すでに出ていることは知っていたのですが、書店のマルクス・コーナーをいくら探しても見つからず途方に暮れていました。それもそのはず、実はマルクス・コーナーではなく、マンガ売り場にならんでおりました。(^_^;)
前作『まんがで読破 資本論』は、「蟹工船」をヨーロッパのどこかのチーズ工場に置き換えただけみたいなストーリーで、いまひとつの出来だったのですが、『続・資本論』の方は、読み応えもあって、なるほどこれが資本論かと思わせる、なかなか面白い内容になっています。
どこが違うのかと思ったら、『続・資本論』では、より多くの剰余価値の獲得をめざすという資本の本性がストーリー展開の中心にすわっているから、のようです。
資本家企業がより多くの儲けを手に入れようと、新製品の開発や工場の拡張など、「生産のための生産」に突き進み、労働者の搾取を強め、失業や貧富の格差が拡大する様子が説明臭くならず、マンガらしいストーリーで展開されています。
商業資本が登場して、いわゆる「流通過程の短縮」の仕組みも取り上げられているし、競争相手の企業が登場して、おたがいに銀行から資金を借りていっそうの生産拡大に突き進んだあげく、過剰生産になって不良債権が増え、銀行が倒産する、というところまでストーリーが展開しています。
細かく言えば、チーズ工場の社長(ロビンズ)とは別に、投資家のダニエルを登場させることによって、資本家自身が競争法則に強制されて「生産のための生産」に突き進まざるを得ない側面や、最大の利潤を上げるためには冷徹に損得計算をすすめる資本の本性などが、無理なく説明できている、というのがいいのかも知れません。
さらに続編では、マルクスの盟友、エンゲルスを登場させて、理論的な説明の一部をエンゲルスにおこなわせていますが、それでも、何でもかんでもマルクス(あるいはエンゲルス)が説明してゆくというような展開ではないので、決して理屈臭くなっていません。
とはいっても、あくまでマンガ。『資本論』の理論を筋を追って展開している訳ではないので、これを読んで『資本論』が分かったということはできませんが、『資本論』でマルクスが何を言いたかったのか、というその勘所は分かるのではないでしょうか。
このマンガをきっかけに『資本論』そのものに関心をもつ人が生まれてくれるとうれしいものです。
【書誌情報】
書名:まんがで読破 続・資本論/企画・漫画:バラエティ・アートワークス/出版社:イースト・プレス/発行:2009年5月/定価:本体552円+税/ISBN 978-4-7816-0124-3