漁船長、「処分保留」で釈放

尖閣諸島で海上保安庁の巡視艇に衝突した中国船の船長が釈放されることになったというニュース。しかし、海上保安庁や検察を含め一連の対応は、よくわからないことだらけ。

【中国人船長釈放】「国民に納得のいく説明を」 共産委員長がコメント:MSN産経ニュース

そもそもの疑問は、同船長が、不法入国とか領海侵犯、違法操業ではなく、「公務執行妨害」で逮捕されていること。新聞報道を見る限り、違法操業容疑でも捜査はおこなわれたらしいが、違法操業をしていた証拠が見つかったという報道はない。

衝突も、那覇地検の記者会見によれば、「故意に衝突させた」とは言っているが、「追跡を免れるためとっさにとった行為」だとされているし、その衝突は「航行障害を発生させる恐れや、甲板上の乗組員らが海に投げ出される恐れがあった危険な行為」だったが、現実には「航行に支障が生じるものではなく、乗組員が負傷するなどの被害の発生もなかった」とされている。

そうなると、なぜ2週間以上にわたる長期の拘束が必要だったのか? という疑問がわいてくる。志位委員長が指摘するとおり、「逮捕の被疑事実、釈放にいたる一連の経過について」納得できる説明をしてもらいたい。

【中国人船長釈放】「国民に納得のいく説明を」 共産委員長がコメント

[MSN産経ニュース 2010.9.24 17:18]

 共産党の志位和夫委員長は24日、那覇地検が中国人船長の釈放の決定を発表したことについてコメントを発表した。全文は次の通り。

      ◇

 尖閣諸島付近の日本の領海で、外国漁船の不法な操業を海上保安庁が取り締まるのは当然である。検察は、逮捕した船長を「処分保留」として釈放することを決めたが、逮捕の被疑事実、釈放にいたる一連の経過について、国民に納得のいく説明を強く求める。
 このような事件を繰り返さないためには、日本政府が、尖閣諸島の領有権について、歴史的にも国際法的にも明確な根拠があることを中国政府や国際社会に明らかにする積極的な活動をおこなうことが必要である。同時に、わが党は、中国側に対しても、こうした事件にさいして、緊張を高めない冷静な言動や対応をとることを求めたい。

なお、中国側の強硬姿勢の根底には、尖閣諸島は「中国の領土だ」という主張がある。中国領なのに、日本側が身柄を拘束したのは不当である、という論立てだ。中国政府が、この問題をすでに国際社会に持ち出してしまった以上、日本政府は、国際社会にたいして、尖閣諸島は日本が正当に領有したものであることを明らかにしておく必要がある。この点でも、日本政府の対応はきわめて疑問である。

日本の領有権については、日本共産党の「しんぶん赤旗」のこの記事↓を参照。

日本の領有は正当 尖閣諸島 問題解決の方向を考える:しんぶん赤旗(9/20付)

志位委員長のコメントは、産経新聞のでっち上げではない。共産党のホームページにもちゃんと発表されている。

尖閣諸島問題をめぐる事態についてのコメント

【追記】

今回の対応については、海外でもおおむね日本の外交的失敗を論評するむきが多いが、しかし、エコノミスト誌のように、中国が評判を落とす結果になったというコメントもある。あらためて、日本側が道理を立てることが大事だろう。

過激中国、評判は失墜 各国メディア、警戒にじむ:東京新聞

過激中国、評判は失墜 各国メディア、警戒にじむ

[東京新聞 2010年9月25日 夕刊]

 【ニューヨーク=阿部伸哉】沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖の漁船衝突事件で日本が中国人船長釈放で幕引きを図ったことについて、米メディアでは、日本の外交姿勢より、経済力や資源をてこに強硬姿勢で押し切った中国を警戒する解説や分析が目立っている。
 ワシントン・ポスト紙(電子版)は24日、中国側の強気一辺倒の対応に「共産党指導部の力が弱まり、人民解放軍や国営企業などが勢力を増した結果」と分析。今後は特に対日や対米で関係がこじれることになると予測した。
 特に中国がハイテク製品に必要なレアアース(希土類)を禁輸したとの報道に米メディアは注目。3大ネットワークの1つ、NBCテレビ(電子版)は記者ブログで「中国からの輸入に頼る米国も打撃を受けることになる」と警告した。
 日本側が「圧力に屈した」との見方は強いが、英誌エコノミスト(同)は「最終的には中国が過剰な攻撃性を示して評判をおとしめた」と指摘。「成熟した国際プレーヤーとは思えない行動で、『平和的な発展』は形だけにすぎないと分かった」と批判した。

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