内閣官房参与・小佐古氏が抗議の辞任

福島原発事故にたいおうするために内閣官房参与に任命された小佐古敏荘氏が、政府の対応は「場当たり的」として辞任。

政府の対応が実際どうなのかは、オイラに分かるわけもないが、校庭の放射線量の基準(年間20ミリシーベルト以下)については、すでに日本弁護士連合会が「見直し」を求めていた。

東日本大震災:小佐古・内閣官房参与辞任 線量基準の決定過程批判:毎日新聞
東日本大震災:小佐古・内閣官房参与の辞任表明文要旨:毎日新聞
日弁連、学校の線量見直し求める 会長「安全性に問題」:共同通信

東日本大震災:小佐古・内閣官房参与辞任 線量基準の決定過程批判

[毎日新聞 2011年4月30日 東京朝刊]

◇情報公開遅れも指摘

 東京電力福島第1原発事故の政府の対応をめぐり、内閣官房参与の辞任を29日表明した小佐古敏荘・東京大教授は、放射性物質の健康影響や放射線防護策の専門家の立場から、政府の情報公開のあり方や緊急事態に応じた被ばく放射線量の基準を決めた過程に疑問を投げかけた。いずれも是非を巡り地元住民から批判の声が上がったほか、専門家の間で論議を呼んでいた問題だけに、今後波紋を広げそうだ。【西川拓、足立旬子、永山悦子】

 小佐古氏は東京大工学部卒。東大助手などを経て05年に同教授。放射線の健康影響について勧告する国際組織、国際放射線防護委員会(ICRP)の委員を務めた経験があるほか、国の原子力政策を担う内閣府原子力委員会の専門部会でも委員を務めている。原子力の安全確保への貢献が評価され、08年に経済産業省から原子力安全功労者表彰を受けた。
 小佐古氏が公表の遅れを強く批判した緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)は原子力事故の際、放出された放射性物質の拡散を計算して予測するシステム。この結果を住民の避難などに役立てることになっている。だが、文部科学省や内閣府原子力安全委員会によると、東日本大震災では地震や原発施設の爆発など何らかの原因で計測機器が壊れたため、原発からいつ、どの程度の放射性物質が実際に放出されたかという放出源情報が得られていない。
 実際の放射性物質の動きや被ばく量を推計するため、周辺で計測された放射線量の分布から放出源情報を逆算し、拡散状況を導き出した。データ取得や計算に時間がかかり、SPEEDIの予測結果が初めて公表されたのは、事故から約2週間後の3月23日だった。国会などで公表の遅れが問題視された。小佐古氏はこの点を「放出源情報の決定が困難であることを前提にした定めがあるが、手順通りに運用されていない」と批判した。
 だが、文科省によると、事故直後から省庁間マニュアルに従い、放射性物質の推定拡散情報を1時間ごとに原子力安全委や地元自治体などに提供していたという。文科省内からは「元々、一般に公開することは規定されていない。われわれは手順に従っていた」との反論が出ている。
 作業員(放射線業務従事者)の被ばく線量は、原子炉等規制法に基づく告示や労働安全衛生法の電離放射線障害防止規則で、5年間で100ミリシーベルト、1年間では50ミリシーベルトに抑えるよう定めている(通常規則)。また、緊急時には別途100ミリシーベルトを上限に放射線を受けることができる。しかし、国は特例で福島第1原発の復旧に限り、250ミリシーベルトに引き上げる措置をとった。
 経産省原子力安全・保安院によると、福島第1原発で作業していた従業員のうち、30人が100ミリシーベルトを超えている。また、1号機の原子炉建屋で毎時1120ミリシーベルトが検出されるなど、長時間の作業が難しくなっている。
 ICRPの勧告では緊急時は500ミリシーベルトが上限だ。小佐古氏は「厳しい状況を反映して、限度の500ミリシーベルトに再引き上げする議論も始まっている」と指摘。「官邸と行政機関の『モグラたたき』的で場当たり的な政策決定」と不透明さを批判しており、被ばく放射線量の上限を巡る論議が拡大する可能性もある。

東日本大震災:小佐古・内閣官房参与の辞任表明文要旨

[毎日新聞 2011年4月30日 東京朝刊]

  • 官邸と行政機関は、法律などに沿って原子力災害対策を進めるという基本を軽視し、その場限りの対応をして収束を遅らせているように見える。
  • 「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」が、法令などに定められた手順通りに運用されていない。
  • 甲状腺の被ばく、特に小児が受ける放射線量を関東、東北地方全域にわたって迅速に公開すべきである。
  • 放射線業務従事者の緊急時被ばく限度の引き上げで、官邸と行政機関が場当たり的な政策決定をとっているように見える。放射線審議会での決定事項を無視している。
  • 年間20ミリシーベルト近い被ばく者は約8万4000人いる原発の放射線業務従事者でも極めて少ない。年間20ミリシーベルトとした校庭での利用基準に強く抗議する。

日弁連、学校の線量見直し求める 会長「安全性に問題」

[2011/04/27 07:56 共同通信]

 福島第1原発事故で、福島県の小中学校や幼稚園での屋外活動を制限する文部科学省の放射線量の目安について、日本弁護士連合会は27日までに、法令で定める放射線管理区域の基準より甘く、安全性に問題があるとして見直しを求める声明を発表した。
 宇都宮健児会長は声明で「(放射線管理区域を)はるかに超える被ばくを許容することを意味する」と批判した。
 文科省は19日、学校や幼稚園で観測される放射線量が屋外で毎時3・8マイクロシーベルト以上の場合は屋外活動を制限するよう福島県に通知。それ未満の場合は平常通り活動できるとした。年間の積算被ばく放射線量が20ミリシーベルトになるかどうかを目安とした。
 法令では、放射線作業をする施設では3カ月の積算で1.3ミリシーベルトを超える恐れがある範囲を放射線管理区域と設定する。年間換算では5.2ミリシーベルトで、文科省が目安とした値はこの4倍近い。
 声明では屋外活動制限についても、そのような制限を受ける学校は教育環境として適切ではないとして、より低い基準値を定め、土壌の除去なども進めるよう求めた。
 労働基準法は放射線管理区域での18歳未満の就労も禁じている。文科省は、安全性に十分配慮したと説明、「放射線管理区域の基準は、平常時に作業員らを保護する狙いがある。今回の基準は、緊急時に安全と生活を両立させる目的で設定しており、単純比較できない」としている。

と思っていたら、こんな記事が。「臨機応変の対応」と言っているが、それが「場当たり」ということだろう。

審議2時間で「妥当」判断 原子力安全委、学校基準で:共同通信

審議2時間で「妥当」判断 原子力安全委、学校基準で

[2011/04/30 21:57 共同通信]

 福島第1原発事故で、文部科学省から小中学校などの屋外活動を制限する基準値への助言を求められた国の原子力安全委員会(班目春樹委員長)が、正式な委員会を招集せず、助言要請から約2時間後には「妥当だ」との助言をまとめ、回答していたことが30日、関係者の話で分かった。
 安全委事務局は「臨機応変の対応だった」と反論するが、正式な委員会が開かれなかったため議事録も作られておらず、助言までに至る議論の内容が確認できないことも判明。審議の検証ができなくなった異例の事態に「国の政策を追認しただけだ」と批判の声が上がっている。
 国は、目安を一般人の年間許容限度の20倍という高さの年間20ミリシーベルトとした根拠について国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に準拠したとしているが、子どもに高い放射線量の被ばくを認めることになるため、内外の専門家から批判が続出。29日、内閣官房参与の小佐古敏荘・東大大学院教授が辞任する一因ともなった。
 関係者によると、文科省などが「年間の積算放射線量が20ミリシーベルトに達するかどうかを目安とし、毎時3.8マイクロシーベルトを学校での屋外活動の基準とする」との原案への助言を安全委に求めたのは19日午後2時ごろ。安全委側は正式な委員会を開かず「委員会内部で検討し」(関係者)、午後4時ごろに「妥当だ」と回答した。だが、議事録が残っていないため、安全委内部でどのような議論が行われたかは明らかではないという。
 安全委事務局は「9日ごろに文科省から相談したいとの依頼があり、委員らが複数回議論、その都度結果を文科省に口頭で連絡していた。正式な会議は開かなかったが、意思統一ができれば助言はできる」とコメント。「(検討時間の)妥当性については発言する立場にない」としている。
 基準の撤回を求めている環境保護団体、FoE(地球の友)ジャパンの満田夏花さんは「独立した規制機関であるはずの安全委が、ほとんど議論もせずに国の政策を追認したことは明らかだ」と指摘。「子どもの健康を守るという重要な責務も、社会への説明責任もまったく果たしていない」と批判している。

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