先日、「毎日新聞」の岩見隆夫氏が「出色」と評価した不破さんの原発事故講義。こんどは、今朝の「毎日新聞」コラム「水説」で、専門編集委員の潮田道夫氏が、雑誌『世界』6月号の柳澤桂子さんの論文とともに不破さんの講義にふれ、「明快」と感想を述べています。曰く――
「使用済み核燃料の最終処分問題を放置したまま原発の運転を続けた結果、高濃度放射性廃棄物が限界にまで積み上がっている。それが不破さんの憂慮するところ」
「原子力で発電を開始する以上、最終処理問題にケリをつけておくべきなのは言うまでもない」
潮田氏の結論もきわめて「明快」です。
水説:核のゴミ捨て場=潮田道夫
[毎日新聞 2011年5月25日 東京朝刊]
雑誌「世界」の6月号で、生命科学者の柳澤桂子さんは人間の遺伝子(DNA)を破壊する「高線量の放射性廃棄物を処理する方法がわからない」以上、原発はやめるべきだと主張している。
日本共産党の不破哲三前委員長も同じ考えのようだ。本紙「近聞遠見」が「わかりやすい」とほめていたので、赤旗に不破さんが連載した「講義」を読んでみた。明快。
使用済み核燃料の最終処分問題を放置したまま原発の運転を続けた結果、高濃度放射性廃棄物が限界にまで積み上がっている。それが不破さんの憂慮するところ。そして柳澤さんの懸念でもある。
使用済み核燃料は使用前よりはるかに危険なものになっており、しかも冷却し続けないと、再び「暴走」しかねない。放熱レベルが下がっても放射線を出し続けるから、何万年も人間界から隔離しておかねばならない。
しかし、いまのところ行き場がないから原発構内のプールにためておくしかない。福島原発ではプールの水が蒸発して溶融し始めたのではないかと肝を冷やした。
折からNHKが19日に再放送した「10万年後の安全」というドキュメンタリーが印象深かった。フィンランドが世界で初めて建設に着手した使用済み核燃料の最終処分場の話。地下500メートルの地中に埋めて欧州の安全基準である10万年間、人間から隔離しておこうという試みだ。
数万年後のフィンランド人いや人類がどの程度の文明人か分からない。高度文明は滅びて退化しているかもしれない。ともあれその子孫たちに「掘ってはならない」ということを理解させるにはどうすべきか。良い方法がない。
原子力で発電を開始する以上、最終処理問題にケリをつけておくべきなのは言うまでもない。しかし、フィンランド以外どこも実際にこういう施設を造らずにきた。
日本は当初、深海に投棄しようとした。が、国際的な批判を浴びて撤回、地中処理することになった。だが、どこに、どんなものを造るのか、何も決まっていない。ゴミの焼却場ですら拒否する自治体ばかりだ。まして、使用済み核燃料なんて。
モンゴルに日米共同で核のゴミ捨て場を造る案がすっぱ抜かれた。モンゴルがいいというならそれでいいではないか、という人もいる。だが、そういう問題か?
貝塚の昔から江戸の町内のゴミためまで、自分のゴミは自分で始末する。それが日本人の流儀であり節度だった。その連綿たる美風を電気が欲しいばかりに失っていいというのか。(専門編集委員)
コラム中に、日本とアメリカがモンゴルに「核のゴミ捨て場」をつくろうとしていたと書かれているが、これは「毎日新聞」が5月9日付朝刊で報じたニュース。
しかし、今回の震災でそのモンゴルは、直後には緊急援助隊を派遣してくれたし、義援金も送ってくれています。そんな国を「核のゴミ捨て場」にしようとしていたのですから、私たちの国の政府はどんなに罪深いんでしょうか。