先日、某古本バザーで、明治維新の研究家だった石井孝氏の『維新の内乱』(至誠堂新書、1974年)を手に入れました。
明治維新・戊辰戦争を、第1部「天皇政府と徳川政府との戦争」、第2部「東北の戦争」、第3部「蝦夷動乱」の3段階でとらえたもの。とくに第1部では、大政奉還から上野・彰義隊討伐までを、(1)大政奉還か挙兵倒幕か、(2)天皇政府と徳川政府の決戦(鳥羽・伏見の戦い)、(3)徳川政権の消滅(江戸城明け渡し)、(4)徳川氏処分の完遂の4つに区分して、時期的には非常に短い戊辰戦争第1段階での明治政府対徳川政府の対立・対抗が鋭く論じられています。
10年後にほぼ同じ時期をあつかった、ほぼ同じ内容の『戊辰戦争論』(吉川弘文館)が出されたため、再刊されることもなく、滅多にお目にかかれない本になってしまいましたが、筆の運びに勢いや若さのようなものが感じられて、おもしろいです。
ちなみに、『戊辰戦争論』の方は、2008年に吉川弘文館の歴史文化セレクションの1冊として復刊されています。復刊された同書解説によれば、徳川絶対主義の確立をめざす慶喜と、天皇絶対主義の確立を目指す薩長連合という石井氏のとらえ方は、「絶対主義云々といった枠組みに基づく問題提起それ自体が成り立たなくなっている」(同書解説、家近良樹「『戊辰戦争論』を読む」)そうですが、それでも、明治維新の政治過程を大枠でどうとらえるべきかという問題提起には引き込まれるものがあります。