備忘録。燃料棒に溶融が起こっているであろうということは、すでに前から言われていたこと。ニュースなのは、保安院が「初めて」認めた、というところにあるだけ。いまさら、事態が悪くなったわけでもない。結局、どうしてこれまで認めてこなかったのか? それが危機管理のやり方として妥当だったのか? ということにつきる。
ところで、東京電力は、どうして17日に「工程表」を発表したのだろうか。事故収束のためには冷却機能の回復は不可欠。そして、冷却機能を回復させるには原子炉建屋内の作業が不可避。だとすれば、原子炉建屋内の放射線レベルの測定なしには収束の見通しは立たないはず。それにもかかわらず、「工程表」を発表してから、ロボットを投入したのはなぜだろうか。そう考えてみれば、「6〜9カ月で収束」という「工程表」が、実際には東京電力の(そして政府の)「願望表」でしかないことが分かる。
原子炉安定に6〜9カ月 東電、原発事故収束へ工程表:中日新聞
福島原発の原子炉建屋、高い放射線量 事故収束へ課題:日本経済新聞
燃料棒の溶融、保安院が初めて認める 内閣府に報告
[asahi.com 2011年4月18日21時32分]
福島第一原発1〜3号機の原子炉内にある燃料棒は一部が溶けて形が崩れている、との見解を経済産業省原子力安全・保安院が示した。18日に開かれた内閣府の原子力安全委員会に初めて報告した。保安院はこれまで、燃料損傷の可能性は認めていたが、「溶融」は公式に認めていなかった。
燃料棒がどの程度壊れ、溶融しているかは、被害の程度を知る重要な要素。燃料が溶ければ大量の放射性物質が漏れ出て、冷却水や原子炉内の蒸気が高濃度で汚染されることになる。
保安院は、燃料棒の表面を覆う金属製の被覆管が熱で傷つき、内部の放射性物質が放出されると「炉心損傷」、燃料棒内部にある燃料を焼き固めたペレットが溶けて崩れると「燃料ペレットの溶融」、溶けた燃料棒が原子炉下部に落ちると「メルトダウン」、と定義しているという。
そのうえで、検出された放射性物質の成分や濃度などから、1〜3号機で「燃料ペレットの溶融」が起きていると推測。さらに、制御棒などと一緒に溶けた燃料ペレットが、下にたまった水で冷やされ、水面付近で再び固まっている、との見方を示した。
ただし、どの程度溶けているかは「実際に燃料を取り出すまでは確定しない」とした。東電は、炉心損傷の割合を、放射線量から1号機で約70%などと推定していたが「現時点では目安にすぎない」としている。
再び、核分裂反応が連鎖的に起きる「再臨界」が事故後に起きた可能性は、炉心に入れる水にホウ酸を混ぜており、「極めて低い」としている。
保安院の西山英彦審議官は18日の会見で「溶融とはっきり言うけれど、基本的な考え方自体は変わっていない」とし、これまでわかったことを整理したとの立場であることを強調した。(小宮山亮磨、小堀龍之)
原子炉安定に6〜9カ月 東電、原発事故収束へ工程表
[中日新聞 2011年4月18日 02時00分]
東京電力の勝俣恒久会長は17日、東京都内の本店で記者会見し、東日本大震災による福島第1原発事故の収束に向けた作業の工程表を発表し、今後6〜9カ月で1〜3号機の原子炉を100度未満の安定的な「冷温停止状態」とする見通しを示した。3カ月後までに格納容器内を注入した水で満たす「水棺」を実施、冷却を図る。
海江田万里経済産業相は工程表発表を受けた会見で、原発が安定状態になった後に避難区域などを見直すと説明。避難住民の帰宅が来年以降になる可能性が出ている。
工程表は2段階に分け合わせて60の対策を盛り込んだ。第1ステップの3カ月で「放射線量を着実に減少傾向にする」ことを、続く第2ステップの3〜6カ月で「放射性物質の放出を管理し、放射線量を大幅に抑える」ことを目標にする。当面克服が必要な重要課題として、1〜3号機の水素爆発防止と、2号機の高濃度の放射能汚染水を敷地外に放出しないことを挙げた。
勝俣会長は「原子炉と使用済み燃料プールの安定的な冷却状態を確立し放射性物質の放出を抑制することに全力で取り組む」と強調。水棺方式で冷やす原子炉は、6〜9カ月後に冷温停止を目指す。ただ、損傷している2号機の格納容器は、損傷箇所に粘着質のセメントを詰めて密閉した上で、1、3号機と同様の方法で冷却する。使用済み燃料プールは真水注入を続け、冷却システムの復旧を図るほか熱交換器を新設してより安定的に冷却する。
放射性物質の放出を防ぐため、損傷が大きい1、3、4号機の建屋を換気機能のあるカバーで覆う作業に3カ月以内に着手。中期的にはコンクリート製の壁と屋根をつくり、建屋ごと覆い込む。
敷地内にたまった汚染水は、集中廃棄物処理施設や仮設タンクなどに回収。浄水装置を組み込んだ処理施設をつくって除染し、一部は冷却水として再利用できるようにする。
福島原発の原子炉建屋、高い放射線量 事故収束へ課題
[日本経済新聞 2011/4/18 22:54]東京電力は18日夜、記者会見し、福島第1原子力発電所2号機の使用済み核燃料プールの水から高濃度の放射性物質を検出したと発表した。通常では検出されない放射性セシウム134の濃度は1立方センチメートル当たり16万ベクレルで、先日採取した4号機のプールの水の約1820倍だったという。プール水面の放射線量は毎時3.5ミリシーベルトを計測した。
米アイロボット社製無人ロボットを使った原子炉建屋内の放射線量測定では、同日、1、3号機で高い放射線量も確認された。東電は17日、6〜9カ月をメドに原子炉を安定した状態に持っていく工程表を公表したが、建屋内の放射線量を今後どのように下げていくかが、事故収束への大きな課題になりそうだ。
2号機は大きな水素爆発を起こしておらず、原子炉建屋の大部分は、健全な状態を保つ。プールの水から高濃度の放射性物質が検出されたことで、使用済み核燃料が損傷している可能性もあるが、東電は「原子炉から漏れた放射性物質を含む水蒸気が、原子炉建屋の上部で冷えて液化し、プールの中に入った可能性が高い」と分析している。
遠隔操作する無人ロボットは、アームで扉を開けて原子炉建屋内に入り、放射線量を計測した。1号機は毎時10〜49ミリシーベルト、3号機は同28〜57ミリシーベルトだった。温度や湿度も測り、事故後、初めて原子炉建屋内の様子が分かった。18日には2号機建屋にもロボットが入った。
原子炉建屋内の放射性物質は、壁や床、建屋の損壊によるがれきなどに付着している。放射線量を下げるには水で洗い流すのが一般的だが、そもそもこれだけ線量が高いと、作業員は近づけず、除染をすることもできない。
工程表では今後、3カ月程度を目標に、原子炉を丸ごと水で包む「水棺」を実施するという。ただ、格納容器に5千トン前後の水を入れるには、損傷がないかどうかを入念に確認しなければならず、どうしても人手による作業が求められる。
放射線量が高いままだと、熱交換器の設置による冷却機能の復旧も難しい。原子炉建屋の外に設けるとしても、原子炉とつながる配管を検査するためには建屋内に入らなければならない。
工程表には大気への放射性物質の拡散を防ぐため建屋全体をカバーで覆う案も盛り込まれたが、放射線量の大幅な低減を前提としており、実現できるか未知数だ。