日経新聞の夕刊に出ていた記事。
記事そのものは、鳩山内閣の「軸足が定まらない」ことにたいする批判が主だが、アメリカ側がこの問題に本気で取り組もうとしていることは明らか。ペリー元国務長官も、米国内では、大きく見ればオバマの核廃絶路線を進める側にいるのだろうが、しかし、仮にペリー氏のいうような新しい協議機関をつくって、そこで話し合いをしてみても、核兵器の運び込みを前提とする「拡大抑止」と非核3原則とが両立するはずもなく、結局は、新たな「密室」を作るか、非核「2原則」化になるか、どちらかしかないように思う。
鳩山政権がこんごどういう対応をするのか注目しなければならないが、なんにせよ、その動向を決めるのも国民世論だ。
【ニュースの理由】
核問題、日本に協議機関提案 米、鳩山政権の真意探る
[日本経済新聞 2009年11月2日付夕刊]
日本への核持込を巡る「密約」解明などを求める民主党・鳩山政権に米国が困惑の度合いを深めている。岡田克也外相は核兵器による先制攻撃の放棄まで米国に呼びかける意向も表明。両国の溝を埋めるため、オバマ米大統領の指南役が打ち出したのは、核問題に関する新たな日米協議機関の発足だった。
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10月半ば、北京。核全廃を訴えるオバマ大統領のアドバイザーであるペリー元国防長官は、キッシンジャー元国務長官らとともに中国の温家宝首相と向き合っていた。ペリー氏らは核全廃に向けた青写真を説明し、協力を要請。だが、温首相は連れない態度に終始した。下旬に来日したペリー氏は鳩山政権の複数の高官と会談し、核問題についてこう提案した。
「日米間で拡大抑止力(核の傘)に関連した問題を議論する『協議機関』を新設すべきではないか」
1990年代半ば、日米両国は同盟関係の再確認作業に着手。以来、有事の行動作戦計画を詳細に詰め、現在は「厚さ数センチにおよぶ文書」(元防衛省高官)がある。しかし、これは通常兵器の講師を前提としたもの。日本が核攻撃を受けた際、米国が核で報復する軍事作戦については「1枚の紙があるだけ」(同)だ。
北朝鮮の核開発が進む中、日本の一部には米国の核の傘の実効性に疑問を呈し、米軍のより強い関与を求める声もある。一方で「北東アジアの非核化」を長期の政権目標に掲げる岡田外相は「核の先制不使用」を米国側に求める構えも見せる。
米国の核戦力の位置づけを巡り日本が発する2つの全く違うシグナル。マレン米統合参謀本部議長ら軍事専門家は岡田外相らの動きに「米抑止力を弱める」と警戒心を募らせた。事態を重く見たキャンベル国務次官補らが事務レベル協議で打開を試みたが、鳩山政賢の軸足は定まらないまま。このままでは日米の足並みの乱れは止まらないとみたペリー氏が、協議機関の新設を提案したのはこのためだった。
「拡大抑止力のための日米合同委員会」(仮称)のも出るとして、ペリー氏が想定しているのは米国が北大西洋条約機構(NATO)と共同で運営する「核政策グループ」だ。この場でNATO加盟各国は、米核戦力の配備状況や有事の対応などを定期的に協議し、核の傘の信頼性を維持している。
唯一の核被爆国で非核三原則を掲げる日本の事情に配慮し、ペリー氏は「核だけでなく通常兵器や経済力など幅広い概念含有する『拡大抑止力』という言葉を使うべきだ」と説明する。その場で密約問題や先制核攻撃の是非などを取り上げれば、日米間の不協和音も表面化せず、「日米の連携」(同氏)を強めることもできるとみる。■ ■
核全廃に向けた過程では、ペリー氏らは同盟国への拡大抑止力の堅持がきわめて重要とオバマ大統領に進言している。そのための具体策として浮上した鳩山政権はどう反応するか。米国はその出方を慎重に見守っている。(編集委員 春原剛)
ともかく、普天間問題を中心に、アメリカが相当激しい圧力をかけてきていることは間違いないと思います。鳩山政権が「対等な日米関係」をつらぬけるかどうか。今後に注目したいと思います。