[備忘録]経済学文献の英文テキスト

リカードウ『経済学および課税の原理』の英文テキストをインターネットで探していたら、こんなサイトを発見。

Library of Economics and Liberty

リカードウスミスだけでなく、トマス・ホジスキンの『民衆経済学』なんていうのまで掲載されています。

マルクス『資本論』も、もちろん英語ですが、第1部から第3部まで全部あります。パラグラフ数が書かれているので、邦訳との対照にも便利です。

で、なんでリカードウ『経済学および課税の原理』のテキストを探していたかというと、新日本出版社の『資本論』第13章第2節の末尾に次のような訳注がついています。これは、機械の使用によって作り出される「労働過剰」について、「リカードウは、redundancy of labour という」とマルクス自身が注記したところにつけられた訳注です(新日本出版社『資本論』上製版、Ib、677ページ。新書版、第3分冊、680ページ)。

*〔リカードウ『経済学および課税の原理』、第31章「機械について」では「人口が過剰になる」と言われているが、これは「労働の過剰」の意味である。堀訳、前出(雄松堂『リカードウ全集』第1巻――引用者)、448、453ページ〕(新日本出版社『資本論』上製版、Ib、679ページ。新書版、第3分冊、682ページ)

マルクスがわざわざリカードウの言葉を上げたのは、「労働の過剰」というのは自分が言っているだけではないぞ、リカードウだって言ってるぞ、ということを示したいからでしょう。そして、その redundancy of labour という言葉が、リカードウのどこに出てくるのかを示したのが、上記の訳注だと思われます。

で、なんでこんな持って回った文章になっているかというと、『経済学および課税の原理』に redundancy of labour という言葉が見つからなかったので、『原理』第31章「機械について」でリカードウが「人口が過剰になる」と言っているのが、「労働の過剰」の意味なんだ、という訳注になったわけでしょう。

そこで、あらためて『経済学および課税の原理』に、ほんとうに「労働の過剰」が出てこないのか調べてみた、というわけです。

で、最初に紹介したサイトで、redundancy of labour を検索してみると、確かに、見つかりません。

しかし、redundant, labour でAND検索をしてみると、3箇所ヒットします。確認してみると、第31章の第7パラグラフに、確かに「労働は過剰となる」(堀訳『リカードウ全集』第1巻、447ページ。岩波文庫『原理』下、286ページ)とあります。それ以外にヒットした2箇所は、残念ながら文章としては「人口が過剰になる」というものでした。

しかし、少なくとも1箇所では、リカードウが「労働が過剰になる」と実際に言っていたことが確認できたわけです。上記訳注は、redundancy of labour 「労働の過剰」という表記に、文字どおりこだわってしまったために、ちょっと早とちりをしてしまった、といえるかも知れません。

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