内閣支持率が急落

菅政権の内閣支持率が急落している。原因ははっきりしている。尖閣諸島での中国漁船衝突事件にたいする対応だ。

「毎日新聞」の調査では、「検察が中国人船長を処分保留のまま釈放した判断」について「適切でなかった」が74%を占め、「読売新聞」の調査でも72%にのぼる。「検察の判断」という説明についても、87%(毎日)、83%(読売)が「納得できない」と回答している。

毎日新聞世論調査:内閣支持、急落49% 中国漁船衝突、対応に批判:毎日新聞
菅内閣支持下落53%、船長釈放「不適切」7割:読売新聞
「内閣・政党支持と関連問題」2010年10月電話全国世論調査:読売新聞

もう1つ注目されるのは、「毎日新聞」の調査で、「今後、日本と中国との関係は?」の質問に、回答が「関係改善を急ぐべきだ」31%、「しばらく距離を置くべきだ」31%、「日本の主張を優先すべきだ」35%と、完全に3分していること。これは、世論調査でしばしばお目にかかる構図で、要するに、世論はどうしたらよいのか明確な判断が下せないでいるのだ。

問題の根本――つまり、尖閣諸島の日本領有にはどんな歴史的、国際法的な正当性があるのか。その点をもっと国内でもアピールしないと、世論の混乱は解消しないだろう。

毎日新聞世論調査:内閣支持、急落49% 中国漁船衝突、対応に批判

[毎日新聞 2010年10月4日 東京朝刊]

 毎日新聞は2、3の両日、全国世論調査を実施した。菅内閣の支持率は49%と再び5割を割り込み、9月の前回調査(64%)から15ポイント減と急落。沖縄県・尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件を巡り、中国人船長の釈放を「検察の判断」とする政府の説明に「納得できない」との回答が87%を占めた。「政府が政治判断を示すべきだった」との回答も80%に上り、政府対応への批判が支持率低下を招いた。
 菅直人首相は9月の民主党代表選で、小沢一郎元幹事長を破り再選。その後の内閣改造・党役員人事でも「脱小沢路線」をとり、前回の世論調査では、内閣支持率が64%まで急上昇した。しかし、乱高下する支持率は消極的支持の表れともいえ、政権運営は厳しさを増している。
 漁船衝突事件を巡り、9月8日に中国人船長を逮捕した判断の是非を聞いたところ、「適切だった」が83%に上る一方、同25日に釈放した判断については「適切でなかった」が74%を占めた。「釈放は検察の判断」とする政府の説明に「納得できない」との回答は、内閣、民主党支持層でも8割を超えた。逮捕に踏み切った当初方針から、対応を転換したにもかかわらず、十分な説明がなかったことに批判が集まった。【野口武則】

主な調査結果

※数字は%、カッコ内は前回調査

◆菅内閣を支持しますか?
支持……49(64) 不支持……34(19)

◆沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を巡り中国人船長を逮捕した判断は?
適切だった……83 適切でなかった……13

◆検察が中国人船長を処分保留のまま釈放した判断は?
適切だった……22 適切でなかった……74

◆中国人の釈放について「検察の判断」として、政治介入を否定している政府の説明は?
納得できる……10 納得できない……87

◆今回の事件で中国に対するイメージは?
良くなった……0 悪くなった……44 変わらない……53

◆今後、日本と中国との関係は?
関係改善を急ぐべきだ……31
しばらく距離を置くべきだ……31
日本の主張を優先すべきだ……35

◆どの政党を支持しますか?
民主…31(34) 自民…14(15) みんな…10(10) 公明…5(4) 共産…2(3) 社民…1(1) なし…35(29)

◆取り調べの全過程の録音・録画(可視化)には?
賛成……81 反対……14

菅内閣支持下落53%、船長釈放「不適切」7割

[2010年10月3日21時58分 読売新聞]

 読売新聞社が1?3日に実施した全国世論調査(電話方式)で、菅内閣の支持率は53%となり、内閣改造直後の前回調査(9月17?18日実施)の66%から下落した。
 不支持率は37%(前回25%)だった。沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、検察が中国人船長を処分保留のまま釈放したことを「適切ではなかった」と思う人は72%に達し、その理由としては「日本は圧力をかけると譲歩するという印象を与えるから」が41%で最も多かった。中国側の強硬姿勢に対する日本側の対応への不満が、内閣支持率を引き下げたようだ。
 船長釈放を「適切だった」と思う人は19%で、その理由では「日中関係の悪化を避けるべきだから」45%が最多だった。
 船長釈放の決定について、菅首相は「検察当局が判断した結果だ」と説明し、政治介入はなかったとしている。これについては「納得できない」が83%に上った。
 中国側の対応について聞いたところ、予定されていた政府間協議の延期や民間交流の一部中止などを「行き過ぎだ」と答えた人は89%だった。船長釈放後、日本に謝罪と賠償を要求していることに対しては「納得できない」が94%を占めた。
 今後の日本政府の対応では、尖閣諸島が日本の領土であることを、国際社会により明確に主張すべきだと思う人が90%に達した。尖閣諸島をめぐる問題に対応するため、米国との同盟関係を「深めるべきだ」は71%となった。
 対中感情に関しては、中国を「信頼していない」が84%だった。2004年以降の同種の調査では、最高だった08年の77%を上回った。
 また、民主党政権の外交・安全保障政策に不安を感じる人は84%に上った。
 菅内閣に優先的に取り組んでほしい課題では、「景気や雇用」34%、「年金など社会保障」27%、「外交や安全保障」14%などの順に多かった。同じ質問をした8月6?8日実施の調査では「外交や安全保障」は4%で、大幅に増えたのが目立つ。
 政党支持率は、民主36%(前回36%)、自民16%(同18%)などで、「支持政党なし」の無党派は36%(同31%)だった。

「内閣・政党支持と関連問題」 2010年10月電話全国世論調査

[読売新聞 2010年10月4日]

▽調査日:2010年10月1-3日 対象者:全国有権者
 方法:RDD追跡方式電話聴取法
 発信用電話番号(対象全域バンク4)4500件
 有権者在住世帯が確認できたもの  1731件
 各世帯で有権者1人を無作為に指定(乱数方式)
 有効回答 1104人(有権者世帯に対する回答率 64%)

Q あなたは、菅内閣を、支持しますか、支持しませんか。
 答 1.支持する    53
   2.支持しない   37
   3.その他     6
   4.答えない    4

SQ1【前問の答えが(1)の人だけ】
   支持する理由を、次に読みあげる6つの中から、1つだけ選んで下さい。
  答 1.政策に期待できる         13
    2.政治主導の政策決定を目指している 17
    3.首相に指導力がある        3
    4.首相が信頼できる         16
    5.閣僚の顔ぶれがよい        10
    6.非自民の政権だから        33
    7.その他              5
    8.答えない             4

SQ2【前問の答えが(2)の人だけ】
   支持しない理由を、次に読みあげる6つの中から、1つだけ選んで下さい。
  答 1.政策に期待できない        24
    2.政治主導の政策決定に期待できない 15
    3.首相に指導力がない        35
    4.首相が信頼できない        11
    5.閣僚の顔ぶれがよくない      4
    6.非自民の政権だから        6
    7.その他              1
    8.答えない             5

Q 今、どの政党を支持していますか。1つだけあげて下さい。
 答  1.民主党      36
    2.自民党      16
    3.公明党       2
    4.共産党       2
    5.社民党       1
    6.みんなの党     5
    7.国民新党      0
    8.たちあがれ日本   0
    9.新党日本      —
   10.新党改革     –
   12.支持政党なし   36
   13.答えない      1

Q 今後、菅内閣に、優先的に取り組んでほしい課題があれば、次の6つの中から、1つだけ選んで下さい。
 答 1.景気や雇用      34
   2.年金など社会保障   27
   3.少子化や子育て    8
   4.消費税など財政再建  10
   5.外交や安全保障    14
   6.政治とカネ      7
   7.その他        0
   8.とくにない      1
   9.答えない       1

Q 大阪地検特捜部の検事が、郵便不正事件を巡る証拠品を改ざんした証拠隠滅容疑で逮捕されました。この問題が起きた原因は、検事個人の資質の問題が大きいと思いますか、それとも、検察の組織の問題が大きいと思いますか。
 答 1.検事個人の資質   18
   2.検察の組織     74
   3.答えない      8

Q 検察の捜査に対する信頼度は、今回の問題が起きる前と比べて、上がりましたか、下がりましたか、それとも、変わりませんか。
 答 1.上がった    1
   2.下がった    68
   3.変わらない   27
   4.答えない    4

Q 尖閣諸島沖の日本の領海内で起きた中国漁船による衝突事件で、検察は、中国人の船長について、「計画性は認められず、今後の日中関係を考慮した」などとして、処分保留のまま釈放しました。この判断を、適切だったと思いますか、適切ではなかったと思いますか。
 答 1.適切だった      19
   2.適切ではなかった   72
   3.答えない       9

SQ1【前問の答えが(1)の人だけ】
   適切だったと思う理由を、次の4つの中から、1つだけ選んで下さい。
  答 1.日中関係の悪化を避けるべきだから     45
    2.経済への影響があるから          23
    3.中国で日本企業の社員が拘束されていたから 17
    4.必ずしも起訴しなくてもよいから      10
    5.その他                  1
    6.答えない                 4

SQ2【前問の答えが(2)の人だけ】
   適切ではなかったと思う理由を、次の4つの中から、1つだけ選んで下さい。
  答 1.日本は圧力をかけると譲歩するという印象を与えるから 41
    2.中国が領有権の主張を強めるから           14
    3.検察が外交関係を考慮すべきではないから       12
    4.日本の領海での悪質な事件だから           30
    5.その他                       0
    6.答えない                      2

Q 菅首相は、中国人船長の釈放の決定について、「検察当局が判断した結果だ」と説明し、政治介入はなかったとしています。この説明に、納得できますか、納得できませんか。
 答 1.納得できる    11
   2.納得できない   83
   3.答えない     7

Q 中国は、予定されていた日本政府との協議を延期したり、民間交流の一部を中止したりして、経済にも影響が出ています。中国の一連の対応は、行き過ぎだと思いますか、そうは思いませんか。
 答 1.行き過ぎだ      89
   2.そうは思わない    7
   3.答えない       4

Q 中国人船長の釈放後、中国が、日本に対して謝罪と賠償を要求していることに、納得できますか、納得できませんか。
 答 1.納得できる   3
   2.納得できない  94
   3.答えない    3

Q 日本政府は、尖閣諸島が日本の領土であることを、国際社会により明確に主張すべきだと思いますか、その必要はないと思いますか。
 答 1.明確に主張すべきだ    90
   2.その必要はない      5
   3.答えない         5

Q 尖閣諸島をめぐる問題に対応するため、今後、日本は、アメリカと同盟関係を深めるべきだと思いますか、そうは思いませんか。
 答 1.深めるべきだ     71
   2.そうは思わない    19
   3.答えない       10

Q あなたは、中国を、信頼していますか、信頼していませんか。次の4つの中から、1つ選んで下さい。
 答 1.大いに信頼している     1
   2.多少は信頼している     12
   3.あまり信頼していない    49
   4.全く信頼していない     35
   5.答えない          2

Q 民主党政権の外交や安全保障の政策に、不安を感じますか、感じませんか。次の4つの中から、1つ選んで下さい。
 答 1.大いに感じる      39
   2.多少は感じる      45
   3.あまり感じない     11
   4.全く感じない      3
   5.答えない        3

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