いささか古くなりましたが、「日本経済新聞」1月12日付朝刊1面に載っていた記事です。銀行の預金残高564兆円にたいして貸出残高は416兆円と、預貸金の差が約150兆円にも達しているというのです。
銀行預金、融資に回らず 10年末の差額、最大の150兆円:日本経済新聞
これについて、ブログなどでもいろいろなコメントが加えられていますが、かつては、家計は黒字で企業は赤字、だから銀行が預金を集めて企業に貸し出すという資金の流れ(家計→銀行→企業)がありました。しかし、いまや家計は赤字となり、逆に企業は余剰資金を貯め込んでいます。
問題は、家計は赤字、賃金が下がって、税・社会保険の負担が増え、さらに医療費や教育費など義務的負担が重くのしかかっているのに、それでもなお貯蓄を増やしているのは、なぜ? というところにあります。他方で、家計消費が減っているものだから、国内にはろくな投資先がない。
これを逆転させない限り、景気は良くならないということだけは明らかです。
銀行預金、融資に回らず 10年末の差額、最大の150兆円
[2011/1/11 21:13 日本経済新聞]
銀行に集まった預金が企業などへの融資に回らない。全国銀行協会によると2010年末の預金残高が564兆円に達する一方、貸出残高は416兆円と2年連続で減少。預金残高と貸出残高との差は150兆円近くと過去最大になった。設備投資などを手控えた企業の資金が預金として積み上がる一方、借り入れ需要が高まらず、マネーの循環が滞っている。
昨年末の預金残高は09年末に比べ1.5%増え、比較可能な統計がある1999年以降で最大だが、貸出金残高は2.1%減。預金がどれくらい貸し出しに回ったかを示す「預貸率」も過去最低の73%と、10年前に比べ約25ポイントも低下した。中小企業向けの貸出残高は171兆円と、ここ10年で約60兆円減らした。
銀行は融資に回らない資金を国債投資に振り向け、昨年11月末の保有残高(日銀調べ)は142兆円まで拡大。国の財政悪化が顕著となる中、長期金利の上昇に歯止めをかけている面もある。
銀行融資の減少は、景気の停滞で企業の資金需要が落ち込んでいるためだ。10年7〜9月の民間設備投資はなお金融危機前の8割程度。国内銀行の平均貸出金利は昨年10月に初めて1.0%台まで下がったが、企業の投資意欲は高まらない。
13年に国際的に銀行の自己資本規制が強化される影響もある。新規制の対象となる可能性がある大手銀6行の昨年末の貸出残高は4.8%減。ほとんどが規制強化の対象外の地方銀行(63行)は0.8%増えた。
銀行は国内の停滞を受けてアジアなど新興国向けの貸し出しを強化している。ただ邦銀の海外支店の貸出残高は25兆円と規模はまだ小さい。
全銀協の資料はこちら。
全銀協の資料には、直接、日経が報道したような数字は載っていません。だから、他紙では、前年比で貸し出しが減ったといった記事しか載らなかったわけです。