでいる。担当者は「現場は混乱して戦場のようだ。受け入れ能力は限界に近づきつつある」。電話がつながらなかった人に対応するため玄関前で独自に簡易検査をする民間病院まで現れた。
17日、新型インフルの感染拡大を受けて開かれた大阪府医師会の臨時代議員会。代議員の医師たちが「検査キットもタミフルも足りない」と窮状を訴えた。会場でアンケートしたところ、出席者の25%が検査キットを備えていないと答え、大半がタミフルなどの備蓄が不十分と答えた。
感染者は日々増加している。代議員会では「(数日内に)パンデミックになる」と指摘する医師もいた。感染症指定医療機関は大阪、京都、兵庫の3府県で計168床に過ぎない。感染が拡大すれば指定医療機関ではない一般医療機関が対処することも考えられる。
実際、国の行動計画は対策が第3段階の「まん延期」に入ったら、入院を重症者のみに絞り、軽症者を自宅療養に切り替えるとしている。「間もなく私たちが(新型インフルの治療を)引き受けざるを得なくなる」。医師たちは、タミフルなどの入手が困難な状況を訴えながら、行政に早急な対策を求めた。
16日にあった神戸市医師会の会議では新型インフル患者を診察した開業医が、他の患者に感染を拡大させる可能性があるとして厚生労働省に休業を“指導”されたことが報告され、開業医から不満が噴出した。こうしたケースについて厚労省は、医療の萎縮(いしゅく)を招かないよう近く対応の手引きを示すことにしており「患者と医師の双方が、(効果のある)不織布マスクを着けていれば濃厚接触者にならないのではないか」と話す。
一方、日本医師会は、発熱外来で働く医師が新型インフルエンザに感染した場合の休業補償を求めているが、厚労省は「医師確保のため契約でいろいろな対応をしている自治体もあるが、国としての休業補償は難しい」と説明する。【野田武、酒井雅浩、田中龍士、清水健二】(中略)
■視点・新型インフル
◇軽症者の隔離、入院は不要――元世界保健機関鳥インフルエンザ薬物治療ガイドライン委員会委員の菅谷憲夫・けいゆう病院小児科部長の話
国内感染が確認されたばかりであり、国民感情を考えれば、最初は休校や行事中止などの措置も仕方ない。だが、政府は今回の新型インフルエンザの症状が季節性インフルエンザと変わらない、と説明している。それならば、従来の季節性インフルエンザと同様の対応をすればよいのではないか。
休校するとしても、対象は発生した学校だけで十分だ。子どもが保育園や学校へ行けなくなると、親も仕事を休まなければならなくなる。その社会的なマイナスの方が大きい。
患者が増えれば、発熱外来から患者があふれるだろう。今後は、すべての病院・診療所が通常通り診察すればいい。軽症者を隔離して入院させることも不要だ。海外渡航歴などの有無を診断基準にすることもナンセンスだ。
大阪府の橋下徹知事が国に季節性インフルエンザと同様の対策を求めたことは、理解できる。水際対策から国内の医療体制整備に切り替える時期だ。
過度に恐れる病気ではない。だが、発症48時間以内の治療薬の投与や、持病のある人への適切な治療体制の確保は欠かせない。【聞き手・江口一】
感染が確認されていない地域でも、すでに混乱が始まっています。「38度以上の発熱のある人は、直接医療機関を訪れず、まず発熱相談センターへ相談を」という方針のために、かえって一般病院で発熱者の受信を拒否するケースが出ています。
病院側の心配もわかるし、実際、神戸では、厚生労働省が、高校生を最初に診察した病院に「休業」を指導しており、医者としても、気軽に診察することができない状況です。
医療現場も広がる不安 国内感染拡大「どう対応」 / 西日本新聞
医療現場も広がる不安 国内感染拡大「どう対応」
[2009/05/19付 西日本新聞朝刊]
国内での感染拡大が続く新型インフルエンザ。九州でも自治体などが地元での感染拡大を想定して準備を進めているが、医療現場では混乱や不安の声も上がっている。
「38度以上の熱がある方は診察できません」。18日朝、福岡市城南区の内科医院を家族と訪れた男子高校生(17)は受付でそう告げられた。「発熱相談センターにご相談ください」
高校生の家族はすぐに福岡県保健衛生課に電話。担当者は海外渡航歴がなく、兵庫県や大阪府にも行っていないことを確認し「通常の医療機関で問題ない」と回答した。家族は再び内科医院に連絡したが、答えは同じだった。高校生は結局、発熱外来のある市内の別の病院を受診。B型インフルエンザと分かった。
各自治体は発熱などを訴える市民に、まず「発熱相談センター」に相談するよう呼び掛け、新型インフルエンザ感染が疑われる場合は発熱外来の受診を勧めている。
では、どのような場合に「感染が疑われる」のか。厚生労働省の定義によると(1)38度以上の発熱または急性呼吸器症状(鼻汁、のどの痛み、せきなど)がある(2)7日以内にまん延国または地域に滞在(3)感染者と接触‐となっている。一方で厚労省は発熱外来を設けていない一般の医療機関に「発熱相談センターの指導に従って発熱者が受診した場合は診察すること」と通知している。
だがこれらは国内感染の発生前の段階。福岡県医師会幹部は厚労省の定義について「見直しが必要な段階に入ったのでは」と発熱外来の対象拡大の必要性を指摘。一般医療機関での受診について「感染すれば重症化が懸念される慢性疾患患者や妊婦などを抱える医療機関では難しい」と話す。
だが、国内での感染拡大を受け、医療現場からは逆の不安も漏れる。
熊本市で唯一の感染症指定医療機関の熊本市民病院は地元で感染が拡大した場合、患者の集中が予想されるが、隔離病室の数に限界があり「他の病院にも協力をお願いする」。北九州市医師会も「医師や看護師が不足する可能性がある」と懸念する。
佐賀県では県内で感染拡大の場合、医師会全体で応援態勢を取ることを決めているが、同県医師会は「経済的補償やタミフルの予防投与をどうするか。国や県は考えてほしい」と話した。
それにしても、この神戸の病院を「休業」させた厚生労働省はいったい何を考えているんでしょうねぇ。そんなことをすれば、そのうち町中の病院が「休業」することになりかねません。
同じことは、保育所や学校の一斉休所・一斉休校についてもいえます。実際にインフルエンザ発症者がでたときは、もちろんそういうことはありえますが、そうでないところも含めて一律に休校措置をとれば、看護師さんだって、子どもをどこに預ければよいか困ってしまうはず。そのために看護師が病院を休むようなことになれば、本末転倒もいいところ。過剰反応は混乱を生むだけではないでしょうか。
「読売新聞」には、こんな記事も出ていました。
休校 「病気より破壊的」…EU警鐘
[2009年5月19日 読売新聞]
新型インフルエンザ感染者が続出している米ニューヨーク市では、18日現在、感染者が集中するクイーンズ区を中心に計11の小、中、高校で休校措置が取られている。だが、米疾病対策センター(CDC)は、感染者が出た学校に「即休校」を求めた当初方針を5月初め取り下げており、今は、感染者がいても授業を続ける学校が多い。トーマス・フリーデン市保健局長も17日の声明で、休校措置により、「生徒間の感染速度が遅くなる」とする一方、「市全体の感染状況は変わらない」と限界を認めた。
ウォール街やブロードウェーでビジネスやミュージカル公演を自粛する動きもない。ヤンキースタジアムで16、17日行われた野球の試合はほぼ満席で、いつもの熱気のこもった応援が繰り広げられた。
感染者が100人を超した英国でも、休校措置は限定的で、感染者が出ていない学校を休校にした例はない。企業活動の制限もない。日系メーカーの現地法人によると、英保健省からは、新型インフル対策に関する指導や行動計画の策定要請など一切なく、東京の本社の指針に従って、メキシコへの出張自粛などの措置をとっているという。
欧州連合(EU)の医療政策立案を担う欧州疾病対策センターは、休校や集会自粛が社会に及ぼす影響について、「病気そのものより破壊的になる可能性がある」と、警鐘を鳴らす。休校措置に関しては、学校に行かない児童・生徒の面倒をだれが見るか考慮する必要があると指摘している。(ニューヨーク 白川義和、ロンドン 是枝智)
ところで、今日の夕刊は、驚くほど新型インフルエンザの扱いが小さくなっているような気がするのですが。はたして、政府の対処方針見直しのせいなのでしょうか……。
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