【あらすじ】15年の刑期を終えたジュリエットは、妹レアの一家に身を寄せる。母親から姉はいなかったものと思えと言われて育ったレアは、失われた時間を取り戻そうと献身的に姉を迎え入れる。しかし、ジュリエットの態度はぎこちない。レアの娘たちは、突然現われた「おばちゃん」に素直に喜ぶが、夫は…。
今年3本目の映画。土曜日、思いついて、ぶらりと銀座テアトルシネマで見てきました。
英国アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞主演女優賞などを受賞したというだけあって、見応え十分。じわじわじわ??っと感動させられるし、映像的にも非常にきれい。主役のクリスティン・スコット・トーマスの存在感に引き込まれました。
主人公のジュリエットが、いろいろなことに戸惑いながら、少しずつ心を開いていくところが、やっぱり感動させられるのですが、同時に、ジュリエットを取り巻く登場人物の描き方が秀逸。
レアの2人の娘がどちらも養子で、しかもベトナム人という設定がいかにもフランスらしいのですが、その年長の、いかにもちょっとおしゃまな娘プチ・リスが、まっすぐにジュリエットに向かってくるところがかわいいですね。また、数年前に倒れて、話せなくなったという設定で、まったくセリフのないレアの義父も存在感抜群でした。
そのほかにも、「秘書の仕事ができれば、他のことは関係ない」と言いながら、レアが子どもを殺した罪で15年間服役していたことを知ると、手のひらを返したように出て行けという工場経営者や、表向きは「私はあなたのことを考えているのよ」という態度で、彼女の内面に踏み込んでくる社会福祉士。そして、”オリノコ川”の夢を語る警察官、などなど。多様な人間の姿が描かれています。
いろいろありつつも、刑務所から出てきた人間を、ともかく受け入れようとするところにフランス社会の懐深さを感じて、見終わったあと、ほんとにいい映画を見たなぁと充実した気分で帰ってきました。
【映画情報】
監督・脚本:フィリップ・クローデル/出演:クリスティン・スコット・トーマス(ジュリエット役)、エルザ・ジルベルスタイン(レア役)、セルジュ・アザナヴィシウス(レアの夫役)/原題:IL YA LONGTEMPS QUE JE T’AIME/製作年:2008年/製作国:フランス=ドイツ/上映時間:117分
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