厚生労働省の研究会で、有期雇用の実態調査が初めておこなわれました。
有期雇用:「年収200万円以下」57% 解雇、雇い止め半数――厚労省初調査 : 毎日新聞
有期労働の3割「正社員並み」働き うち7割は賃金低め : 朝日新聞
資料そのものはこちら↓。
現に有期契約で働いている人を対象とした調査(個人調査)では、「有期契約で働いている理由」の第1位は「正社員としての働き口がなかったから」38.7%。とくに、正社員と同じような責任・職務で働いている有期契約の労働者をとってみると、「正社員としての働き口がなかったから」が43.3%を占めています。正社員としての働き口がなくて仕方なく有期契約で仕事についたら、仕事や責任は正社員と同じ、というのは矛盾を痛感するでしょうねぇ。
勤続年数を見ると、63.7%が3年以内で、平均3.2年。ところが、契約期間は48.8%が6カ月以内、6カ月超?1年以内40.0%を加えると、88.8%が1年以内で、平均契約期間は7.8カ月しかありません。平均更新回数は5.7回。大雑把にいうと、半年契約で6回更新して3年勤続、ということになるのでしょうか。
しかし、年収は200万円以下が57.3%を占めています。
有期契約労働者の69.1%が基本給が「正社員より低い」と回答(「少し低い」21.1%、「かなり低い」48.0%)。とくに「正社員同様職務型」でも40.6%が「かなり低い」と回答しているのは、給与格差の深刻さを表わすものでしょう。また、有期契約の61.2%はボーナスなし。「正社員同様職務型」でも56.6%がボーナスがありません。また、有期契約労働者の57.7%、「正社員同様職務型」の場合は69.6%が残業をしています。
他方で、労働条件についてみると、労働契約締結時には95.4%がいちおう労働条件を明示されているとはいえ、更新の有無については12.8%が明示されておらず、更新の判断基準については38.0%が明示されていません。つまり、一般的な労働条件は明示しても、更新の有無やその判断基準については、かなりの割合で明示されないケースがある、ということです。
そして、有期契約労働者の50.2%が「雇い止め」を体験しており、しかも全体の2%ほどが事前通告なしです(契約満了日の通告)。「雇い止め」を経験した人の41.4%が「トラブルになった」と回答していますが、その理由をみると、「雇い止めの理由が納得できなかった」52.8%、「雇い止めの人選が納得できなかった」24.4%、「契約更新の可能性についての認識が異なっていた」13.4%、「雇い止めの予告がなかった、あるいは遅かった」27.7%(それぞれ、「トラブルになった」と回答した人に占める割合)など。
有期契約労働者の不満は、「頑張ってもステップアップが見込めない」42.0%、「いつ解雇・雇い止めされるか分からない」41.1%、「賃金水準が正社員に比べて低い」39.9%、「賃金の絶対水準が低い」37.0%など。つまり、“いつクビになるか分からずびくびくしながら、安い賃金で働いても、正社員になれる見込みがない”というのが実態だといえます。
ところで、有期雇用契約の内訳を見ると、一番多いのは派遣労働者の34.6%ですが、それについで多いのが26.0%の契約社員。昨年いらいの「派遣切り」「非正規切り」で、派遣、期間労働者の実態はかなり明らかになってきましたが、この「契約社員」の実態はまだまだ不明。ここらあたりの実態究明が求められていると思います。
有期雇用:「年収200万円以下」57% 解雇、雇い止め半数――厚労省初調査
[毎日新聞 2009年9月30日 東京夕刊]
厚生労働省は30日、契約や派遣、パートなど有期契約労働の調査結果をまとめ、研究者らでつくる同省の有期労働契約研究会(座長・鎌田耕一東洋大教授)に報告した。有期契約労働について、職務内容別に実態をとらえた初調査で、全体の半数以上が年収200万円以下だったことが分かった。また、同じく半数が解雇、雇い止めを経験しており、厳しい雇用実態が改めて浮き彫りになった。
1万298事業所と労働者5000人を調査。職務内容を正社員と比較し、(1)正社員と同様(2)より高度な技能活用(3)職務は違うが同水準(4)より簡単(5)職場に正社員がいない――に分け、労働者に尋ねたところ、(4)が39.0%で最多だったが、(1)も36.4%を占めた。
賃金では、ワーキングプア(働く貧困層)の指標とされる年収200万円以下が計57.3%と半数を超えた。200万超?300万円以下は25.2%だった。
また、(1)の職務内容の人のうち、4割以上が200万円以下の年収で暮らしていた。
パートを含む有期雇用では、家計の補助的に働く女性も多く、200万円以下の全員がワーキングプアとは言えないが、独立して生計を営む人は41.0%いた。複数の仕事を掛け持ちして生活している人も10.7%いた。
有期雇用で働く理由(複数回答)は「正社員の仕事がない」(38.7%)がトップ。解雇、雇い止めも50.2%が体験し、このうち41.4%が「トラブルになった」と答えた。【東海林智】
有期労働の3割「正社員並み」働き うち7割は賃金低め
[asahi.com 2009年9月30日]
有期契約で働く労働者のうち3割が、同じ職場の正社員と同様の仕事を任されていることが30日、厚生労働省の調査で分かった。このうち4割は基本給が正社員の8割未満で、低賃金で正社員並みに働く有期労働が広がっている実態が浮き彫りになった。
調査は7月に1万社余りの企業を対象に実施、6231社から回答を得た。有期労働はパートや派遣、契約社員などに分類されるが、名称別では働き方の実態がつかめないため、正社員より軽い仕事の「軽易型」や、正社員と同様の仕事をする「同様職務型」など、働き方を調べた。
その結果、有期労働者の54.4%が「軽易職務型」で、28.3%が「同様職務型」だった。同様職務型で働く人のうち39.4%は、基本給が正社員の8割未満で、8割?10割未満の28.9%も含めると、約7割が正社員よりも賃金が低く抑えられていた。
企業が同様職務型の有期労働者を活用する理由は、「業務量の中長期的な変動に対応」や「人件費を低く抑える」「高齢者の活用」が目立ち、厚労省は「正社員の代替が進んでいる可能性がある」とみている。
一方、有期契約で働く5千人を対象にした調査では、同様職務型で働く人の50.0%が世帯主だった。40.7%は年収200万円以下だった。