最後まで叙述の拡充に努めたマルクス

少し前から『資本論』第1部、第13章「機械と大工業」の第9節「工場立法(保健および教育条項)。イギリスにおけるそれの一般化」を読んでいます。その中で、今日、いろいろ調べて、わかったことがあります。相変わらず、『資本論』の理論的な本筋には全然関係ありませんが、わかってみると「なるほどなぁ」と思えることばかりでした。

上製版844ページから859ページ、新書版847ページから864ページにかけての部分。この部分は、実は、マルクスがフランス語版(1872年)のさいに大幅に叙述を拡充し、それをエンゲルスが第4版(1890年)のさいに取り入れた部分です。新日本版では、訳注でそのことが指摘されていますが、広い部分に訳注がばらばらに書かれているので、ちょっと分かりにくいところです。

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ヒュー・ウルフ×新日フィル×ショスタコーヴィチ

新日本フィルハーモニー交響楽団第457回定期演奏会

昨日は、新日本フィルの定期演奏会で、久しぶりに錦糸町へ。

 モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 K.543
 シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 op.129 (ショスタコーヴィチ編曲)
 ショスタコーヴィチ:交響詩「十月革命」 op.131

この日の目玉は、シューマンのチェロ協奏曲。有名な曲ですが、ロストロポーヴィチの依頼で大管弦楽との演奏が栄えるようにと改訂されたショスタコーヴィチ編曲版が演奏されました。

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原因はわからないがすでに改修済みだという不思議な会社

トヨタのプリウスのブレーキが効かなくなるといわれている問題。トヨタは、すでに先月からの出荷分について対策をとっていたことが明らかになりました。しかも、トヨタの言い分によれば、トラブルは、ABSの設定のために「人によってはブレーキが利いてないように感じる」ものなのだそうです。

衝突事故も、トヨタにとっては、「感じ方」の問題なんでしょうか? 原因もわからないのに対策がとれるというのは不思議な会社です。

プリウス 先月からすでに対策 : NHKニュース

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公共事業の箇所付けは国会にこそ公表すべき

公共事業の箇所付けを、民主党が予算成立前に都道府県連の代表に伝えていたといってニュースになっています。

「予算の箇所付け」というのは、「ここのこの事業にこれだけの予算をつけます」という情報。本来は、そうした個々の事業に必要な予算を積み上げていったものが予算になるはずなのですが、国会の予算審議では、これまで「箇所付け」が公表されたことはありません。「むだな公共事業を削りました」といっても、具体的にどこを削って、どこに予算をつけたのか明らかにしなければ、本当に「むだな公共事業」を削ったかどうかわかりません。

だから、予算の「箇所付け」は国会にこそ公表すべきもの。そうして予算の1つ1つについて、本当に必要かどうか、徹底した審議をすべきです。

公共事業の個所付け伝達に反発 社、国、再検討要請 : 共同通信

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勤労者の給与が減り続けては景気回復もおぼつかない

厚生労働省の毎月勤労統計調査(毎勤統計)の2009年分が公表されました。それによれば、勤労者1人当たりの月平均現金給与総額は前年比3.9%減。3年連続のマイナスであるだけでなく、1991年以来、最大の減少率 ((毎勤統計の「平均現金給与額」は、5人以上の事業所について調べたもの。解雇されたり、企業が倒産して失業した人の失った所得は考慮されていない。したがって、失業が増えている昨今では、勤労者全体の購買力は毎勤統計の「平均現金給与額」以上に低下していると考えなければならない。))。

しかし他方で、大企業は1991年度の約100兆円から2008年度の約214兆円へと、内部留保を大幅に増やしています。まずは国民の懐を暖めないと、景気回復は望むべくもありません。

給与、最大の3.9%減 09年勤労統計 : 中日新聞

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日中歴史共同研究 北岡伸一座長の奇妙なコメント

日中歴史共同研究について、日本側座長の北岡伸一氏の談話が「読売新聞」に載っていた。

それによれば、日本の侵略戦争や南京虐殺事件について日本側が認めたとする中国側の言い分にたいして、北岡氏が次のように反論している。

 中国側は今回の研究で、日本が中国を侵略したことや南京虐殺を認めたことが成果だと言っているが、議論した結果そうなったのではなく、そもそも日本では多くの歴史家や政府も侵略と南京虐殺を認めている。

しかし、もし日本側が最初から日本の侵略や南京虐殺を認めていたのであれば、日中歴史共同研究ということ自体が提起されなかったのでは? そもそも、日中歴史共同研究は、小泉元首相が靖国神社参拝を強行し、さらに日本の侵略を否定する安倍晋三氏が首相になる、という事態の中で、日本側が提起して始まったもののはず。それをいまさら「日本の侵略や南京虐殺は日本は元々否定していなかった」などと言うのは、あまりに不誠実ではないだろうか。

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