世間は徐々に年末モードに向かう中、先週の金曜日は、日フィルの定期演奏会でした。今回、指揮は、日フィル主席客演指揮者のイルジー・ビェロフラーヴェク。プログラムは、
- ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調
ラザレフに鍛えられた日フィルが、ブルックナーをどう演奏するか、期待して聞きに行ってきました。
指揮者のビェロフラーヴェクはチェコ出身。2006年に来日して、日フィルでスメタナ「我が祖国」を振ったのが、なかなか評価が高かったそうです(残念ながら、僕は聴いていません)。
この日のブルックナー、第1楽章あたりは、弦も非常に透明感の高い繊細な音を響かせて、あらためて日フィルのレベルアップを実感。しかし、第3楽章あたりから徐々にそれが崩れて、とくに第4楽章で音を爆発させた後は、すっかり昔のひたすらめいっぱい、がんがん弾く、という昔のスタイルに戻ってしまい、ブルックナーの音楽がすっかり俗っぽくなってしまいました。
ビェロフラーヴェクは、全休符をやたらに長くとるなど、ブルックナー好きのうけを狙った? 指揮ぶりでしたが、細かなところまでオケに指示を出して、精一杯盛り上げたというところでしょうか。日フィルもパート、パートはなかなか奮闘していて、トランペットのクリストーフォリ君やホルンなどはよかったと思います。しかし、管と弦のバランスがやや悪く、管が目一杯吹き鳴らすと弦が負けてしまって、結局、弦も負けじと力演力奏する結果になってしまったように思えました。
それでも、日フィルがここまで演奏できるようになったというのはなかなかたいしたもの。普段、ブルックナーなど聴いたことがないお客さんは、それなりの感動をもって聴いていたようです。ただ、ブルックナーの演奏としては、陶酔感というか恍惚感にまで昇華しきれなかったところが悔やまれます。
それにしても、お客さんが少ない!! サントリーホールの2階席は、前側のS席はともかく、通路より後ろの席は半分も埋まっていませんでした。1階席も、左右ががっぽり空いていて、ブルックナーという重厚長大プログラムが嫌われたのかも知れませんが、ちょっと残念です。
また、ブルックナーを聴き慣れていないお客さんが多かったのかも知れませんが、弱音で始まる冒頭から、ガサガサゴソゴソ、パリパリぺりぺりと、ともかく会場がうるさい!! 挙げ句の果てには、全休符から、いままさに新しい音に移ろうとした瞬間に、眠りに落ちたお客さんの手を離れたプログラムが、カコ〜〜〜ンとホール中に響く大音響をたてたりして、指揮者も困ったのではないでしょうか。最後も、曲の余韻を味わうまもなく、拍手が始まってしまってしまい、残念でした。
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【演奏会情報】 日本フィルハーモニー交響楽団第616回東京定期演奏会
指揮:イルジー・ビェロフラーヴェク/コンサートマスター:木野雅之/ソロ・チェロ:菊地知也/会場:サントリーホール/開演:2009年12月4日 午後7時?