NPT会議 「核兵器なき世界」を達成することで一致

ニューヨークで開かれていたNPT再検討会議が「最終文書」を採択して終了。

具体的な年限を明記することはできませんでしたが、核保有国を含め、核兵器完全廃絶をめざして「後戻りしない」形でとりくみをすすめることで合意できたのは重要な一歩。引き続き、この合意を確実に実行するように、核保有国に働きかけてゆくことが大切だと思います。

NPT 核兵器完全廃絶目指す:NHKニュース
NPT再検討会議最終文書の要旨:共同通信

比較的目立つことがないけれど、僕は、現在、NPT非加盟国として核兵器を保有し、核兵器開発を進めているインド、パキスタンにたいして、NPTへの加盟を求めるとしたことは、実はなかなか大事なことだと思います。核不拡散条約は、米・英・仏・ロ・中の5カ国だけに核保有を認め、他の国には核兵器開発を禁止するという究極の不平等条約ですが、だからといって、インドやパキスタンのように、条約から脱退して核武装をすすめてよいという理由にはなりません。しかも、インドとパキスタンは、領土問題や宗教的対立から、実際に戦闘まで行っている国同士です。こういう国の核武装、核兵器開発が容認されているのは、まったく異常なことだと思います。もちろん、イスラエルの核武装が許されないことは言うまでもありません。

ところが現在、アメリカは、イランの核開発(目下のところは、平和利用に限られている)を厳しく批判する一方で、インドの核保有を容認し、軍事的な協力もすすめています。日本政府も、インドへの原発輸出をすすめようとしています。

こういう国際政治でのダブルスタンダードは、核兵器廃絶へむかう流れに大きな障害となるものです。アメリカや日本は、インドやパキスタンにたいする核武装・核兵器開発容認政策を改めて、かつてのブラジルなどのように、核兵器を放棄して、NPT条約に加入するように促すべきです。そのためにも、アメリカ自身が、本気で核兵器完全廃絶をめざす取り組みに踏み出さなければなりません。

NPT 核兵器完全廃絶目指す

[NHKニュース 5月29日 12時6分]

 ニューヨークの国連本部で開かれていたNPT=核拡散防止条約の再検討会議は28日、核保有国が核兵器の完全な廃絶を目指し、後戻りしない形で取り組むことを確認するとした最終文書を採択して閉幕しました。
 NPT再検討会議は28日、およそ1か月に及んだ議論の成果である「最終文書」を全会一致で採択しました。最終文書は、核保有国が核兵器の完全な廃絶を目指し、後戻りしない形で取り組むことを確認するとしています。そして、その方策を探る協議を速やかに始め、結果を4年後の2014年に再検討会議の準備委員会に報告することを求めています。
 会議後、日本の須田軍縮代表部大使は記者団に対し、「すべてに満足はしていないが、核保有国が2014年までに取り組みを報告することなど、具体的で前向きな合意ができた」と述べました。一方、核保有国の1つ、フランスのダノン軍縮大使は「核軍縮では後戻りしないことが大事だ」と述べながらも、核軍縮に国際的な目標期限を設けるのは望ましくないとして、核軍縮はあくまで自国の判断で進める考えを強調しました。
 加盟国の間では、何も合意できなかった5年前の会議とは大きく異なり、一定の成果を収めたという受け止めが広がっていますが、核軍縮をめぐる核保有国と非核保有国の認識の差は依然として大きく、その隔たりをどう縮めていくかが、引き続き国際社会にとっての課題となりそうです。
 NPT=核拡散防止条約の再検討会議で「核兵器のない世界」に向けた取り組みを盛り込んだ最終文書を全会一致で採択したことについて、会議の期間中にニューヨークを訪れて核兵器廃絶を訴えた日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の代表委員で広島県被団協の坪井直理事長は「全会一致の採択により核軍縮が軌道に乗ったと思う。しかし、核保有国の取り組みに関する期限などへの言及が少なく、具体的なことは先延ばしされた感じがする。今後は条約の中にもっと具体的な内容を盛り込み、核軍縮に拍車がかかるよう各国に努めてほしいし、我々被爆者も力を尽くしたい」と話しています。
 もう1つの県被団協の金子一士理事長は「前回のように何も合意できないのではないかと心配もしたが、曲がりなりにも全会一致で文書を採択したことで、核廃絶の機運は高まっていると感じた。また、唯一の被爆国である日本が世界の先頭に立って核廃絶を訴えていくべきなのに、総理大臣も外務大臣も今回の会議に出席せず、政府の後ろ向きな姿勢が表れた。今後、日本政府に対してもっと積極的になるよう要求をしていきたい」と話しています。
 また、長崎原爆遺族会の下平作江顧問は「不調に終わった前回、5年前の会議に比べると、核廃絶に向けて少しは前進したのではないか。しかし、核兵器は今すぐにでも廃絶しなければいけない。それを言い続けていきたい」と話しています。
 一方、NPT再検討会議で、被爆者を代表して演説した長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄会長は「当初の議長報告案では期限を設けて核廃絶に向けた行動を盛り込んでいたが、最終的にはなくなった。これでは満足できない。今後、ほんとうに核廃絶に進んでいくのか疑問が残る。核保有国がほんとうに核廃絶に動き出すように、生きているかぎり訴え続けたい」と話しました。

NPT再検討会議最終文書の要旨

[2010/05/29 12:25 共同通信]

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が28日採択した最終文書の要旨は以下の通り。

 

【行動計画】

 ▽核軍縮
 一、すべての国は「核兵器なき世界」を達成するという目標と完全に一致する政策を追求することを約束。
 一、すべての国は核軍縮の方法が不可逆的、検証可能、透明である原則を採用することを約束。
 一、ロシアと米国は新たな核軍縮条約「新START」の早期発効および完全実施追求を約束。一層の核兵器削減を達成するための引き続きの措置について協議を継続することを両国に促す。
 一、核保有国は、核軍縮につながる具体的進展の加速を約束。2014年の再検討会議準備委員会に進展状況を報告し、15年の再検討会議で次の措置を検討。
 一、すべての加盟国は、ジュネーブ軍縮会議が核軍縮に関する補助機関を直ちに設置することで合意。
 一、すべての核保有国は消極的安全保障に関する既存の取り決めを完全に尊重。
 一、一層の非核地帯の創設を促進。関係国に対し、非核地帯に関する条約と関連議定書の批准を促す。
 一、すべての核保有国は包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准に取り組む。
 一、CTBT発効までの間、すべての国は核兵器爆発実験やいかなる核爆発も控え、CTBTの目的や趣旨を無効にするような行動も控える。既存の核兵器実験モラトリアム(一時停止)は維持される。
 一、すべての国はジュネーブ軍縮会議が核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉を直ちに開始することで合意。
 一、核保有国に軍事目的での必要がなくなったことが示されたすべての核分裂物質を国際原子力機関(IAEA)に申告することを促す。
 一、加盟国はこの行動計画の実施状況について定期的な報告を行う。
 一、すべての国に、核軍縮・不拡散教育についての国連事務総長の報告における勧告を実施することを促す。

 ▽核不拡散
 一、事実上の抜き打ち査察を可能にするIAEA追加議定書の締結や発効に至っていないすべての加盟国に対し、できるだけ早くこれらを履行するよう促す。
 一、核物質や核施設の安全、防護水準を最高度に維持するようすべての加盟国に促す。
 一、各国領内における核物質の不法取引を発見、阻止する能力を向上させるようすべての加盟国に要請。また核兵器の拡散を防ぐため、効果的な管理(体制や措置)を確立、施行するよう求める。
 一、核テロ防止条約に署名していないすべての加盟国にできるだけ早く締結するよう促す。

 ▽平和利用
 一、国際協定を危険にさらさないとの前提で、原子力の平和利用の分野における各国の選択、決定を尊重。
 一、発展途上国支援のための技術協力計画を強化。

 

【地域問題】

 ▽中東地域
 一、イスラエルのNPT加盟と同国の核関連施設すべてを、IAEAの包括的な保障措置(査察)下に置くことの重要性を再確認した00年の決議を想起。中東地域におけるすべての国家に対し、非核国としてNPT参加を求める。
 一、95年決議の完全履行に向けて、国連事務総長と95年決議提案国は、核兵器など大量破壊兵器が存在しない中東地域をつくりだすため、地域のすべての国家が参加する会議を12年に開催。

 ▽その他の地域
 一、北朝鮮に対し、05年9月の6カ国協議共同声明に沿って、すべての核兵器の完全かつ検証可能な形での、廃棄や既存の核計画放棄を含む合意事項の履行を強く要請。(03年に脱退宣言した)NPTへの早期復帰や、IAEA保障措置協定順守も求める。
 北朝鮮とすべての加盟国に対し、関連する核不拡散・軍縮義務を完全履行するよう要求。再検討会議は6カ国協議を断固支持し、外交手段により満足のいく形で核問題の包括解決を達成する決意を保持し続ける。

 

【議長総括】

 一、95年会議で採択された中東非核地帯決議、00年会議で採択された核保有国による「核廃絶への明確な約束」など13項目の核軍縮措置の実施を再確認。
 一、北朝鮮が06年と09年に実施した核実験を最も強い言葉で非難。
 一、奪い得ない権利としての原子力エネルギーの平和利用を再確認
 一、核兵器削減の進展を歓迎する一方、いまだ推定数千発が配備または貯蔵されていることを懸念。人類への危機継続に深い憂慮。
 一、核兵器なき世界の実現に向けた(オバマ米政権など)政府や市民社会の新しい提案に留意。
 一、核軍縮の最終局面は合意された法的枠組み内で行われ、大半の加盟国は具体的期限が必要だと考えていると確認
 一、米ロ新核軍縮条約の調印を歓迎。
 一、インド、パキスタンにNPT加盟を要求
 一、核なき世界の実現を決意、核使用による人類への破滅的結果に深刻な懸念。(共同)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください