岩波新書「シリーズ日本古代史」の4冊目。坂上康俊氏(九州大学教授)の『平城京の時代』です。
対象は、697年の文武天皇の即位からほぼ8世紀いっぱいぐらいまで。ということで、以前に紹介した講談社『天皇の歴史』第2巻『聖武天皇と仏都平城京』とほぼ同じ時期が対象になっています。
それでも、天皇中心の前書にくらべ、本書では、第2章「国家と社会の仕組み」や、第4章第3節「荘園と『富豪の輩』」などで、この時代の国家と社会を支えた庶民の姿が取り上げられていて、おもしろい。
また、中国との関係はもちろん、新羅・渤海など朝鮮半島との関係、さらには九州地方の隼人および東北地方の蝦夷との関係が、本書では、この時代の日本をみるもう1つの軸として、一貫して取り上げられているのも注目点。
木簡や宮址の発掘などがすすみ、この時代のイメージは相当豊かになってきました。郷戸・傍戸の問題も、一般の読者を対象とした新書のシリーズにふさわしく、実態に即して取り上げられています。さらに、個々の令の意味合いが中国と日本とで違っているという、かなり細かな議論も、分かりやすく論じられています。
また、最後に取り上げられている「日本語書記法の進化」というのは、なかなかおもしろいテーマでした。
【書誌情報】
著者:坂上康俊(さかうえ・やすとし)/書名:平城京の時代 シリーズ日本古代史<4>/出版社:岩波書店(岩波新書新赤版1274)/発行:2011年5月/定価:本体820円+税/ISBN978-4-00-431274-1