日曜日、トリフォニーホールで新日本フィルのコンサート・オペラを見てきました。
ドビュッシー:ペレアスとメリザンド
「ペレアスとメリザンド」は、「青い鳥」でおなじみのメーテルリンクの作品。4月には、読響のカンブルラン就任演奏会で、シェーンベルクの交響詩を演奏していましたが、ともかく僕はストーリーさえろくに知らないので、いったいどんなものやら期待して、雨の中、錦糸町まで出かけてゆきました。
で、大まかに分かったのは、ストーリー。(^_^;)
アルモンド王国の老王アルケルの孫ゴローが、森の中でメリザンドに出会い、結婚する。しかし、メリザンドは弟ペレアスに惹かれ、嫉妬したゴローはペレアスを殺してしまう……。
霧が立ちこめていたり、夜だったり、ともかく陰々滅々、ぱっとした展開のないストーリー。う〜む、難しい…。プログラム・ノーツによれば、このオペラは「象徴主義」の作品ということなのですが、なにがなにを象徴しているのやら。第2幕では、メリザンドがペレアスと一緒に指輪を探しにいった洞窟には乞食が登場しますが、だからといってストーリーに社会性があるわけでもなし。考えれば考えるほど、よ―分かりません。(^_^;)
当日は、コンサート・オペラということで、ステージ上にはオケが乗っていて、その手前と奥に舞台がしつらえてあり、その後ろにスクリーンが張られ、そこに背景的な映像が映し出され、そのまえでソリストが多少の芝居を演じる、という仕組みになっていました。
初めて聴く曲、見るオペラで、善し悪しはよく分かりませんが、何にせよ熱演だったことは間違いありません。ただ、藤村美穂子さんの声は、とらえどころのないメリザンドにはかえって明晰すぎたかも知れません。また、老王アルケルを演じたクリストフ・フェルは、予定されていた大塚博章から急遽交代し、なかなか渋い味を出していましたが、ところどころ音程が不安定に聞こえたのが残念でした。オケも、ちょっと元気すぎたように思われました。
ただ、このスクリーンに背景的な映像を映し出して、その前で演技するという演出は、はたしてこの作品の「象徴主義」に合っていたのかどうか。沈んだ色調で、陰鬱で茫漠とした雰囲気を醸し出すことに成功したことは確かですが、他方で、霧にかすんでいるとはいえ、森や泉の風景、あるいは城の広間の背景などが、それなりにリアルに描かれているのが、かえって「象徴主義」の世界に入り込む妨げになってしまったところがあったのではないでしょうか。とくに、第3幕で、メリザンドの髪が塔の下にいるペレアスにまで届くという幻想的で、このお話の山場ともいえる場面で、画面に長い髪が揺らめく様子が描き出されたのには、いささか幻滅してしまいました。
演出の大部分が、スクリーンの映像に費やされた結果、しつらえられた舞台は、オケの手前と奥という2段構えとはいえ平面的なまま。結果的に、これまでの新日本フィルのコンサート・オペラに比べるとかなり単調な演出になってしまったような気がします。
【演奏会情報】 新日本フィルハーモニー交響楽団トリフォニー・シリーズ第461回定期演奏会
指揮:クリスティアン・アルミンク/ペレアス:ジル・ラゴン/メリザンド:藤村美穂子/ゴロー:モルテン・フランク・ラルセン/アルケル:クリストフ・フェル/ジュヌヴイエーヴ:デルフィーヌ・エダン/イニョルド:アロイス・ミュールバッヒャー/医師、羊飼いの声:北川辰彦/合唱:栗友会合唱団/合唱指導:栗山文昭/演出・字幕:田尾下哲/コンサートマスター:崔文洙/会場:すみだトリフォニーホール/開演:2010年5月23日 午後2時
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