『歴史評論』6月号の論文が面白い

歴史科学協議会が発行する『歴史評論』6月号に、ジョン・ブリーン「『神国日本の復興』――21世紀における神道の動向」という論文が載っています。

神社本庁 ((お役所と紛らわしい名前を名乗っていますが、戦後、「国家神道」が否定されるなかで、設立された「包括宗教法人」、つまり民間宗教法人(教団)の一つです。すべての神社が神社本庁に加盟している訳ではなく、また、神社本庁以外にも神道の「包括宗教法人」が存在します。))は、1987年以来、「神宮大麻」(伊勢神宮のお札)を1000万体頒布するという運動に取り組んでいるそうですが、この論文は、その運動をとりあげたものです。

神社本庁が「神宮大麻」の頒布運動をやっていたということ自体、僕は、この論文を読んで初めて知りましたが、この論文が興味深いのは、頒布運動の抱える「様々な問題」や「神職の反感」を取り上げて検討を加えているところです。

神社本庁によれば、「神宮大麻」頒布は2008年に約900万体に達したそうですが、同論文によると、この数字は「地域の神社に確かに輸送されたが、家庭でまつられている大麻数を反影した数字ではないらしい」とのことです。著者が取材したある神職は、「本庁の出す統計は信頼できません。言ってはいけないことでしょうが、皆抱えています」「とにかくあの数字は信頼してはいけない、皆水増ししてある。都道府県によって水増しの度合いが違うでしょうけど、神職は皆大麻を抱えています」と語っています。

こういう矛盾の背景には、神社本庁が、地域の神社から「その神職の数、位に比例して『負担金』を募り」、それによって本庁職員の収入などをまかなう一方で、地域の困窮している神社への援助を行なっていないことがある、と同論文は分析しています。

興味のある方は、ぜひ『歴史評論』の同論文をお読みください。なお、『歴史評論』は校倉書房の販売、一般書店でも注文可能です。(1冊860円)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください