60億キロを旅して、昨年、地球に帰還した「はやぶさ」。カプセル内から見つかった微粒子が小惑星イトカワのものであることが判明しました。おめでとうございます。ヽ(^o^)/
100分の1ミリ以下の微粒子ばかりとはいえ、これまで人類が持ち帰った地球外物質は月の石だけ、ということを考えれば、これがどれほど画期的な大発見かということが分かるでしょう。
イトカワの石と断定 「はやぶさ」持ち帰りの微粒子:中日新聞
小惑星探査機:はやぶさ採取「イトカワ微粒子」 人類に巨大な一歩:毎日新聞
イトカワの石と断定 「はやぶさ」持ち帰りの微粒子
[中日新聞 2010年11月16日 夕刊]
高木義明文部科学相は16日の閣議後会見で、小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルから回収した微粒子について、元素組成を調べた結果、小惑星「イトカワ」由来の岩石であると分かったと発表した。はやぶさが2005年に接近した際に調べたイトカワ表面の化学組成とほぼ一致した。小惑星からの岩石試料の回収成功は世界初の快挙だ。
地球以外の天体の表面から岩石試料を持ち帰ったのは1960〜70年代の米国のアポロ計画、旧ソ連のルナ計画の月の石以来となる。
宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)によると、小さなへらでカプセル内の収納容器をなぞり、ケイ素を含む岩石質の微粒子約1500個を回収。ほとんどは100分の1ミリ以下で、エックス線で元素分析できる電子顕微鏡でへらごと調べた。
微粒子の多くが鉄とマグネシウムを主成分に持つ「かんらん石」や「輝石」と呼ばれる鉱物だった。地球上のかんらん石に比べて鉄が多く、鉄とマグネシウムの比率がイトカワの観測値とよく合っていたという。また、国内の大学の研究者らとともにデータを精査。1500個のほぼすべてが地球外物質の特徴を示した。
これらの結果から、地球でたまたま混入した物質ではなくイトカワから持ち帰った岩石と判断した。
はやぶさはイトカワ着陸時に金属球をうち込み、飛び散った岩石片を収納容器に入れる計画だったが、装置トラブルで球をうてなかった。宇宙機構は「着陸時に舞い上がった微粒子が容器に入った」とみている。
微粒子のサイズは想定より小さいが、大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)によるエックス線CT(コンピューター断層撮影)や、元素同位体比測定など予定していた詳細分析は実施できる見通し。今後、太陽系の成り立ちを理解する貴重な手掛かりが得られると期待が高まる。
小惑星探査機:はやぶさ採取「イトカワ微粒子」 人類に巨大な一歩
[毎日新聞 2010年11月16日 東京夕刊]
7年間、計60億キロに及ぶ前人未到の旅に挑んだ小惑星探査機「はやぶさ」が、人類の宝ともいえる大きな「土産」を持ち帰っていたことが16日明らかになった。プロジェクトを率いた川口淳一郎・宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授は「胸がいっぱい」と声を震わせ、関係者は称賛した。「500点満点」の成果を元に、今後は世界中の科学者が太陽系の誕生の秘密に迫る。
◇JAXA教授「夢超えた」
「帰ってきただけでも夢のよう。夢を超えたことで、どう表現してよいか分からない。点数はない。付けたくない」と川口さんは語った。
03年の打ち上げ当時、はやぶさが数多くの人類初の技術に挑むため、イトカワの試料の採取成功まですべて達成した場合「500点に値する」と話していたが、喜びを抑えきれない様子だ。
昨年11月中旬、はやぶさのイオンエンジンにトラブルが生じ、暗雲が漂ったが、奇跡的に復活した。川口さんは「想定を超える成功が重なった。7年間もさることながら、プロジェクトを始めて15年。その前から数えると四半世紀になる。感慨無量。苦労が報われ、よかったなと心から思う」と顔を紅潮させた。
会見には、藤村彰夫JAXA教授、微粒子を電子顕微鏡で分析した中村智樹・東北大准教授らも同席。藤村さんは「最初カプセルを開けた時に真っ青になった」と明かす。微粒子が0.01ミリ以下で、目に見えるものがなかったからだ。地球外物質と特定された1500個の微粒子の中には、地球上の物質に含まれるものもあれば、存在しないものもある。中村さんは「分析を進め、地球にほとんどない結晶を見つけた時は、ガッツポーズの瞬間でした」と語った。
18日の政府の事業仕分けでは、JAXAの運営費交付金削減も議論される。川口さんは「イノベーション(革新)には時間がかかる。将来への投資として近視眼的にならないでほしい」と注文を付けた。◇「努力完結、素晴らしい」 関係者から続々喜びの声
はやぶさのカプセルからイトカワの物質が確認されたことに、関係者の間で「よくやった」と喜びの声が広がった。「宇宙戦艦ヤマト」など宇宙関連の作品をヒットさせている漫画家、松本零士さんは「人類によって地球が傷つけられている今、他天体の物質を探究することは、地球を守るためにも不可欠な活動。試料はとても小さいが、人類にとって巨大な一歩だ。日本がやりとげたことも素晴らしい」と喜んだ。
試料確認の立役者となったのは、はやぶさが宇宙空間で切り離したカプセルが、大気圏で燃え尽きずに帰還したからだ。カプセル開発の責任者、山田哲哉・宇宙航空研究開発機構(JAXA)准教授は「はやぶさの航行後、試料の分析へとバトンをつなぐことができ、ほっとしている。努力をしたかいがあった」と語った。〔後略〕