先週、池袋で聴いた神尾真由子×アルブレヒト×読響に続いて、またまた、サントリーホールで読響の定期演奏会を聴いてきました。
プログラムは、こんな感じ。シュポーア特集です。
- シューマン:〈「ファウスト」からの情景〉序曲
- シュポーア:歌劇〈ファウスト〉序曲
- シュポーア:ヴァイオリン協奏曲第8番 イ短調 op.47 〈劇唱の形式で〉
- シュポーア:交響曲第3番 ハ短調 op.78
でも、シュポーアってだれ? と思っていたら、2曲目の演奏が終わったところで、アルブレヒト氏みずからが指揮台でマイクをにぎって紹介してくれました。
ルイ・シュポーア(1784〜1859)は、ドイツ・ブラウンシュヴァイク出身で、ヨーロッパ各地を演奏旅行して大変な人気を集めたヴァイオリニストだったそうです。同時に、作曲家、指揮者としても活躍し、協奏曲を28曲、交響曲は10曲も作曲しました ((当日のプログラム解説の情報を含めて。))。
音楽ホールの常で、残響が大きくて(とくに2階席は)、何を話しているのか半分ほどしか聞こえませんでしたが、クラシックのコンサートといえば、「ベートーヴェン、ベートーヴェン、ベートーヴェン…、チャイコフスキー、ベートーヴェン、ベートーヴェン…」というのはstupidだ、音楽をふくむ芸術では、エベレストは世界一高い山、富士山は一番美しい山などと順位をつけがちだが、それぞれの山はそれぞれの良さを持っている、というようなお話でした。
で、1曲目と2曲目は、シューマンとシュポーアの「ファウスト」序曲の聞き比べ。シューマンのそれは、シューマン自身が満を持して書き上げた作品(プログラム解説による)だそうですが、まあシューマンらしいというか、曲は陰々滅々だし、ずるずる引きずるような展開でいまいち盛り上がりに欠ける感じ。それにくらべれば、シュポーアのほうが盛り上がるなあと思えました。
2曲目は、「劇唱の形式で」とあるように、オーケストラを相手にヴァイオリンに歌わせようという作品です。単一楽章の作品ですが、プログラム解説によれば、第1部では「劇的なオーケストラに対し、ソロが叙情的なモノローグ」を展開。第2部では「ベルカント風の美しいアリア」、第3部では「重音奏法を活用した華やかなレチタティーヴォ」というふうに展開します。
実際、神尾さんの演奏を聴いてみて、本当にこのプログラム解説のとおり、ヴァイオリンがしっとりと歌っているようでした。神尾真由子さんをソリストに迎えたら、チャイコフスキーとかメンデルスゾーンとか、いくらでも派手で聴衆を引きつける協奏曲がありそうなものですが、それに比べたら、シュポーアのヴァイオリン協奏曲はかなり地味。でも、それをじっくり聴かせてくれるあたりは、さすが神尾さんでした。
アンコールは、パガニーニ「24のカプリース」から第20番。シュポーアの雰囲気を壊さず、じっくり聴かせる感じの曲でした。
ところで、アルブレヒト氏は、かなりシュポーアに御執心ですが、しかし、後半の交響曲第3番は、やっぱり「忘れられる」運命だなぁ〜と思いながら、聴いていました。ロマン派ふうのところが多々あって、確かに美しい曲なんですが、しかし、これっていうインパクトが感じられないんですよね。これでは、「忘れられた」のもむべなるかな、という感じです。
それでも、珍しい作品を聴くことができたのは、アルブレヒト氏のおかげ。こういうのも、定期演奏会ならではの楽しみです。
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【演奏会情報】 読売日響第501回定期演奏会
指揮:ゲルト・アルブレヒト/ヴァイオリン:神尾真由子/コンサートマスター:デヴィッド・ノーラン/会場:サントリーホール/開演:2011年2月25日 午後7時〜