金曜日は日フィルの定期演奏会でサントリーホールへ。僕の好みからいうと、1回券ならおそらく選ばないようなプログラムですが、そういう曲も聴けるというのが定期会員の面白みです。
- オネゲル:交響詩《夏の牧歌》
- ラヴェル:バレエ組曲《マ・メール・ロワ》
- ウォルトン:オラトリオ《ベルシャザールの饗宴》
日フィルがフランスもの…?! というと、一昔前ならキワモノか怖いもの見たさ(聴きたさ?)という感じでしたが、いまの日フィルは違います。尾高さんのていねいな指揮ぶりもありますが、弱音のところまで弦がきれいな、柔らかい音を響かせていました。お見事!! という感じでした。
さらに素晴らしかったのが、後半の「ベルシャザールの饗宴」。
イギリス音楽というと、ターナーの風景画のような? それなりにうまいんだけど、なんか表面的で深みがない、という感じでしたが、これは全然違ってました。全体で40分弱の作品の3分の2ぐらいは、歌、それも合唱が主役で、オケはそのつなぎというか、合いの手みたいに、要所要所で盛り上げる役回り。なのですが、それが実にドラマティック。2階席の左右(LA、RA)に配置されたバンダから金管の音が降り注いで、盛り上がりました。
筋書きは、旧約聖書によるバビロン崩壊の物語。米軍はイラクから撤退を完了したとはいえ、いまのご時世に、「大いなる都バビロンは跡形もなく消え去る…」などという歌を聴かされるのは、なかなか複雑なものがあります。しかし、バビロンでは金、銀、麻(リンネルだ!)だけでなく人の魂まで売られているとか、「金の神を賛美せよ」「銀の神を賛美せよ」とか、そういう歌を聴いていると、まるで『資本論』の商品とか貨幣とかの話を聞いているように思えてきます。そうなると、物質的な財貨や富におぼれたブルジョアの“王国”は必ず滅びる、というふうにも聴こえてきて、意外とこれはよくできたアイロニーかも知れないと思えておもしろかったです。
合唱は晋友会。すごく早口で歌を歌わなければならないところもあって、合唱としてはかなり大変なところもあると思うのですが、見事に歌いきっていました。バリトンは三原剛氏。朗々としてはいましたが、ちょっとビブラートが効きすぎていて、この作品にはちょっとそぐわなかった感じでした。
尾高さんは、いつもは優しく、いかにもこともなげに棒を振ってますが、今回ばかりは、相当熱のこもった指揮でした。日フィルからこれだけの音を引き出すあたりは、さすがお見事でした。
それにしても、こんな素晴らしい演奏会だったのに、客席は半分ほどしか埋まっていません。あ〜、もったいない!!
【関連ブログ】
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ウォルトン@サントリー | トノの音楽そぞろある記
東条碩夫のコンサート日記 10・23(土)尾高忠明指揮日本フィルハーモニー交響楽団
ほいでもって、こちらは日フィル・スタッフによる練習風景のリポート。確かに、誰もお客さんのいないホールで聴くと迫力あるでしょうねぇ〜 (^_^;)
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【演奏会情報】 日本フィルハーモニー交響楽団第624回東京定期演奏会
指揮:尾高忠明/バリトン:三原剛/合唱:晋友会合唱団/コーラスマスター:清水敬一/コンサートマスター:扇谷泰朋/ソロ・チェロ:菊地知也/会場:サントリーホール/開演:2010年10月22日 午後7時