『資本論』の本筋とはなんの関係もないのですが…

『資本論』第1部第7章「剰余価値率」の第3節、有名な「シーニアの最後の1時間」の終わり近くに、こんなくだりが登場します。

【新日本版】 ……もし諸君が、諸君の「工員たち」から11時間半ではなく13時間を手に入れることに成功し、そして諸君は当然にそうすると思われるのであるが、超過した1時間半を単なる剰余価値につけ足すならば……(上製版Ia、387ページ、新書第2分冊、386ページ)

この下線部分。実は、戦前の河上肇訳では、次のようになっています。(仮名遣い等は、現代通用のものに直してあります)

【河上訳】 ……なお諸君が、諸君の織工を11 1/2時間でなく無理に13時間労働せしめ、かつその余分の1 1/2時間を全部剰余労働に加えるとすれば、――諸君にはそれらが全く同じものにみえるはずだが――……(改造社、616ページ)

ご覧のように、訳文が全く異なるだけでなく、「そうする」とか「それら」で受けているものが全然違っています。一体、どっちが正しいのか? なぜ、こんなふうに違っているのか? ささいな挿入部分で、ここでのマルクスの議論の筋とはなんの関係もないのですが、気になってしまいました。

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富士山

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台風の影響で、昨日は風と雨の荒天でしたが、今朝は一転して、雲一つない快晴。

駅前からは、雪をいただいた富士山がきれいに見えていました。

携帯で写してみたら、あまりに小さくしか写ってなくてちょっとガッカリ。肉眼だとでかく見えるんですけどねえ… (^_^;)

ウルグアイ大統領選 左派「拡大戦線」の候補が優勢

ウルグアイの大統領選挙で、左派で政権党「拡大戦線」の候補者が優勢を占めているものの、過半数に到達しなかったため、11月の決選投票にはいる見込み。

ウルグアイで大統領選、11月末に決選投票へ : CNN.co.jp

というのですが、CNNの記事を読むと、左派「拡大戦線」の候補者が勝っても、右派野党候補が勝っても、「同国の政策に大きな変化はないとの見方が強い」と書かれていて、いったいどういうこと? と思って、調べてみました。

で、見つかったのが共同通信の2つの記事。

ウルグアイ大統領選、決選投票へ 過半数届かず : 共同通信
25日にウルグアイ大統領選 「継承」唱える元閣僚優位 : 共同通信

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マルクス自身の手によるかどうかはともかく、分かりやすい『資本論入門』

大谷禎之介訳『マルクス自身の手による資本論入門』(大月書店)

大谷禎之介氏の翻訳で、ヨハン・モスト著『資本と労働』(第2版)の新訳が出ました。同書を大谷氏は196年に岩波書店から翻訳・出版されていますが、今回はその再刊ではなく、新しい翻訳、編集による新訳となっています。

本書は、ヨハン・モストという人が執筆した、『資本論』第1部のダイジェスト本『資本と労働』(第1版、1874年刊)に、マルクスが手を入れた改訂第2版(1876年)の翻訳です。「マルクス自身の手による資本論入門」というのは、大谷禎之介氏がつけたタイトルで、マルクス自身は、改訂第2版の出版にあたって、自分の名前を一切出さないように求めていました。

しかし、読んでみると、確かになかなかよくできた「資本論入門」になっていると思いました。

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爆裂プロコフィエフを見事に演奏!! 日フィル第614回定期演奏会

日本フィルハーモニー交響楽団第614回定期演奏会

ラザレフ月間の最後は、日フィルの定期。

  • チャイコフスキー:幻想的序曲《ハムレット》
  • モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調
  • プロコフィエフ:交響曲第3番 ハ短調 ?歌劇《炎の天使》による?

もちろん目玉はプロコフィエフの交響曲第3番ですが、1曲目、チャイコフスキーの「ハムレット」が、とても印象的でした。とくに途中のオーボエの旋律、いいなぁ?と思って聴いていたら、演奏が終わったあと、ラザレフは、オーボエ奏者の女性を立たせただけでなく、指揮台にまで引っ張り上げていました。実際、それほど見事な演奏でした。(^^;)

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Windows 7

Windows 7が発売になりました。

オイラが自宅で使っているPCは、Vista発売直前に買ったXP搭載マシン。もちろん! VistaにはUpgradeしていません。で、そろそろXPも飽きてきたのでWindows 7にUpgradeしてみようかと思って、Microsoftの診断プログラムを試してみました。

ダウンロードの詳細 : Windows 7 Upgrade Advisor

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ちょいと気分転換に…

松岡和子訳『ヘンリー6世 全3部』(ちくま文庫)

資本論のドイツ語とにらめっこしていると、その世界に完全に引き込まれてしまって、なかなかそこから抜け出すことが出来ません。

そこで、気分転換に、こんなものを買ってみました。ちくま文庫のシェイクスピア全集の最新刊、松岡和子訳『ヘンリー6世』です。

これまでも、気分転換のために『源氏物語』を読んだこともあります。さすがに、古文では難しいので、円地文子訳でしたが、それでも文章に神経を集中させないと、すぐに筋が分からなくなります。シェイクスピアも同じで、資本論の世界からちょっと気分転換するのに、ほどよい難しさ?です。(^^;)

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"自己を発現する労働力"って?

唐突ですが、新日本出版社の『資本論』を読んでいると、「自己を発現する労働力」という表現がところどころで出てきます。たとえば、第5章「労働過程と価値増殖過程」の冒頭。

【邦訳1】 労働力の使用は労働そのものである。労働力の買い手は、その売り手を労働させることにより、労働力を消費する。労働力の売り手は、労働することによって、"現実に"自己を発現する労働力、労働者となるが、彼はそれ以前には"潜勢的に"そうであったにすぎない。自分の労働を商品に表わすためには、彼はなによりもまず、その労働を使用価値に、なんらかの種類の欲求の充足に役立つ物に表わさなくてはならない。(新日本出版社『資本論』上製版、Ia、303ページ。新書版第2分冊、303ページ)

「発現」とは、「実際に現われ出ること。現わし出すこと」です(『新明解国語辞典』第4版)。つまり、労働力が「自己を発現する」というのは、植物の種が(一定の条件さえあれば)ほったらかしておいても、おのずと芽を出し花開いていくように、労働力も、おのずから、他の助けなしに、おのれの力だけで自分自身を表に現わして、労働となっていくかのようです。

しかし、マルクスは、労働力を、こんなふうにヘーゲルばりの「生きた主体」として、本当にとらえていたのでしょうか? この「自己を発現する労働力」というのは、ドイツ語では sich betätigende Arbeitskraft です。そこでまず、『資本論』第1巻のなかで、この表現が出てくる箇所を調べてみました。

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厚生労働省が相対的貧困率を初調査

日本の厚生労働省が、貧困率を初めて調査。

日本の貧困率は15.7% 厚労省が初公表 : 朝日新聞

で、厚生労働省の発表資料がこちら↓。といっても、ペーパーは3枚だけですが。

厚生労働省:相対的貧困率の公表について

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素晴らしいメンデルスゾーン〈讃歌〉 読響第165回東京芸劇名曲シリーズ

読売日響東京芸術劇場名曲シリーズ(2009年10月19日)

昨日に続けて、今日も池袋の東京芸術劇場へ。今日は、読売日響の演奏会です。今シーズンは定期ではなく、セレクト(4回)で来年3月のスクロヴァチェフスキの3公演を押さえ、残った1回を、今日のコンサートにしました。(^^;)

  • バッハ(レーガー編曲):〈おお人よ、汝の大きな罪を嘆け〉 BWV.622
  • ヒンデミット:チェロ協奏曲 変ホ長調 op.3
  • メンデルスゾーン:交響曲第2番 変ロ長調 op.52 〈讃歌〉

選んだ理由は実に安易で、指揮が下野さんだったこと、それにソリストが澤畑恵美だったこと。しかし、ついでで選んだコンサートでしたが、初めて聴いたメンデルスゾーンの交響曲第2番は実に素晴らしい演奏でした。

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ヴォカリーズの魅力&日フィルの音ってこんなに綺麗だったの?! の巻

日フィル第189回サンデーコンサート(2009年10月18日)

ラザレフ月刊第2弾!! ということで、池袋の芸術劇場に行って参りました。(^^;)

  • ハチャトゥリアン:バレエ音楽《スパルタカス》より
    • 情景とクロタムルスの踊り
    • スパルタカスとフリーギアのアダージョ
    • アイギナとバッカスのバリエーション
  • グリエール:コロラトゥーラ協奏曲
  • ラフマニノフ:ヴォカリーズ
  • チャイコフスキー:交響曲《マンフレッド》

今日もラザレフさんはノリノリでした。(^^;)

で、2曲目と3曲目は、ソプラノの幸田浩子さんが歌うのですが、歌詞はなく、「ア〜、アアア〜」と歌い続けるヴォカリーズです。でも、それがとてもいいんです。2曲目なんて、このヴォカリーズの歌声とオーケストラのコンチェルト。実際、歌とオケとの掛け合いなんかもあって、思わず聞き惚れてしまいました。

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今週の「九条の会」(10月15日まで)

全国各地の草の根でがんばっている「九条の会」の活動を、インターネットのニュースの中から拾い集めました。

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ぎりぎりセ?フ (^_^)v

東京アメッシュ(2009年10月14日19時15分)

仕事帰り、中央線に乗っていて、そろそろおりなきゃと思って外を見ると、けっこう激しい雨が降っていました。

ところが、改札を出てみると、雨は降っていませんでした。

とりあえず「早く帰らないと降り出すぞ」と自転車を飛ばして帰ってきましたが、自宅に着いてから東京下水道局の「東京アメッシュ」で都内の降雨状況を調べてみたら、雨はちょうど中央線の北側だけで降っていたようです。(^_^)v

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明治憲法「不磨の大典」は実は見掛けだけ

歴史科学協議会の『歴史評論』2009年11月号で、名古屋大学の増田知子氏が「日本近代史における憲法研究の展開」という論文を書かれている。

憲法史研究の新動向などを取り上げた短い論文だが、そのなかで増田氏は、明治憲法(大日本帝国憲法)について「政治権力の規制という点では空疎な憲法」であり、「『不磨の大典』は装飾にすぎなかった」と指摘されている。

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ラザレフ×日フィル×ロシア・バレエ音楽

日本フィルハーモニー交響楽団第334回名曲コンサート

先月は、読響×スクロヴァチェフスキ月間でしたが、今月は日フィル×ラザレフ月間。まずその第1弾である名曲コンサートへ。

  • プロコフィエフ:バレエ音楽《シンデレラ》組曲より
  • チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》より

しかし、2時開演のところを2時半開演と勘違い ((実は、18日のサンデーコンサートが2時半開演で、それと勘違いしたのです。))して、サントリーホールに着いたのは2時6分…。残念ながら、前半は3曲目から、LD席の後ろでの立ち見でした。(^^;)

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飯守泰次郎×東京シティフィル×ミサ・ソレムニス

東京シティフィルハーモニック管弦楽団第232回定期演奏会

8日は台風18号のおかげで、首都圏は午前中、交通機関(といってももっぱらJR東日本ですが)が大混乱しましたが、それも昼頃までには何とかおさまり、夕方から初台の東京オペラシティで、飯守泰次郎氏指揮の東京シティフィルのコンサートへ行ってきました。プログラムは、

  ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス ニ長調 作品123

ベートーヴェンが作曲した、この壮大なミサ曲。日フィルが2005年に演奏会をやっていますが、聴きに行った記憶がありません。(^^;) というわけで、生演奏で聞くのは初めて。

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