半数の青年が「自分の収入だけでは暮らせない」

厚生労働省「若年者雇用実態調査」によって、驚くべき実態が明らかになりました。(調査対象は15〜34歳の労働者)

1つは、「自分の収入だけで生活できる」と回答した若者が44%しかいないということ。つまり、半数の青年が自分の収入だけでは暮らせない、というのです。非正社員にかぎれば「自分の収入だけで生活できる」というのは30.3%しかありませんが、それ以上に驚くのは正社員でも「自分の収入だけで生活できる」というのは51.6%しかないこと。正社員であっても、まともに暮らせるだけの給料が支払われていないのです。

もう1つは、新卒時に「非正社員」だった人が現在正社員になっているかどうかの調査。すると、現在は正社員になったというのは35.3%だけ。つまり、3分の2は「非正社員」のままなのです。以前このブログで紹介したが、ヨーロッパでは、非正規労働者が3年後も非正規雇用のままという割合は、多くても30%程度です。政府や財界・大企業は、「雇用の多様化」などといって派遣労働などを拡大してきましたが、結局、非正規雇用を「使い捨て」にしていると言わざるを得ません。

若者の自活厳しく 「自身の収入のみで生活」44%どまり:日本経済新聞
非正規就職の若者、6割が正社員なれぬまま 厚労省調査:朝日新聞

若者の自活厳しく 「自身の収入のみで生活」44%どまり/厚労省調査

[日本経済新聞 2010/9/2 19:00]

 厚生労働省は2日、2009年の働く若年者(15〜34歳)の雇用実態調査を発表した。自身の収入のみで生活している若年者は44%にとどまり、賃金水準が低く自活の難しい実態が浮き彫りとなった。自身の収入に加え、親の収入など他の収入に頼っている若年者は46.8%だった。
 就業形態別にみると、自身の収入のみで暮らしている正社員の若年者は51.6%だったが、パート・アルバイトや契約社員など正社員以外で働く若年者では30.3%にとどまった。一方、自身の収入だけでなく他の収入にも頼って生活する正社員は44.6%、正社員以外は50.9%だった。
 全労働者に占める若年者の割合は32.9%。産業別にみると、情報通信業が45.8%と最も多く、次いで宿泊業・飲食サービス業が45.4%だった。
 調査は事業所と個人を対象に実施。09年10月1日時点の状況について聞いた。有効回答数は9457事業所、1万5124人。有効回答率は事業所56%、個人64.5%だった。

非正規就職の若者、6割が正社員なれぬまま 厚労省調査

[asahi.com 2010年9月3日7時10分]

 厚生労働省は2日、2009年の若年者雇用実態調査を発表した。学校卒業後に非正社員として就職した人のうち6割は、その後も非正社員として働いていることがわかった。
 対象は15〜34歳の労働者。5人以上の従業員のいる9457事業所と、それらの事業所で働く1万5124人が答えた。昨年10月〜11月に実施した。
 労働者には、学校卒業後1年間の状況と現在の就業形態を聞いた。卒業後に「正社員として就職した」は、71.2%、「正社員以外として就職」は22.9%、「無業だった」は5.2%。
 「正社員以外として就職」のうち、現在も正社員以外の人は64.7%にのぼる。男性は54.4%、女性は72.9%。年齢別では、15〜19歳が88.7%、20〜24歳が79.6%、25〜29歳が61.3%、30〜34歳で52.8%だった。
 またフリーターを正社員に採用するかどうかでは、事業所の87.5%が「採用する場合がある」と答えたものの、過去3年間に「採用に至った」のは11.6%にとどまった。

厚生労働省の発表資料はこちら↓。

厚生労働省:平成21年若年者雇用実態調査結果の概況

生計状況の調査結果は、以下の通り。

区分 自分の収入のみ 自分の収入
+他の収入
他の収入のみ
総数 44.0 46.8 8.6
男性 56.9 38.2 4.4
女性 30.8 55.7 13.0
15〜19歳 15.4 44.4 39.9
20〜24歳 35.7 49.1 14.9
25〜29歳 48.4 46.2 4.4
30〜34歳 49.7 46.0 4.0
正社員 51.6 44.6 3.3
正社員以外 30.3 50.9 18.2

マルクスは、労働力の価値は「労働力の再生産費」によって規定され、賃金はこの労働力の価値にしたがって決まるとしました。しかし、現に若者の半数が「自分の収入だけでは生活できない」ということになると、本当に賃金は労働力の価値どおりに支払われているのか? あるいは、賃金は本当にマルクスの言うように「労働力の再生産費」によって規定されるのか? という疑問がわいてきます。もちろん、賃金が労働力の価値どおり支払われるというのは、経済学の理論的分析にあたっての前提であって、マルクス自身、実際の資本家がさまざまな形で賃金を労働力の価値未満に引き下げて儲けを上げようとすることを指摘しています ((『資本論』第10章「相対的剰余価値の概念」、新日本出版社、新書版第3分冊、547-548ページ、上製版Ib、545-546ページ、参照。))。しかし同時に、マルクスは、そうしたことは現実には非常に重要なものでも、理論的にはあくまで例外的現象として理解すべきものとみなしていたと考えられます。むしろ、若者の半数が「自分の収入だけでは生活できない」というのは、1つには、「労働力の価値分割」 ((『資本論』第1部、第13章「機械と大工業」第3節「労働者におよぼす機械経営の直接的影響」、新日本出版社、新書版第3分冊、683ページ、上製版Ib、681ページ参照。))の問題として考える必要があるということ。また1つには、いま日本では「労働力の価値」そのものが切り下げられつつある、というふうに問題を捉えるべきなのかも知れません ((『資本論』第22章「剰余価値の資本への転化」第4節「剰余価値の資本と収入への比例的分割から独立して蓄積の規模を規定する諸事情」、新日本出版社、新書版第4分冊、1029ページ以下、上製版Ib、1025ページ以下参照。))。

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