核抑止力にしがみつく日本の国会議員たち

20日のThe Japan Timesに、「日本の国会議員、オバマ大統領に核問題で書簡を送る」という大きな記事が出ていました。

記事を眺めてみると、超党派の国会議員といいながら、「日本共産党の議員を除く204人が署名した」とありました。共産党といえば、オバマ大統領と書簡を交換して、核兵器廃絶に一番熱心に取り組んでいるのに、なぜ賛成しなかったのだろう? と思って、国内メディアの記事を含めて、もう少し調べてみました。

Diet members send Obama nuclear letter | The Japan Times Online
超党派国会議員、核軍縮求める書簡 米大使に手渡す : 朝日新聞
核軍縮:オバマ氏の取り組み支持します 日本の議員204人、駐日大使に書簡 : 毎日新聞

そうしたら、この要望書が、アメリカ政府にたいして、いの一番に、「核兵器の『唯一の役割』は他国の核兵器の使用を抑止することだと宣言する」(朝日新聞)ことを求めたものだということが分かりました。

「抑止力」というのは、“何かあれば、本当に核兵器を使いますよ”ということを前提にして初めて成り立つもの。実際、これまでも、「抑止力」を口実にして、核軍拡競争が進められてきました。

アメリカの大統領が「核兵器のない世界をめざす」と言っているときに、あらためて「核抑止力」の宣言を求めるというのは、あまりに時代に遅れているのではないでしょうか。

しかも、The Japan Timesの記事をよく読んでみると、彼らがアメリカ大使館を訪問して求めたのは、「核兵器の『唯一の役割』は、他国がアメリカあるいはアメリカの同盟国にたいして核兵器を使用することを抑止することだと宣言する」ということなのです。

この赤字部分が、国内の新聞では省略されていますが、これは要するに、「どうか日本をアメリカの核抑止力で守ってください」というお願いに他なりません。核兵器廃絶を求めるどころか、核兵器にしがみつく内容です。

世界が核兵器廃絶に向かって足を踏み出そうというときに、こんな要望書を出して、恥ずかしくないんでしょうか。

Diet members send Obama nuclear letter

[The Japan Times: Saturday, Feb. 20, 2010]

By MASAMI ITO

A group of nonpartisan Diet members sent a letter to U.S. President Barack Obama on Friday urging him to strive to limit the role of America's atomic weapons to that of nuclear deterrence.

The request doesn't call for a total ban on the use of nuclear weapons but is intended to be a small but realistic step toward nuclear disarmament.

The letter asked Obama to state that the role of nuclear weapons should be limited to deterrence and asked that the U.S. nuclear policy not violate Japan's three nonnuclear principles of not possessing, producing or permitting the introduction of nuclear weapons into the country.

With the Obama administration expected to submit the Nuclear Posture Review to Congress in March and the upcoming nuclear security summit in April, the lawmakers expressed hope that the letter may influence the nuclear policy of the U.S.

Lawmaker Hideo Hiraoka of the ruling Democratic Party of Japan and six other Diet members from various parties handed the letter to U.S. Ambassador to Japan John Roos on Friday afternoon and asked that it be delivered to Obama.

"We strongly desire that the United States immediately adopt a declaratory policy stating that the 'sole purpose' of U.S. nuclear weapons is to deter others from using such weapons against the United States or U.S. allies," the letter said, adding that the lawmakers were "firmly convinced that Japan will not seek the road toward possession of nuclear weapons if the U.S. adopts a 'sole purpose' policy."

A total of 204 lawmakers from both the ruling and opposition parties, with the exception of the Japanese Communist Party, signed the letter, including former Chief Cabinet Secretary Yasuhisa Shiozaki and former Environment and Foreign Minister Yoriko Kawaguchi.

According to the participants, JCP lawmakers, while supporting nuclear disarmament, declined to sign the letter because it did not go far enough.

Antinuclear activist Akira Kawasaki of Peace Boat Japan praised the letter as meaningful.

超党派国会議員、核軍縮求める書簡 米大使に手渡す

[朝日新聞 2010年2月19日21時28分]

 民主、自民両党などの国会議員が19日、核軍縮に関するオバマ大統領あての書簡を米国大使館でルース駐日大使に手渡した。書簡は米政府に、核兵器の「唯一の役割」は他国が核兵器の使用を抑止することだと宣言する▽日本の非核三原則に反するいかなる政策もとらない――などを求めている。共産党などを除く204議員が賛同した。

核軍縮:オバマ氏の取り組み支持します 日本の議員204人、駐日大使に書簡

[毎日新聞 2010年2月20日 東京朝刊]

 米国の核戦略の新指針「核態勢見直し」が3月1日にもまとまるのを前に、民主党の平岡秀夫衆院議員ら7人が19日、東京都内の米大使館を訪れ、オバマ大統領の核軍縮への取り組みを支持するとする書簡をルース駐日米大使に手渡した。書簡には超党派(民主164、公明19、社民10、自民5、みんなの党3、国民新1、両院議長2)の衆参両議員204人が賛同した。
 書簡では、核兵器の役割を他国からの核攻撃の抑止に限定することを「強く求める」と表明した。
 米国内の一部には、米国が核兵器の役割を限定すれば、生物・化学兵器や通常兵器による攻撃にも核抑止を求める日本が核武装に走るという懸念がある。この点について、書簡は、米国の政策が変わった場合でも「日本は核武装の道を追求することはないと確信している」としている。ルース大使は「同盟国に米の核抑止力を弱めるという印象を与えるのはよくない。だが、そのことと核廃絶を目指すことは矛盾しない」と答えたという。【隅俊之】

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