ハンガリアン・プログラムでコバケン奮い立つ

日本フィルハーモニー交響楽団第630回定期演奏会

3月の定期演奏会は震災当日で聴けず、4月の定期演奏会はお休みしたので、日フィルの定期演奏会は1月以来。ほんとに久しぶりになってしまいました。コバケンこと小林研一郎氏の指揮で、こんなプログラム。

  • バルトーク:管弦楽のための協奏曲
  •  休憩
  • リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調
  • コダーイ:ガランタ舞曲
  • リスト:交響詩《レ・プレリュード》

ドイツ、オーストリアで活躍したリストも出身地はハンガリー。ということで、本日はハンガリー大使館の後援付きのオール・ハンガリアン・プログラムでした。

見事だったのは、コバケンがいつものようにコバケン・ワールドを爆裂されていたのに、日フィルの音がひび割れたり濁ったりせず、完成度の高い音を響かせ続けたこと。そして、リストのPf協にしても、プレリュードにしても、低音がしっかりと音楽全体を支える骨太の演奏を聴かせてくれたこと。日フィルが腕を上げたことを実感させる演奏会でした。

それは、バルトークで最初に音がしたときから、「音が違う」と実感させるものでしたが、残念ながら、先日の都響同様、頸痛のために飲んでいる薬のせいで、途中から完全に沈没。う〜む、もったいなかった…。

リストのPf協も、これまでは煌びやかなイメージだったのですが、小山実稚恵さんのピアノも、ずんと低音が響いてくる感じで、一瞬これがリスト?!と思ったほど。その印象は、プレリュードでも同じでした。少しテンポが遅めだったのが、印象を強めたのかも知れません。「われわれの人生は、死によって奏でられる未知の歌への一連の前奏曲なのであるまいか?」というマルティーヌの詩に着想を得た作品ですが、しかし、プログラム解説で横井雅子さんが書かれているように、「自ら選びとったのではなく与えられた生をどう終章まで奏でて完結するのか」という「究極の命題に取り組むすべての人の背中を力強く後押ししようとする音楽」であることを強く感じさせてくれました。コダーイでは、このややスローめのテンポ設定で、ジプシー音楽の雰囲気が今ひとつ匂い立ってこなかったのが残念ですが。

いずれにせよ、ハンガリーでも長く活躍してきた小林研一郎氏ならではの情熱たっぷりの演奏を堪能させていただきました。

会場には、写真も掲げて、日フィルがこの間行ってきた「被災地に音楽を」訪問コンサートのようすが紹介されていました。松本克己さん(ヴァイオリン)の訪問は「朝日新聞」(5月9日付)にも取り上げられていたので知っていましたが、そのほかにも、福島県会津若松市(5/4)埼玉県加須市駒西小学校(5/6)での弦楽四重奏、同中学校(5/12)での金管五重奏の訪問コンサートにもとりくまれていたことを初めて知りました。

プログラムには「日フィルメンバーを被災地に送ってください」という募金の呼びかけもはさまれていました。仙台フィルがすすめる「音楽の力による復興センター」と協力しながら、日フィルメンバーが直接被災地に音楽を届けるボランティア活動をすすめるということです。

3月11日の、聴くことのできなかった演奏会の振り替えチケットをいただきましたので、その分わずかですが、僕も募金をして帰ってきました。

【演奏会情報】 日本フィルハーモニー交響楽団第630回定期演奏会
指揮:小林研一郎/ピアノ:小山実稚恵/コンサートマスター:木野雅之/ソロ・チェロ:菊地知也/会場:サントリーホール/開演:2011年5月20日 午後7時

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