昨夜はふたたび読響の定期演奏会で、冷たい雨の中、サントリーホールへ。指揮は、先週の名曲シリーズと同じくペトル・ヴロンスキー氏。ピアノは清水和音氏。
- モーツァルト:ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 k.491
- マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調
先週のドヴォルザーク・プログラムがとてもよかったので期待したのですが、前半のモーツァルトは、清水氏が非常に繊細にピアノを弾こうとしているのに、オケがどちらかというと出しゃばり気味で(いちおう10-8-6-4-3編成なんですが)、なんとも言いようのない、まとまりのなさ…。これでは、後半のマーラーが思いやられると、なかばあきらめておりました。
で、演奏が始まってみると、オケはバラバラ。こりゃ、あかん…と思ったほど。ところが、第1楽章の途中からオケがまとまってくると、これがなかなかの演奏で、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
といっても、バーンスタインのような、ドロドロとした「ユダヤ性」を全面に押し立てた演奏でもなければ、インバルのような颯爽としたマーラーでもなく、田舎風というか土俗的というか、野趣あふれるマーラーでした。第4楽章のアダージェットも、「ベニスに死す」のような上流階級の退嬰的な雰囲気はまったくなし。だけれども、海の底(海を連想したのはやっぱり「ベニスに死す」の影響なのだろうが)からわき上がってくるような、その哀調は非常に強く迫ってくるものがありました。終わってみれば、拍手大喝采。あとで友人のD井君の感想を聞いてみると、テンポがかなり遅かったとのこと。出だしで足並みがそろわなかったのはそのためかも知れません。
オケの演奏では全体として金管が大健闘(出だしでトランペットがちょっとこけたりしてましたが、そういう不安定さを含めてやるのがこの曲の良さかも知れません)。とくにホルンがよく、第3楽章のソロは見事でした。
また、ヴィオラの低音が目立っていたのが印象に残りました。他にも、普段は埋没してしまうような楽器の旋律が、ところどころで浮き上がってきて、そのあたりにもヴロンスキーの演出があったのかも知れません。
好き嫌いは分かれるかも知れませんが、ともかくこれまで聴いたことのないマーラーを楽しませていただきました。
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【演奏会情報】 読売日本交響楽団第504回定期演奏会
指揮:ペトル・ヴロンスキー/ピアノ:清水和音/コンサートマスター:デヴィッド・ノーラン/会場:サントリーホール/開演:2011年5月23日 午後7時