菅首相が、消費税増税への批判にたいして、「低所得層にはかかった消費税を全額還付する方式もある」と答えたそうだ。
わざわざ還付しなければいけないのなら、初めから増税しなければいいのだ。年収400万円以下となれば、還付対象世帯は半数近くになる。それだけの世帯について、所得と支出を把握して、還付の手続きをとる――いったい、どれだけの手間と経費がかかるだろうか。還付を受けるための申告手続きも膨大なものになるだろう。
広く徴税しておきながら、あとで半数の世帯に還付する――こんな税制は、制度設計から根本的に間違っているのだと思う。
消費税上げで首相「年収2百〜4百万以下還付」:読売新聞
菅首相:消費増税の還付対象 世帯別で半数近くに:毎日新聞
しかも、菅首相本人の発言が揺れている。初めは「200万円から300万円」、それが「300万円から350万円」、さらに「300万円から400万円」と、数字がどんどんエスカレートしている。
このこと自体、この発言が、消費税増税への反発の大きさに驚いて、それをごまかすためにその場の思いつきでしゃべっている、という何よりの証拠。
「そんな還付はできない」と言われれば、また、「あれは一つの案として言ったまでのこと」と言い出しかねない。
だから、「全額還付されるならいいか」と思ったら大変。普天間基地の「県外移設」の前科がある民主党だ。選挙が終わってしまえば、「いろいろ検討してみたが、全額還付は難しい」といってあっさり撤回されるかもしれないのだ。
消費税増税が不安なら、はっきりと消費税増税反対を貫く政党を大きく伸ばすのが一番いい。
消費税上げで首相「年収2百〜4百万以下還付」
[2010年6月30日22時28分 読売新聞]
菅首相は30日、消費税率を引き上げた場合の低所得者対策について、「年収300万、400万円以下の人には、掛かる税金分だけ還付する方式もある」と述べた。
参院選応援のため民主党代表として訪れた山形市内での街頭演説で語った。首相は、税金還付方式の導入を検討する意向を示してきたが、対象となる年収水準を示したのは初めてだ。
ただ、首相は同日、青森市での街頭演説では「年収200万円とか300万円」、秋田市内での演説では「年収300万円とか350万円以下」と述べており、具体的な年収額は今後さらに詰めると見られる。
菅首相:消費増税の還付対象 世帯別で半数近くに
[毎日新聞 2010年6月30日 22時13分]
菅直人首相は30日、消費税増税に伴う低所得者対策で還付対象とする世帯の所得水準に言及した。菅首相が例示したうち最も高い「年収400万円」は、世帯別では半数近くが対象になる計算。現行税制では、年収325万円(サラリーマンで4人家族のモデル世帯)が所得税を支払う最低額となっており、やや高めの水準になる。
年収による線引きに加え、還付する額の水準次第では多額の財源が必要となるだけに、制度設計の段階では議論を呼びそうだ。
厚生労働省の2009年の国民生活基礎調査によると、年収400万円未満世帯の割合は46.6%。夫婦子2人の4人世帯では18.0%だが、65歳以上だけの高齢者世帯に絞ると80.6%。母子世帯では91.2%に達し、一定の負担緩和効果が期待できる。
高校無償化の一環で4月から始まった私立高校生への支援金でも、年収350万円未満の世帯に給付額を加算しており、理解の得やすい一定の目安になるとみられる。
菅首相は、低所得者対策として、食料品など生活必需品への税率を低くする軽減税率の検討にも言及した。民主党内や税制の専門家では、対象品目の決定などが煩雑となる軽減税率よりも、税金の還付や相当額を減税する「給付付き税額控除」の方が現実的との意見が多い。
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