別に来年の大河ドラマの予習という訳ではありませんが、たまたま本屋で見つけた佐々木克『坂本龍馬とその時代』(河出書房新社、左)を読みました。
昨年、読んだ松浦玲『坂本龍馬』(岩波新書、右)は、あらためて史料にもとづいて坂本龍馬がいつどこにいたかを確認し直していくところに狙いの1つがあって、坂本龍馬研究としては意欲的な研究書だと思うのですが、いきなり細かな日付が出てくるなど、少々手こずりました。
それに比べると、こちら佐々木克氏の『坂本龍馬とその時代』は、幕末・維新の全体的な動きなども書かれていて、読みやすかったです。ただ、佐々木氏の方が、龍馬にたいする思い入れ? が文章にも表われていて、おもしろく読めるのですが、はたして幕末・維新過程の全体をみたときに、そういうふうに龍馬を持ち上げていいのかどうか、ちょっと疑問に思ったりもしました(まあ、そこが龍馬人気の秘密でもあるのですが)。
幕末・維新期の政治過程をみるとき、混乱するのは、はじめ「攘夷」つまり外国排斥で始まった尊皇の動きが、途中から開国倒幕に変わっていくこと。また、倒幕にしても、公武合体、大政奉還、そして実際の武力倒幕へと変わっていくこと。ここらあたりの政治過程の“節目”と、それぞれの動きの政治的な担い手を明確にしないと、動きが急なだけに、訳が分からなくなります。政治的な担い手という点では、最初の時期には開国・攘夷をめぐる全体的な動きとともに、各藩での藩政改革をめぐる動きがあって、西南雄藩でも藩政の担い手がどんどんと変わっていきます。
佐々木氏の本を読みながら、あらためてそういうことを考えてみると、明治維新のこの過程にも、いわゆる革命の「上向線」があるな、と思いました。明治維新の政治過程については、前々からきちんと勉強してみたいと思っているのですが、もともと大学院時代の専攻は江戸時代の農村史。こういう国家レベルの動きはさっぱり門外漢なので、あらためてそのあたりから整理していきたいと思います。
【書誌情報】
- 著者:佐々木克(ささき・すぐる、奈良大学教授・京都大学名誉教授)/書名:坂本龍馬とその時代/出版社:河出書房新社/発行:2009年12月/定価:本体1,800円+税/ISBN978-4-309-22159-7
- 著者:松浦玲(まつうら・れい)/書名:坂本龍馬/出版社:岩波書店(岩波新書・新赤版1159)/発行:2008年11月/定価:本体740円+税/ISBN978-4-00-431159-1