雑誌「Pen」の8月15日号が、本の紹介ページで、不破哲三『マルクスは生きている』(平凡社新書)を取り上げています。
評者は、「マルクスについて、誤解していた」「マルクスの思想は、たんなる社会主義のススメではない。あなたが身を粉にして働いているのは、いったい誰のためなのか。働くことの意味をじっくり考えさせる一冊だ」とコメントしています。
評者は、「さらに興味深いのは、日本共産党の書記局長、委員長、議長を歴任した著者が、ソ連とはいかなる存在であったかについて言及する部分」とも述べています。
評者はマルクス関係の本を初めて読んだようですが、不破さんの言いたいところをなかなか的確につかみだしていると思います。お見事です。
たんなる社会主義のススメではない、格差や不況をどう考える?
[Pen 2009年8月15日号]
『マルクスは生きている』
ライター:今泉愛子マルクスについて、誤解していた。旧ソ連など社会主義国の思想的背景にある、ちょっと厄介な経済学者だと思っていたのだ。マルクスは、資本主義のもとでは労働者は搾取される一方だと主張した。労働者と言われても、つい他人事のように聞き流してしまうが、よく考えれば日本で働く私たちのほとんどは労働者だ。ブルーカラーもホワイトカラーも、正社員もフリーターも雇われて働く限りは労働者。私たちは一体、何を搾取されているか。過剰な労働によって得られた富だ。労働者が給料以上に「頑張って」働いた分は資本家のポケットに入る。だから格差が生まれるのだ。企業の潤沢な内部留保の一方で、ボーナスカットや派遣切りはたしかに矛盾している。
マルクスは著書『共産党宣書』のなかで、恐慌についても、資本の利潤第一主義から起きた、死に至る病と解説する。資本家が需要以上にモノをつくるから、モノが売れなくなる。これは、現在の世界的な金融不況にもあてはまる。資本主義の問題点を解決するには、どうすればいいのか。現代にマルクスを読む意義はそこにある。
マルクスはなぜ誤解されやすいのか。60年以上にわたって研究し続けてきた著者は、マルクスを、どんな研究についても自分の到達点に安住しない人だった、と記す。それなのに、マルクスの理論の一部を知っただけで、自らを「マルクス主義者」とする学者の何と多いこと。マルクス自身も「それがマルクス主義であるならば、私はマルクス主義者ではない」とロにするほどだったらしい。マルクスの思想は、常に発展した。そんな思想家としての偉大さも見えてくる。
さらに興味深いのは、日本共産党の書記局長、委員長、議長を歴任した著者が、ソ連とはいかなる存在であったかについて言及する部分。農民を集団で管理するやり方は、社会主義とは言えないとし、政府の体質化した覇権主義を徹底的に非難する。
マルクスの思想は、単なる社会主義のススメではない。あなたが身を粉にして働いているのは、一体誰のためなのか。働くことの意味をじっくり考えさせる一冊だ。
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