読売新聞が本日朝刊2面で、原子力安全基盤機構が昨年10月に沸騰水型原子炉で電源が全て失われて冷却できない事態になると、3時間あまりで圧力容器内の圧力が高まって、破損するとの報告書をまとめていたが、東京電力は報告を検討していなかった、という記事を載せています。
ということで、報告書を探してみました。
原子力安全基盤機構のトップページから探してみましたが、みつかりませんでした。それでもう少し強引に検索をかけてみたら、こんなの↓がみつかりました。昨年10月という日付が記事と一致しているので、おそらく間違いないと思います。
平成21年度 シビアアクシデント晩期の格納容器閉じ込め機能の維持に関する研究報告書:原子力安全基盤機構(PDF 5.9MB)
しかし専門的な資料なので、素人の私にはわからないところだらけです。
それでも、PDFページで102ページでは、炉心温度などがどうなるかのシミュレーションが出ています。それによれば、炉心露出後1時間あまりで、炉心温度は2500度を超え、水素発生量が急上昇(同103ページ)するということがわかります。
すでに、原子炉停止直後に格納容器を水で満タンにしていれば、燃料棒露出、水素爆発が避けられたかもしれないということが指摘されています。もし東京電力が本気でこのシミュレーションをうけとめていたら、事故直後にもっと打つ手があったかも知れません。
「電源喪失なら圧力容器破損」 東電、指摘後も対応せず
(2011年4月4日03時08分 読売新聞)
東京電力福島第一原子力発電所2、3号機で使われている型の原発は、電源が全て失われて原子炉を冷却できない状態が約3時間半続くと、原子炉圧力容器が破損するという研究報告を、原子力安全基盤機構が昨年10月にまとめていたことがわかった。
東電は報告書の内容を知りながら、電源喪失対策を検討していなかったことを認めている。
国は2006年に「原発耐震設計審査指針」を改定し、地震の想定規模を引き上げた。これを受け、国の委託で原発の安全研究に取り組む基盤機構が、09年度から様々な地震被害を想定した研究を始めた。
1970年前後に開発された、2、3号機の型の沸騰水型原発(出力80万キロ・ワット)については、地震で電源喪失した場合、原子炉内の温度や水位、圧力などがどう変化するかを計算した。
その結果、3時間40分後には圧力容器内の圧力が上がって容器が破損し、炉心の核燃料棒も損傷。格納容器も高圧に耐えきれず、6時間50分後に破損して、燃料棒から溶け出した放射性物質が外部へ漏れるとした。
福島第一原発では、3号機が地震発生から2日後の3月13日に冷却手段を完全に失った。8時間後に海水注入を始めたが、原子炉建屋内で水素爆発が発生した。2号機も14日、海水を注入するまで3時間冷却機能が不能となり、格納容器下部の圧力抑制室が損傷したとみられる。
研究報告について、東電は「内容は把握していたが、全ての電源を失うことを想定した対策には着手していなかった」と説明している。
小沢守・関西大学社会安全学部教授は「研究報告を重く受け止めていれば、1分1秒を争う深刻な事態だと即座に認識できたはずだ」と指摘している。