講談社現代新書、浅田實著『東インド会社』(1989年刊)
マルクスは、資本主義は16世紀に始まると書いていますが、16世紀に始まったのが、喜望峰回りの東インド貿易。そして、1600年にはイギリスの東インド会社が、1602年にはオランダの東インド会社が誕生します。
当初、イギリスの東インド会社が、一航海ごとに出資を募り、東インドに出かけた貿易船が積み荷を乗せて戻ってきたところで、その売り上げ全額を出資額に応じて配分する、つまり配当金だけでなく元本も含めて配分するやり方をとっていたのにたいして、オランダの東インド会社は、出資金は10年間固定、10年目以降は出資者の入社・退社は認められるものの、会社としては継続的に存続する、また出資者は出資額だけに責任を負う有限責任という方式も採用されて、近代的な株式会社の出発点となりました。
マルクスの生きた時代には、イギリスは「セポイの乱」(「セポイ」とは、イギリス東インド会社の傭兵となっていたインド兵のこと)が起きて、建前として貿易を基本とした東インド会社によるインド支配から、イギリス政府による全面的な植民地化に乗り出していくし、また、中国へのアヘン貿易のためにアヘン戦争も起きていて、マルクスも評論をいくつか書いています。
ということで、浅田實『東インド会社』(講談社現代新書)を読んでみました。(上に書いたようなことも、この本であらためて勉強しました)
インド貿易は、ほかにも『資本論』と関係があります。17世紀には、イギリスはもっぱらインドから綿布を輸入して、代わりに銀を輸出していたのにたいして、18世紀後半から、イギリスでの綿紡績業が始まり、逆にインドがイギリスから綿布を輸入するようになって、在来のインド綿業は壊滅するのですが、そうしたことが『資本論』で取り上げられています。
ということで、マルクスがあちこちで論じているインド問題をより深く理解するために、東インド会社についてのお勉強でした。(^^ゞ
【書誌情報】
著者:浅田實(あさだ・みのる)/書名:東インド会社 巨大商業資本の盛衰(現代新書959)/出版社:講談社/発行:1989年/定価:740円+税/ISBN978-4-06-148959-3