2010年末のヘッジファンドの資産残高が、世界全体で1兆9173億ドル(約158兆円)となり、リーマン・ショック前の過去最高額(1兆9314億ドル、2008年6月)に迫る回復を示している。「日本経済新聞」9日付夕刊トップの記事。
世界のヘッジファンド、運用資産が最高に迫る:日本経済新聞 2/9夕刊
リーマン・ショック後、欧米各国あげて公的資金を注ぎ込んできたから、過剰資金は、もはやすっかりリーマン・ショック前の水準に戻ってしまった。当時、あれほど投機資金の規制が言われたのに、「喉元過ぎれば」とはよく言ったもので、資本主義は学習能力がゼロのようだ。
世界のヘッジファンド、運用資産が最高に迫る/10年末158兆円、株や商品に流入
[日本経済新聞 2011/2/9 12:00]
【ニューヨーク=川上穣】世界のヘッジファンドの運用資産が急回復している。2010年12月末の資産残高は1兆9173億ドル(約158兆円)と1年前より約2割増えた。リーマン・ショック以前の08年6月末に記録した過去最高(1兆9314億ドル)にほぼ肩を並べた。米年金基金などが高い運用利回りを求め、ファンドへの投資を増やしつつある。金融緩和によるカネ余りもファンドを勢いづかせ、世界の株式や商品市場にマネーが流れ込む構図だ。
米調査会社ヘッジファンド・リサーチ(HFR)がまとめた。10年10〜12月にはファンド全体で差し引き131億ドルの資金が流入。09年7〜9月から6四半期連続で流入超になった。
米景気の回復期待を背景に、米長期金利は3.7%台と約9カ月ぶりの水準まで上昇しているが、歴史的に見るとまだ低水準にある。米国の年金基金や大学の財団などは、「より安定した収益が長期で見込めるファンドへの資金配分を増やしている」(米中堅ファンド)という。
とりわけ資金が潤沢なのが新興国の株式や債券で運用するファンドだ。米調査会社トリムタブスによると、昨年12月には新興国に投資するファンドに79億ドルの資金が流れ込み、08年7月以来の高水準を記録。世界的なM&A(合併・買収)の増加を見越し、買収に関連しそうな企業などへの投資で利益を狙うファンドも人気を集めている。
08年9月のリーマン・ショック直後は信用不安が高まり、投資家のファンド解約が殺到。HFRがまとめたファンド全体の運用成績を示す総合指数は08年の1年間でマイナス19%と最大の下げになった。世界的な株価や商品相場の上昇を追い風に、09年は20%高、10年は10%高と持ち直してきた。
8日のダウ工業株30種平均は7日続伸し、08年6月以来約2年8カ月ぶりの高値を付けた。ファンド全般に米景気の先行きに対する強気の見方が広がり、米国株の買いの持ち高を増やしているようだ。「資金の大量流入で、より高いリスクを取るファンドも増えてきた」(トリムタブス)との指摘もある。
ただ、金融危機で痛手を負った経験から投資家はファンドを厳しく選別。実績のあるファンドに集中的に資金が集まる「大型化」の傾向が強い。危機時に住宅ローン関連証券の空売りで高い収益を上げたジョン・ポールソン氏のファンドなどが大型ファンドの代表格だ。
危機前に比べ、運用資産を膨らませる「レバレッジ(借り入れ)」の比率は抑えられている。ファンドの存在感は再び高まりつつあるものの、相場の波乱要因と警戒するムードはそれほど強まっていない。