おもしろいです。とくに第2章は、日本の旧石器時代研究の中心である東北大学の芹沢長介グループも明治大学の杉原祥介グループも、「科学でなかった」とばっさり。ありゃ〜〜 (^_^;)
第1章では、石器の形状の発展が、ヒトの生物学的進化と重ねて解き明かされていますが、これを読んで初めてヒトの進化の意味が初めてよく分かりました。チョー納得!
実は、筆者の竹岡俊樹氏は、前期旧石器遺跡捏造事件をスクープするきっかけをつくった研究者。
石器の人工的な剥離面と自然の破砕面とはどうやって見分けるんだろうと思っていましたが、竹岡氏の説明を読むと、違いは歴然。石器をつくるという目的を持って、礫を剥離していくときには、ちゃんと手順があるので、剥離面にもちゃんと秩序があるということのようです。だから、「人工品の認定は瞬時に行うもの」と断定できるのです。
細かい形式論や形式にもとづく文化論は、ちょっと難しいですが、左手で素材となる石を持ち、右手にもった石で素材をたたく――この左手と右手の分業から、右脳と左脳の機能の違いが生まれたというのは、肝心の左脳=論理的、右脳=情緒的という議論の方が眉唾なので、ちょっと怪しげですが、石器の作り方が<礫→石器>の段階から<自然石→剥片>→<礫→石器>と複雑化(分節化)するのにつれて二重分節した言語を獲得したという発想は、とても魅力的。ただし、ほんとにそうなのかどうかは、まだまだこれからの研究テーマということでしょう。
【書誌情報】
著者:竹岡俊樹(たけおか・としき)/書名:旧石器時代人の歴史 アフリカから日本列島へ/出版社:講談社(講談社選書メチエ495)/発行:2011年4月/定価:本体1500円+税/ISBN978-4-06-258496-8