8月の失業率が発表されました。5.5%で7ヵ月ぶりに0.2ポイント改善されたということですが、失業者数は増えているし、就業者は減っています。
これでなぜ失業率が下がるの? と思って調べてみました。
8月の失業率、7カ月ぶり低下 求人倍率最悪続く : NIKKEI NET
失業率:8月5.5%、前月比0.2ポイント改善 : 毎日新聞
総務省の発表資料はこちら↓から。PDFファイルが開きます(302KB)。
完全失業者数、完全失業率には、「原数値」と「季節調整値」という2つの数字があります。
で、原数値を調べれてみると、8月の失業率は5.4%で、7月と変わっていません。それが季節調整値になると、7月5.7%、8月5.5%で0.2ポイントの改善、という結果になっています。つまり、0.2ポイント改善は「季節調整」のなせる業、ということです。
原数値でいうと、完全失業者数は7月の359万人から8月の361万人へ、1万人増加しています。他方で、労働力人口(完全失業率を計算するときの分母になる数字)も7月6,628万人から8月6,657万人に増加していて、その結果、完全失業率(原数値)は5.4%で変わらず、という結果になります。
これが季節調整値になると、完全失業者数は7月376万人から8月362万人へと減少。それに対して、労働力人口は7月6,600万人から8月6,621万人へと増加したので、失業率は5.7%から5.5%に下がったということになります。
このように数字を見てみると、今回の0.2ポイント改善は、まったく季節調整によって出てきた数字であることがわかります。
もちろん、「季節調整」には必要な面もあります。失業者数や失業率には、たとえば、4月は新卒者や3月年度末で解雇される人がいたりして求職者が増えるので失業率が高くなるとか、12月や1月は年末・年始で仕事が休みになるので、一時的に失業する人が増えるとか、いろいろ季節的な変動を受けます。だから、原数値で前月に比べて失業率が上がった、下がったというと、それが季節的な要因なのか、それとも趨勢として失業が増えている、あるいは減っているのか、それがわかりません。そこで、季節的な要因を考慮して数値を計算しなおす、というわけです。
しかし、「季節調整」は、あくまで1つの経験的・統計的な調整作業であって、絶対に正しいわけではありません。今回の0.2ポイント改善というのは、あくまで統計上の話であって、失業者の実数は増えているわけで、そこを見逃してはならないでしょう。
8月の失業率、7カ月ぶり低下 求人倍率最悪続く
[NIKKEI NET 2009/10/02 12:04]
総務省が2日発表した8月の完全失業率(季節調整値)は5.5%と過去最悪だった前月に比べ、0.2ポイント低下した。失業率の低下は7カ月ぶり。昨秋のリーマン・ショック以降の急激な雇用悪化にひとまず、歯止めがかかった格好だが、失業率の水準はなお過去最悪圏にある。厚生労働省が同日発表した8月の有効求人倍率(同)も0.42倍と前月と変わらず、2カ月連続で過去最低を記録、企業は採用に消極的だ。雇用の先行きには、なお慎重な見方が多い。
完全失業率は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職に就いていない人の割合。男女別にみると、男性は5.8%、女性は5.0%だった。
就業者数は6296万人で、前年同月に比べ109万人減った。完全失業者数は361万人と同89万人増えた。ただ前月との比較では就業者の減少幅、失業者の増加幅がともに縮小。特に医療、福祉分野の就業者が前年同月比40万人増えたことなどが影響し、失業率の改善につながった。一方、製造業は112万人減と大幅なマイナスが続いており、足元の雇用環境は業種別にばらつきがみられる。
失業率:8月5.5%、前月比0.2ポイント改善
[毎日新聞 2009年10月2日 9時10分 更新:10月2日 14時48分]
総務省が2日発表した労働力調査(速報値)によると、8月の完全失業率(季節調整値)は5.5%で、過去最悪だった前月(5.7%)と比べて0.2ポイント低下した。失業率が下がったのは、今年1月以来7カ月ぶり。しかし、同日、厚生労働省が公表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は0.42倍で、3カ月連続で過去最低を更新した前月と同水準にとどまった。雇用情勢は依然厳しく、失業対策は新政権でも大きな課題となる。
完全失業率を男女別にみると、男性は0.3ポイント下がって5.8%に、女性も0.1ポイント減の5.0%となった。完全失業者数は361万人で前年同月より89万人増えたものの、7月より増加幅が縮小し、就業者数の減少幅も小さくなったことが失業率を押し下げたという。しかし、5.5%という数値は過去2番目に悪い水準だ。
また、求職者1人につき、働き口がいくつあるかを示す有効求人倍率も、依然過去最低のまま。ただ、08年6月以降、1年2カ月続いてきた下落には歯止めがかかった。
一方、8月の新規求人倍率(季節調整値)は0.76倍(前月比0.01ポイント減)で、2月以降、0.75?0.77倍の間での足踏み状態が続いている。【佐藤丈一】
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