9月の完全失業率が発表されましたが、それを報道したNHKニュース。
でも、「先月の就業者数は6295万人で、前の年の同じ月より98万人減る一方、完全失業者は363万人と92万人増えました」といったあと、「その結果」、失業率は下がりました…って、なにか変じゃないですか?!
完全失業率というのは、完全失業者数÷(就業人口+完全失業者数)なのだから、失業者が増えて、就業人口が減れば、失業率は高くなるはず。それが低くなったのだから、誰がどう考えても「その結果」ではつながらないはず。
有効求人倍率 0.43倍に
[NHKニュース 10月30日 10時7分]
先月・9月の有効求人倍率は、前の月から0.01ポイント上昇し、0.43倍となり、2年4か月ぶりに改善しました。また完全失業率も、5.3%と、前の月より0.2ポイント下がり、2か月連続で改善しました。
厚生労働省によりますと、仕事を求めている人1人に対し、企業から何人の求人があるかを示す、先月・9月の有効求人倍率は、過去最低だった前の月から0.01ポイント上昇し、0.43倍となりました。有効求人倍率が上昇したのは、2年4か月ぶりで、正社員の有効求人倍率も前の月から0.01ポイント上昇し、0.26倍となりました。また総務省によりますと、先月の就業者数は6295万人で、前の年の同じ月より98万人減る一方、完全失業者は363万人と92万人増えました。
この結果、季節による変動を除いて計算した完全失業率は、前の月より0.2ポイント下がり、5.3%となり、2か月連続で改善しました。これについて、厚生労働省は「有効求人倍率、完全失業率とも改善したが、依然として雇用情勢の厳しさに変わりはなく、対策に取り組んでいきたい」と話しています。
まず、総務省が発表した資料はこちら↓。PDFファイルがひらきます。
労働力調査(基本集計) 2009年9月分(速報)結果の概要 (PDF:314KB)
で、今年に入っての労働人口、就業人口、完全失業者数、完全失業者率の変化(原数値)を調べてみました。
まずこちらが原数値の変化。
労働力人口 | 就業人口 | 完全失業者 | 完全失業率 | |
1月 | 6569 | 6292 | 277 | 4.2 |
2月 | 6565 | 6265 | 299 | 4.6 |
3月 | 6580 | 6245 | 335 | 5.1 |
4月 | 6668 | 6322 | 346 | 5.2 |
5月 | 6689 | 6342 | 347 | 5.2 |
6月 | 6648 | 6300 | 348 | 5.2 |
7月 | 6628 | 6270 | 359 | 5.4 |
8月 | 6657 | 6296 | 361 | 5.4 |
9月 | 6658 | 6295 | 363 | 5.5 |
それにたいして、こちらが季節調整値。
労働力人口 | 就業人口 | 完全失業者数 | 完全失業率 | |
1月 | 6671 | 6395 | 276 | 4.1 |
2月 | 6670 | 6373 | 295 | 4.4 |
3月 | 6634 | 6311 | 320 | 4.8 |
4月 | 6642 | 6305 | 334 | 5.0 |
5月 | 6604 | 6261 | 343 | 5.2 |
6月 | 6585 | 6233 | 356 | 5.4 |
7月 | 6600 | 6231 | 376 | 5.7 |
8月 | 6621 | 6260 | 362 | 5.5 |
9月 | 6619 | 6264 | 352 | 5.3 |
この2つを比べて気がつくのは、7月、8月は季節調整値が原数値を上回っていたのに、9月は季節調整値が原数値よりも小さくなっていること。原数値ではかれば、着実に失業者が増えているのに、季節調整をしたばっかりに失業者数が小さくなってしまって、見かけ上、失業率が小さくなっているのです。
だから、「就業人口が減って、失業者数が増えたにもかかわらず、季節調整値では失業率は下がった」というのが正しいんですね。
では、なぜ、季節調整値で9月の失業者数がこんなに小さくなったのか?
そこで出てくるのが「推計季節指数」というもの。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
100.4 | 101.5 | 104.7 | 103.5 | 101.2 | 97.8 | 95.5 | 99.7 | 103.1 | 102.4 | 96.7 | 93.6 |
これによると、たとえば7月は季節指数95.5で、これは要するに、7月の完全失業者数(原数値)359万人は、季節的な要因によって、本当の?失業者数の95.5%にしかなっていない、ということです。これは、例年7月には失業が減るものだから、失業が5%ぐらい減っても、それは季節的要因であって、本当?の失業は減ってない、というふうに考えているからです。
それにたいして、9月の季節指数は103.1で、要するに例年、9月は失業は平均的な水準より3%ぐらいは増えるものだから、その分、実際の失業者数(原数値)を割り引いて考えましょう、ということですね。このせいで、今回は、失業者数(原数値)では、8月よりも2万人増えたにもかかわらず、季節調整値では失業率が大きく減る結果になったのだということです。
しかし、リーマンズ・ショック以来の景気後退で失業者数が高止まりしているのに、そこに例年の季節変動を当てはめて、9月は例年失業者が増える季節だから、本当は失業者数は減ってるんだ、といっても、どれぐらいそれが実態を反映しているでしょうか?
むしろ、前年同月比で、8月は89万人増、9月は92万人増と、増加傾向が続いている、という方が実態に近いのではないでしょうか? このあたり、ぜひとも検証してほしいと思います。もちろん、僕は、季節調整という考え方そのものを否定している訳ではありません。ただ、現在のような景気の悪化期に、従来の季節変動をあてはめてよいものかどうか、それを考える必要がある、ということです。
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