今日、2010年度の文化勲章受章者が発表されましたが、そのなかに日本中世史の脇田晴子さんのお名前がありました。おめでとうございます。
蜷川幸雄、三宅一生氏に文化勲章…ノーベル組も:読売新聞
文化勲章受章者・文化功労者:主な業績:毎日新聞
業績として、「日本中世史の分野で、中世日本に自治都市的な性格を見いだすとともに、歴史の中で女性を浮き彫りにするなど商業史、都市史、女性史など広範にわたり業績を上げた。また、石見銀山(島根県)の07年のユネスコ世界遺産登録にも尽力した」と紹介されていますが、『日本中世商業発達史の研究』(御茶の水書房、1969年)、『日本中世都市論』(東大出版、1981年)はこの分野の必読文献。私は日本近世史が専攻でしたが、大学院時代に勉強させていただきました。m(_’_)m
日本近世史の脇田修先生と「婦唱夫随」で書かれた『物語 京都の歴史』(中公新書、2008年)は、このブログでも紹介したことがありますが、いまでも新刊書がでると楽しみに読んでいます。
蜷川幸雄、三宅一生氏に文化勲章…ノーベル組も
[2010年10月26日11時31分 読売新聞]
政府は26日、2010年度の文化勲章受章者7人と文化功労者17人を発表した。
文化勲章の受章者には、原子核物理学・学術振興の有馬朗人(80)、建築の安藤忠雄(69)、ともに有機合成化学の鈴木章(80)、根岸英一(75)、演劇の蜷川幸雄(75)、服飾デザインの三宅一生(72)、日本中世史の脇田晴子(76)の7氏が選ばれた。
文化勲章受章者は文化功労者から選ばれるため、ノーベル化学賞の鈴木、根岸の両氏は今回、文化功労者も顕彰される。
文化功労者は、スポーツの王貞治(70)、指揮の大野和士(50)、映画の吉永小百合(65)、歌舞伎の市川猿之助(70)、X線天文学・学術振興の田中靖郎(79)、環境リスク管理学の中西準子(72)、日本近世文学の中野三敏(74)、詩の中村稔(83)、光化学・電気化学の藤嶋昭(68)、書の古谷蒼韻(86)、写真の細江英公(77)、刑事法学の松尾浩也(82)、生化学の松尾壽之(82)、漫画の水木しげる(88)、幹細胞生物学の山中伸弥(48)の各氏。
文化勲章は毎年5人ほど選ばれているが、今年は鈴木氏ら2人の受章がノーベル賞決定後に決まった。
文化勲章の親授式は11月3日に皇居で、文化功労者の顕彰式は同4日に都内のホテルオークラ東京で行われる。
【追記】
しかし、どの新聞を見ても脇田晴子さんのインタビューが載ってないなぁと思っていたら、今朝になって、朝日新聞の石川版(現在、脇田晴子さんは石川県立歴史博物館の館長さん)に載っていました。
「月並みですけど光栄です」文化勲章受章の脇田晴子さん:朝日新聞マイタウン石川
「月並みですけど光栄です」文化勲章受章の脇田晴子さん
[asahi.com マイタウン石川 2010年10月27日]
26日に発表された文化勲章受章者に、歴史学者で県立歴史博物館長の脇田晴子さん(76)が選ばれた。同館で記者会見し、「研究が認められ、月並みですけど光栄です」と喜びを語った。
2007年から館長を務めている脇田さんは、平安末期〜安土桃山時代の都市論、商業論などを研究。「子育てと仕事を両立する中、他人と同じことを研究しても勝ち目はない」と、人が目を向けない分野を切り開いた。中でも力を入れたのが女性史。「これまでの歴史は『男性史』で、女性は忘れられてきた。人間の半分は女性。二つ合わせてやっと人間の歴史になる」
受章の知らせに、夫で大阪歴史博物館長の修さんには「おう、よかったな」と言われたという。「人生もたそがれの季節ですが、死ぬまでにどれだけ書けるかしら」となお旺盛な研究意欲をのぞかせた。
脇田晴子さんは、2000年12月、『新しい歴史教科書をつくる会』の動きにたいして、歴史研究者60氏が発表した共同アピール「史実をゆがめる『教科書』に歴史教育をゆだねることはできない」に、呼びかけ人の1人として加わっておられます。
【さらに追記】
これまで文化勲章をもらった人を調べてみると、日本史の分野からの受賞は非常に少ない。1982年坂本太郎氏、1986年岡義武氏、1990年石井良助氏、1996年竹内理三氏、昨年(2009年)速水融氏ぐらいです(見逃しているかもしれませんが)。そういう意味では、「つくる会」の歴史教科書に反対するような日本史の研究者が文化勲章をもらったのは、ほんとうに初めてのことかも知れません。