共産党の吉井英勝衆議院議員(比例近畿ブロック)の、原発の地震・津波にたいする安全性にかんする国会質問の続きです。
同じく2006年の10月の国会質問。
ここで吉井議員が質問しているのは2つの問題。
- 大規模地震等によって原発事故が起こったときに、外部電源が得られない、あるいは内部電源でも複数のバックアップがダメになって、冷却系が動かなくなったとき、原子炉はどうなるのかということを原子力安全委員会自身がどう想定しているのか。
- 冷却系が働かず、崩壊熱が除去できなくなり、核燃料棒のバーンアウト、破損などが起きる事態になるということを、原子力安全委員会はどのように想定して、原発の安全審査を行っているのか。
で、それにたいする原子力安全委員会の答えは、「炉心が深刻な事態にならないようにするというのが我々がとっている方針」というもので、そもそもかみ合ってないのですが、吉井議員の質問には次のように答えています。
- 外部電源、内部電源ともに失われるような事態になっても、日本の場合は同じサイトに複数のプラントがあることが多いので、ほかのプラントから電源を融通するなど、多角的な対応を今事業者に求めている。
- 基準をさらに超えるような大地震が来たときにはどうなるのかということも、事業者に評価してもらい、そういうことが起こらないことを何らかの方法で確認してもらう、というのが今考えている方針である。
1については、いまや誰も、それを信じないでしょう。福島第1原発にも複数の原子力プラントがありますが、電源を融通しあうどころか、同じサイトにある複数のプラントが次々と事故を起こして収拾の付かない状態になっています。同じサイトに複数のプラントがあるから電源は何とかなる、という考え方がまったく通用しなかったことは誰の目にも明らかでしょう。
2についていえば、何をかいわんやです。要するに、どこまでいっても、冷却系が全部だめになって燃料棒が損壊するなどの事態は絶対に想定しない、という立場です。基準を超えるような大地震がくる場合を想定して、そうなったらどうなるかということを事業者(今回の場合は東京電力)に予測させて、燃料棒の損壊などという事態が「起こらないことを確認してもらう」というのが、原子力安全委員会の考え方だというのです。それで、東京電力は、最大6mの津波が来るという「評価」をして、それでも大丈夫だということを「確認」した結果が、いまの事態です。
燃料棒の破損とか炉心溶融といった事態が起こらないようにするというのは、当然ですが、そのことと、万が一そういう事態が起きても大丈夫なように、どういう手立てを用意しておくか、ということとは別問題。原発の安全性に最終的に責任を持つ原子力安全委員会がこういう認識なのですから、日本の原発「安全神話」は本当に深刻です。
第165回国会 衆議員内閣委員会3号 2006年10月27日
○吉井英勝委員 時間が大分迫ってまいりましたので、私、政府参考人に聞く予定をしておった話は、確認する質問は先においておいて、原子力安全委員長の方に直接いきます。
例えば志賀1号で、地すべりで高圧送電線の鉄塔が倒壊した、外部電源の負荷がなくなったから原発がとまったというのがありますね。原発がとまっても機器冷却系が働かなきゃいけませんが、外部電源からとれればそれからも行けるんですが、それも大規模地震のときはとれないわけですね。
では、内部電源の方はどうなっているかというと、こちらの方は、実際には99年の志賀1号だとか、88年の志賀2号とか、99年2月や98年11月の敦賀の事故とか、実際に、バックアップ電源であるディーゼル発電機自身が事故をやって働かなくなった、あるいは、危ないところで見つけはしたけれども、もし大規模地震と遭遇しておれば働かなかったというふうに、配管の切断とか軸がだめになっていたものとかあるわけです。そういう中で、スウェーデンのフォルスマルク原発1号では、バックアップ電源が4系列あるんだけれども、同時に2系列だめになった、こういう事故があったことは御存じのとおりです。
それで、日本の原発の約6割は、バックアップ電源は3系列、4系列じゃなくて2系列なんですね、6割は。そうすると、大規模地震等によって原発事故が起こったときに、本体が何とかもったとしても機器冷却系に、津波の方は何とかクリアできて、津波の話はことしの春やりましたけれどもクリアできたとしても、送電鉄塔の倒壊、あるいは外部電源が得られない中で内部電源も、海外で見られるように、事故に遭遇した場合、ディーゼル発電機もバッテリーも働かなくなったときに機器冷却系などが働かなくなるという問題が出てきますね。このときに原子炉はどういうことになっていくのか、この点についての原子力安全委員長の予測というものをお聞きしておきたいと思うんです。
それが一点と、もう一点は、機器冷却系が働かないと当然、崩壊熱の除去ができませんから、崩壊熱除去ができないことになったときに、核燃料棒のバーンアウトの問題、これは海外でそういう例もありますけれども、こちらの方はどうなっていくのかという原子炉の安全にかかわる問題について、この場合、どのように想定して、そして審査を進めておられるか、これを伺います。
○鈴木篤之参考人(原子力安全委員会委員長) ありがとうございます。
最初の点でございますが、いろいろな事態がもちろんあり得ると思っていまして、ただ、そういう事態になったとしてもできるだけ、先生が御心配のように、炉心が深刻な事態にならないようにというのが我々がとっている方針でありまして、そういう意味では、例えば非常用ディーゼルが万一動かなくなったという場合には、さらに直流のバッテリーを用意するとか……(吉井委員「いや、フォルスの方はそれもだめでしたからね、2系列」と呼ぶ)フォルスマルクの場合は4系列の2系列がさらにだめになったということですね。(吉井委員「バッテリーもだめでしたから」と呼ぶ)はい、2系列ですね。
したがって、同じバックアップを多重に持つということと、多様に持つ、つまり、ディーゼルだけじゃなくて直流も持つとか、それからそれぞれを複数持つとか、そういう考え方をまず審査の段階で、設計の段階で確認しております。
地震等においてさらにそういうものが使えなくなるという事態に対しては、もう一つは、私どもとしては、アクシデントマネジメント、非常事態における管理ということで、日本の場合は同じサイトに複数のプラントがあることが多いので、ほかのプラントと融通するとか、そういうような非常に多角的な対応を今事業者に求めているところでございます。
それで、先生お尋ねの、そういう事態になったときにバーンアウト等で燃料が破損する、放射能が外部に放出されるというような事態に対してどう考えているかというお話でございますが、これにつきましては、まず、そういう事態になったときに大きな事故に至らないかどうかを設計の段階、最初の基本設計段階で安全評価をして、安全評価の結果、そういう事態に至らないようにまず確認するというのが一番の基本でございます。
と同時に、しかし、さらに非常に、通常はあり得なくても理論的にはあり得るという事態に対してどう考えるかでございますが、これについては私ども、最近、耐震安全に係る指針を改定いたしました。そういうことで、さらに耐震設計を基本的には厳しくしていきたい、こう考えておりますが、そういう中でも、さらに、残余のリスクと称しておりますけれども、そういうような基準をさらに超えるような大変大きな地震が来たときには、では、どうなのかということも、これは事業者に、そういうことも評価してください、評価した結果、そういうことがまず起こらないことを数字で確認するか何らかの方法で確認してください、そういう方針で今考えております。
ありがとうございました。
○吉井委員 時間になりましたから終わりますけれども、私が言いましたのは、要するに、フォルスマルク原発の場合も、ディーゼルとそれからバッテリーと両方一系列なんですよ。これは4系列あるうちの2系列がだめになったんです。外部電源もだめですから、ほかのところから引っ張ってくるというのも、もともとだめなんです。ですから、そういう場合にどういうふうに事故は発展していくものかということをやはり想定したことを考えておかないと、それは想定していらっしゃらないということが今のお話ではわかりましたので。
あわせて、バーンアウトという問題は非常に深刻です、燃料棒自体が溶けてしまうわけですから。これについては海外でチェルノブイリその他にも例があるわけですから、バーンアウトというのは深刻な問題だということで、原子力安全審査というのはまだ発展途上といいますか、この例を言ったら、事務方の方はそれはまだ想定していませんというお話でしたから、きちんとこういうことを想定したものをやらない限り、原子力の安全というのは大丈夫とは言えないものだ、それが現実だということを指摘して、時間が参りましたので、また次の機会に質問したいと思います。
終わります。