消費税増税論議のなかで、「日本の法人税は高い」という問題が浮かび上がっています。確かに、日本の法人税の「実効税率」は、地方税をあわせて約40%。
しかし、実際にすべての黒字企業が40%の法人税を支払っている訳ではありません。上のグラフは、「しんぶん赤旗」が、経常利益の上位100社について、実際の法人税負担率を計算したもの。40%どころか、平均でヨーロッパ並みの33%。ソニー、住友化学、パナソニックなど一流どころが、軒並み10%台の法人税しか払っていません。
これで、さらに法人税を減税せよとは、ちょいと図々しすぎやしませんか?
法人税 「40%は高い」といいながら実は…/ソニー12% 住友化学16%:しんぶん赤旗
それは、「しんぶん赤旗」だけが言っていることではありません。日本経団連の幹部自身が、「表面税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、実はそんなに高くない」「税率は高いけれども税率を補う部分できちんと調整されている」と説明しています。
だから、日本経団連などは、実際には法人税負担率がそれほど高くないことを知っていながら、「日本の法人税は高すぎる」と言って、偽りのキャンペーンを繰り広げている訳です。
法人税 「40%は高い」といいながら実は…
ソニー12% 住友化学16%
[2010年6月24日 しんぶん赤旗]
日本のトップ大企業の利益にかかる法人課税の実際の負担率が優遇措置によって30%程度であることが本紙の試算でわかりました。日本経団連は現在40%の法人実効税率が高すぎるとし、減税を要求していますが、大企業が払っている税金ははるかに低いのが実態。法人税減税の財源を消費税増税に求めるのは身勝手すぎます。
優遇税制で大まけ 平均3割
試算は大企業に対する優遇税制が一段と強まった2003年度から09年度の7年間を対象にしています。経常利益の上位100社(単体)で負担率は平均33.7%でした。
財界は法人税の実効税率を25%に引き下げるよう政府に要求していますが、日本経団連の会長企業、住友化学が払っている法人課税の負担率はわずか16.6%でした。前会長の企業、キヤノンは34.6%です。
自動車メーカーでは最大手のトヨタ自動車が30.1%、本田技研工業は24.5%でした。電機ではパナソニックが17.6%、ソニーが12.9%。鳩山由紀夫前首相が大量の株式を保有していたブリヂストンは21.3%でした。
大企業は研究開発減税で大幅な恩恵を受けるほか、海外進出を進めている多国籍企業には外国税額控除などの優遇措置があり、40%の税率は骨抜きにされています。
法人実効税率は国税である法人税に地方税である法人住民税、法人事業税を加えた税率です。この試算では、景気変動の影響を除くため各社の決算データから7年間の税引前当期純利益と法人3税の合計額で実際の負担率を計算しました。銀行・証券・保険業と純粋持ち株会社は除きました。日本経団連の税制担当幹部「法人税は高くない」
「日本の法人税はみかけほど高くない」と財界の税制担当幹部自身が認めています。
阿部泰久・日本経団連経済基盤本部長は税の専門誌『税務弘報』1月号で、法人税について「表面税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、実はそんなに高くない」との見解を表明。「税率は高いけれども税率を補う部分できちんと調整されている」と説明しています。
阿部氏はまた別の専門誌『国際税制研究』(2007年)で、大企業の実際の税負担率が高くない理由について二つの要因を指摘。一つは、研究開発減税や租税特別措置などの政策減税。製造業では「実際の税負担率はおそらく30%台前半」。もう一つは、大企業は「税金の低い国でかなりの事業活動を行って」いることから、「全世界所得に対する実効税率はそれほど高くない」。そして、「他の国がもっと税率を下げてしまったので、調整が必要だというのは建前的な発言」だと、明かしています。研究開発減税 企業が製品開発や技術改良のために支出した試験研究費の一定割合を法人税額から差し引ける制度。研究開発費の多い大手製造業に得な制度です。減税額の9割程度が資本金10億円以上の大企業。2007年度決算データから推計するとトヨタ自動車は822億円、キヤノンは330億円の減税です。
外国税額控除 海外に進出した日本企業が外国で法人税を払う場合、その分を日本で払う法人税から差し引く制度。外国企業に優遇税制を敷いている途上国で法人税の減免措置を受けた場合でもその分を払ったとみなして控除される場合があります。
ついでながら、法人税40%は、よく「実効税率」と言われますが、実際の法人税負担率ではないのですから、日本経団連幹部が言っているように「表面税率」と呼ぶべきもの。そこから、さまざまな控除があって、最終的な税負担率が決まるのです。