昨日、オバマ米大統領は、ホワイトハウスでキッシンジャー氏らに会ったあと、あらためて「アメリカは核兵器の脅威を減らし、最終的にはなくすためにロシアや各国と協力しながら指導力を発揮することが求められている」と、核兵器廃絶をめざす決意を示しました。
こうやって考えると、共産党の志位和夫委員長の核兵器廃絶に向かっての行動を求めた書簡に、オバマ大統領が返書を送ってきたというのは、たまたまのことではない、ということが分かるし、返書の中味も、オバマ政権としてよく考えたものになっている、ということが分かります(つまり、オバマ政権が真剣に日本政府との協力を願っている、ということです)。
今日、有明コロシアムで開かれた共産党の演説会で志位委員長が語ったところによると、オバマ大統領の返書を受けて、志位委員長はさっそく麻生首相に党首会談を申し入れ、本日午後、会談がおこなわれ、その場で、日本政府としても核兵器廃絶を正面にかかげた協議をただちに開始するようにイニシアティブを発揮するように申し入れたそうです。
しかし、麻生首相は「今まで聞いた大統領の演説のなかでもっともすごい演説だ」とは言ったものの、みずからイニシアティブをとるというような明確な回答はなかったとか……。世界が核兵器廃絶に向かって動き始めようというときに、被爆国・日本の総理大臣がこれでは、困ったもんです。(-_-;)
米大統領 核兵器削減へ決意 : NHKニュース
核廃絶へイニシアチブを=米政府から返書受け、首相に要請?共産・志位氏 : 時事通信
米大統領 核兵器削減へ決意
[NHKニュース 5月20日 10時46分 ]
アメリカのオバマ大統領はキッシンジャー元国務長官など外交問題の重鎮と会談し、最終的には核のない世界を目指して核兵器の削減などを進める考えを強調しました。
オバマ大統領は19日、ホワイトハウスにかつて共和党政権の国務長官だったキッシンジャー氏とシュルツ氏、民主党政権の国防長官だったペリー氏、それに上院軍事委員長を務めた民主党のナン氏を招いて会談しました。4人は党派を超えて核の廃絶を呼びかけていることで知られています。会談後、オバマ大統領は「アメリカは核兵器の脅威を減らし、最終的にはなくすためにロシアや各国と協力しながら指導力を発揮することが求められている」と述べ、最終的には核のない世界を目指す決意をあらためて示しました。そしてロシアとの間で戦略核兵器の削減を進めるとともに、あらゆる核実験を禁止する「包括的核実験禁止条約」の発効を目指す考えを強調しました。
これに対し、シュルツ元国務長官も「われわれは全員、オバマ大統領の核政策を全面的に支持している」と応じました。オバマ大統領は「北朝鮮やイランが核兵器の開発能力を高めているときこそ、こうした取り組みは意味がある」と述べ、核大国のアメリカやロシアが軍縮を進めることで、核を持たない国による核開発の広がりに歯止めをかけたいとの考えを示しました。
核廃絶へイニシアチブを=米政府から返書受け、首相に要請?共産・志位氏
[時事通信 2009/05/20-19:47]
共産党の志位和夫委員長は20日夕、国会内で麻生太郎首相と会談し、オバマ米大統領あてに核兵器廃絶を訴えた書簡に対する返書が米国務省から届いたことを伝えた上で、日本政府が核兵器削減に向けて国際社会を積極的にリードするよう求めた。
志位氏は「唯一の被爆国として、核廃絶を主題とした国際交渉を開始するイニシアチブを取ってほしい」と要請。同氏によると、首相は「核兵器を持っている国が(核廃絶を)呼び掛けたことが一番大きな意味だ。驚き、注目している」と、オバマ大統領が核廃絶を掲げたプラハ演説を評価。一方、首相は「北朝鮮の核問題が進まないと、なかなか核廃絶にいかない面もある」との認識を示した。
ところが、この返書について、産経新聞は「共産党おおはしゃぎ」と揶揄する記事を載せました。インターネット版では見出しそのものが「おおはしゃぎ」となっていますが、さすがに実際の紙面では、これはいくら何でもまずいと思ったのか、共産党ウォッチャーの言葉として引用する形になっています。
いずれにしても、産経新聞は、核兵器廃絶という日本国民の願いをまじめに取り上げる姿勢も立場もないことを自分で明らかにしてしまったものといえます。
共産・志位氏、オバマ米大統領から返事もらいおおはしゃぎ! – MSN産経ニュース
共産・志位氏、オバマ米大統領から返事もらいおおはしゃぎ!
[MSN産経ニュース 2009.5.19 18:04]
共産党の志位和夫委員長は19日の記者会見で、核兵器廃絶を訴えたオバマ米大統領のプラハ演説を「心から歓迎する」と評価したオバマ氏宛の自身の書簡に対し、米政府から返書が届いたことを明らかにした。
返書は16日に東京・千駄ケ谷の共産党本部に国際郵便で届いたといい、「あなた(志位氏)の情熱をうれしく思う。私たちは核廃絶の目標に向かって具体的な前進をつくり出すために日本政府との協力を望んでいる」などとしている。
志位氏は、「さまざまな意見を聞く耳を持った大統領が生まれたと実感している」と述べた。書簡は4月28日に志位氏が米大使館を訪れ、ズムワルト駐日米臨時代理大使にオバマ氏宛の書簡を手渡していた。
これにたいして、たとえば北海道新聞は、NPT準備会議の動きを詳しく紹介し、核兵器廃絶への前進を望む立場を明確に打ち出していて、産経新聞とは大違いです。
社説:NPT会議 核廃絶の機つかみたい : 北海道新聞
NPT準備委、「勧告」案見送り 体制強化の議論は前進 : 北海道新聞
社説 : NPT会議 核廃絶の機つかみたい
[北海道新聞 2009/05/16]
来年五月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け、ニューヨークの国連本部で準備委員会が2週間にわたって開かれた。
再検討会議は5年に1度開催される。その1年前に議題などを調整するのが、準備委員会の役割である。
前回2004年は核軍縮を重視する途上国とそれを拒む米国が対立し、議題を設定できずに決裂した。
今回は核軍縮と核拡散防止を柱とする20項目の議題が合意に達した。しかも加盟約190カ国の全会一致による決定だ。
オバマ米大統領の核廃絶への積極的な姿勢が追い風になっているのは明らかだ。機能不全に陥ってきたNPT体制が再始動しつつある。こう言っても過言ではなかろう。
この機会をとらえ、核軍縮から最終的な核廃絶への流れをより強固なものにしたい。
今回の準備委員会にはオバマ氏がNPT体制の再建を訴える異例のメッセージを寄せた。唯一の被爆国である日本からは広島、長崎両市長がそろって出席した。
演説では秋葉忠利・広島市長が「二度と被爆者を生んではならない」と語り、田上富久・長崎市長も「核のない世界に向けた流れを確実なものにしていこう」と呼び掛けた。
被爆地の訴えに、会場から拍手が鳴りやまなかった。
両市長は米国務省を訪れオバマ大統領の広島、長崎訪問も要請した。
こうした行動が軍縮論議を強く後押ししたと言えよう。
米ロ間では12月に失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新たな核軍縮条約を締結する動きが加速している。7月にはオバマ大統領がロシアを初訪問し、交渉が実質的にスタートする。
だが、米国が旧東欧諸国に配備を進めるミサイル防衛(MD)構想に対するロシア側の不信は払拭(ふっしょく)されていない。北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大にも反発している。
こうした不信を取り除くためにも、核軍縮のプロセスをどう具体化していくかについて論議を深めていくことが不可欠だ。
オバマ大統領は4月のプラハ演説で、「核兵器を使用した唯一の核保有国として行動する道義的責任がある」と明言した。これに呼応して、日本政府も「核のない世界」への取り組みを推進する意思を表明した。
核軍縮に関する国際会議を来年初めに日本で開催する方針を打ち出したのもそのひとつである。
オーストラリア政府とともに再検討会議に提出する政策提言も準備中だ。NPT体制の再構築に向け日本は積極的な役割を担っていきたい。
NPT準備委、「勧告」案見送り 体制強化の議論は前進
[北海道新聞 05/16 11:33]
【ニューヨーク15日共同】今月4日から開かれていた2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた準備委員会が15日、閉幕した。委員会では核軍縮機運の高まりを受け、NPT体制強化問題で実質協議入りするなど議論は前進したが「核軍縮目標の設定」などの具体策を盛り込んだ「勧告」案については最終的に合意できず、採択は見送られた。
準備委は最大の焦点だった同会議の「議題」を開幕3日目という異例の速さで採択。その後、シディアスシク議長(ジンバブエ)が同会議の「たたき台」となりうる勧告案を提示、一時は合意直前まで行ったが加盟国間の意見の違いが埋められず、合意できなかった。
同議長は閉幕後に記者会見し、オバマ米大統領の核廃絶構想などで「委員会は終始雰囲気が良く、議題が早々と決まるなど大成功だった」と強調。勧告案については「ボーナスのようなもの。会期の2週間での合意は難しかった」と指摘した。
また米、中国、ロシア、英国、フランスの核保有5大国の代表団が共同声明を発表、持続的な核軍縮への努力を約束した。
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