なるほど確かに「ど真ん中への超変化球」

読売日響第498回定期演奏会(2010年11月29日)

ブルックナーばっかり聴いて、いささかヘロヘロ気味ですが、本日は読響の定期演奏会。指揮は、読響常任指揮者のシルヴァン・カンブルラン。プログラムは、かなり変わり種です。

  • ドビュッシー(コンスタン編曲):〈ペレアスとメリザンド〉交響曲
  • コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
  •  休憩
  • マーラー(ブリテン編曲):野の花々が私に語ること(原曲:交響曲第3番 第2楽章)
  • シューマン:交響曲第4番 ニ短調 op.120(第1稿)

ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」は、今年5月の新日フィルの定期演奏会で、コンサート・オペラ形式で聴いたことがありますが、そのときは茫洋としてつかみどころがなく、何とも分かりかねていたのですが、それに比べると今日の演奏は印象がよりはっきりして、とてもよく分かりました。コンスタンの編曲で、全体が25分程度に短縮されたこともあるのでしょうが、同じように曖昧模糊とした世界観を見せながら、それでもずいぶんと親しみやすい印象をもちました。

2曲目は、モラヴィア出身のコルンゴルトがアメリカ亡命中に作曲した作品。内面的な深みはともかく、そこここに映画音楽のようなメロディが出てきます。ヴィヴィアン・ハーグナーのソロは、細かいところまで心遣いの行き届いた演奏。それに、読響の弦の美しさが見事に解け合っていました。

後半は、ドイツもの2曲。といいながら、これがかなりの癖玉で、3曲目はマーラーの交響曲第3番第2楽章をイギリス人ブリテンが「良心的兵役拒否」のためにアメリカに渡っていた時代に編曲したもの。マーラーの交響曲が、2管編成、弦は12-10-8-6-4編成になってしまうのだから、とんだもんです。原曲のユダヤ人的な印象のあいだに、突然いかにもイギリス風という平明な部分が飛び出してきて、なかなか奇妙な感覚です。 (^_^;)

最後はシューマンの交響曲第4番。ただし、第1稿。カンブルランの指揮は、切れ味よく、軽快なテンポで、青年シューマンらしいはつらつとした演奏。稿の違いもありますが、僕が慣れ親しんだバーンスタインの第4番とはかなり印象が違いました。しかし、なるほどと思わせる見事な演奏でした。ブラームスが「軽さと透明さの魅力」と言ったのも頷けました。

「ど真ん中への超変化球」というのは、プログラムに解説を書いていた渡辺和氏の表現ですが、ほんとうにその通り。カンブルランの、一筋縄ではいかない「遊び心」を楽しませていただきました。

【演奏会情報】 読売日響第498回定期演奏会
指揮:シルヴァン・カンブルラン/ヴァイオリン:ヴィヴィアン・ハーグナー/コンサートマスター:藤原浜雄/会場:サントリーホール/開演:2010年11月30日 午後7時

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