東京電力の社員2人が250ミリシーベルトという、今回の福島原発事故で引き上げられた年間被曝線量の限度を超える放射線を被曝している可能性が高いことが明らかに。
原発事故収束のために働いているみなさんには、本当に心からの敬意を表わしたいが、東京電力は、地下に溜まった汚染水を確認せず、作業員を突っ込ませて被曝させたり、線量計なしで現場作業をさせたり、重要免震棟で働いていた女性の被曝線量が限度を超えていたことがあとで分かって慌てて退去させたり、ともかく失態続き。もはや労働者の安全管理をおこなう資格も能力もないことは明白。かりに原子力発電が必要だとしても、東京電力には、原発の運転・管理をやってほしくないし、やらせてはいけないのではなかろうか。
東電社員2人、線量限度超え被曝した可能性:読売新聞
福島第1原発:被ばく量は数百ミリシーベルトか 東電社員:毎日新聞
被ばく検査 対象の40%以下:NHKニュース
入院の必要なしと診断=内部被ばくの東電社員2人―放医研:時事通信
福島第1原発:東電社員被ばく 甘い対策に現場は悲鳴:毎日新聞
東電社員2人、線量限度超え被曝した可能性
[2011年5月30日21時07分 読売新聞]
東京電力は30日、福島第一原子力発電所で作業していた同社の男性社員2人の被曝(ひばく)量が、緊急措置として国が引き上げた線量限度の250ミリ・シーベルトを初めて超えた可能性が高いと発表した。2人は放射線医学総合研究所(千葉市)で精密検査を受け、尿から放射性物質が検出されたが、運動機能の低下など健康被害はみられなかった。
2人は30代と40代。震災が発生した3月11日から15日にかけて、3、4号機の中央制御室などで作業していた。5月上旬までの検査で高い内部被曝量がわかり、今月23日に詳しく調べたところ、甲状腺から放射性ヨウ素131がそれぞれ9,760ベクレル、7,690ベクレル検出された。
このヨウ素量から被曝量を正確に計算するには、2人の行動を詳しく調べ、体内に取り込まれた時期を知る必要があるが、外部被曝量と合わせて250ミリ・シーベルトを超える可能性が高い。甲状腺への蓄積を防ぐために継続して服用すべき安定化ヨウ素剤は、3月13日に1回服用しただけという。
福島第1原発:被ばく量は数百ミリシーベルトか 東電社員
[毎日新聞 2011年5月30日 19時53分]
東京電力は30日、福島第1原発で復旧作業に当たる男性社員2人の累積被ばく量が、同原発内に限って引き上げた上限の250ミリシーベルトを超えた可能性が高いと発表した。大部分は、放射性物質を吸い込むなどして体内に取り込む「内部被ばく」で、放射性物質が時間と共に減る性質を考慮すると、被ばく量は数百ミリシーベルトに達していた可能性がある。
現在、2人に健康上の異常は認められていないが、累積被ばく量が100ミリシーベルトを超えると、がん発症のリスクが高まる恐れがあるとされる。
東電によると、2人は30代と40代で、3、4号機の運転員。3月11日の事故直後から、1人は5月22日、もう1人は同29日まで中央制御室や免震重要棟内で働いていた。
放射線を浴びることによる外部被ばく量は30代社員が73.71ミリシーベルト、40代社員が88.7ミリシーベルト。内部被ばく量を簡易測定して数値が高かったため、5月23日に詳しく調べた結果、甲状腺からそれぞれ9,760ベクレル、7,690ベクレルのヨウ素131が検出された。この値は、簡易測定で比較的高い値が出た他の約40人の10倍と突出して高かった。
放射性ヨウ素は人体内では甲状腺に蓄積しやすい。被ばく前や直後にヨウ素剤を服用することで蓄積を防げるが、2人の場合、3月13日に2錠を飲み、その後は「1日1錠ずつ飲む」という同社の指導に反し服用しなかったという。
同原発では3月12?16日、1?4号機で水素爆発や火災が起き、大量の放射性物質が飛散した。東電によると、2人はこの時期、主に3、4号機の中央制御室で作業しており、高濃度の放射性物質を含むちりなどを吸った可能性があるという。
東電は今後、同じ環境で作業していた約150人についても、内部被ばくの影響を詳しく調べる。
30日会見した細野豪志首相補佐官は「作業環境が非常に厳しくなっている課題が浮き彫りになった。作業員の放射線量を国が直接管理するよう調整したい」と話した。経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は「250ミリシーベルトを超えれば原子炉等規制法の規則や保安規定に違反する。こうしたことも念頭に置いて対応したい」と述べた。【酒造唯、岡田英、河内敏康】
被ばく検査 対象の40%以下
[NHKニュース 5月30日 21時18分]
東京電力福島第一原子力発電所では、体の表面に受けた放射線量が100ミリシーベルトを超えた職員などを優先して、体内に入り込んだ放射性物質の量を計測し、全身の被ばく線量を調査していますが、計測装置が少ないうえに、検査に時間がかかり、検査を受けた人は対象の40%以下にとどまっています。
福島第一原発で、体の表面に受けた放射線量を示す「外部被ばく」で100ミリシーベルトを超えた職員は、30日までに30人に上ります。このうち3号機のタービン建屋の地下で高濃度の汚染水に足がつかった2人は、全身の被ばく線量が200ミリシーベルトを超え、最も多い人の被ばく量は240.8ミリシーベルトに達しています。東京電力は、外部被ばくで100ミリシーベルトを超えた職員や事故直後の3月に働いていた職員を優先して、体内に入り込んだ放射性物質の量を示す「内部被ばく」を計測する「ホールボディーカウンター」という装置4台を使って全身の被ばく線量を調査しています。しかし、この装置で検査を始めたのは3月22日になってからで、検査結果が出るまで1週間程度かかるうえ、検査場所も、福島第一原発では周辺の放射線量が高く計測できないため、職員は福島第二原発と小名浜コールセンターに移動して検査を受けています。このため、これまでに検査を受けたのは対象となるおよそ3,700人のうち40%以下の1,400人余りにとどまり、全身の被ばく線量の調査に時間がかかっているのが現状です。全身の被ばく線量が緊急時の限度の250ミリシーベルトを超える疑いのある2人も事故発生当初から業務に当たっていましたが、初めて内部被ばくの検査を受けたのは事故から1か月以上たった先月中旬でした。東京電力は内部被ばくの計測装置を、7月には5台増やすとしていますが、このほかにも内部被ばくの線量が高い職員がいるおそれがあるため、早急に検査体制を充実させることが求められます。
入院の必要なしと診断=内部被ばくの東電社員2人――放医研
[時事通信 2011/05/30-21:05]
福島第1原発内で作業していた東京電力の男性社員2人の甲状腺から多量の放射性ヨウ素131が検出された問題で、放射線医学総合研究所(千葉市)は30日、2人に対する精密検査を実施した。この結果、内部被ばくをしているが健康上の異常は見られず、入院の必要はないと診断した。今後外来で診察し、詳細な被ばく量の算出を行っていくという。
放医研によると、2人の甲状腺からは4000?5000ベクレル程度の放射性ヨウ素131が検出されたという。東電によると、23日の段階では9,760ベクレルと7,690ベクレルだった。
半減期が8日と短いヨウ素131の場合、取り込み時期により被ばく量が変わる。放医研は8日経過した頃に再度測定を実施し、被ばく量の推定をするとしている。
一方、内部被ばくの場合、甲状腺機能が低下していてもすぐに症状が出ることはないという。直ちに治療が必要な症状はないが、放医研は社員2人の被ばく量を算出した後、医学的なアドバイスをしていくとしている。
福島第1原発:東電社員被ばく 甘い対策に現場は悲鳴
[毎日新聞 2011年5月30日 21時17分]
東京電力福島第1原子力発電所で復旧作業にあたっている東電社員2人が、緊急時の上限250ミリシーベルトを超える被ばくをしていた疑いが強まった。しかも、放射性物質を体内に取り込む「内部被ばく」が大半とされる。取材に応じた作業員らの証言からは、現場の汚染がひどく、対策が追いついていない実態が浮かぶ。労災問題の専門家は「このままでは健康被害が深刻化する」と警告している。【町田徳丈、池田知広、日下部聡】
「放管」。作業現場に元請け会社などから派遣される「放射線管理員」はそう呼ばれるが、下請け会社のベテラン作業員(64)は「最近、放管が来ないケースが増えている」と話す。
放管は、作業員が過度の被ばくをしないよう現場で放射線量を計測し、平常時なら汚染レベルの高い区域での作業には必ず同行していた。だが、今は朝のミーティングで元請けから前日の調査結果を知らされるだけで、放管が同行しないこともしばしばという。「高線量のがれきが転がっていて(放管が同行しないと)不安なんだけどね」と男性は言う。
40代の男性作業員は「放管がいないと自分がどのくらい放射線を浴びているのか現場で確認できない」とこぼす。線量計は防護服の内側に付けるために見られず、積算線量が上がったことを示すアラームが鳴っても全面マスクのため聞こえないこともある。緊急時の作業における被ばく線量の上限は以前の100ミリシーベルトから震災後は250ミリシーベルトまで引き上げられた。男性は「どんどん上げられて、怖いですよ」と漏らした。
放管の男性(56)は「自分たちが同行していないと、現場で急に線量が上がった時に対応できない。汚染区域が広過ぎて放管の数が足りない」と懸念する。
内部被ばくについても、多くの作業員から不安の声が上がる。下請け会社の男性(28)は「全面マスクを顔に密着させると、締め付けられて頭が痛くて仕事にならないから緩めに着ける人が多い。だから隙間(すきま)から(放射性物質が)入り込む。装備にも問題があるのでは」と指摘する。
放射線量の上限については元請けや下請け会社のほとんどが数十?100ミリシーベルトと独自の基準を設ける。ある元請け会社の幹部は「250ミリシーベルトの東電社員が一番厳しい環境に置かれているかもしれない」と指摘した。
原発の労災に詳しい片岡明彦・関西労働者安全センター事務局次長は「マスクの装着状況など内部被ばくに対する防護がずさんだった疑いがあり、チェック態勢を強化する必要がある」と指摘。緊急時の上限については、過去に労災認定された原発作業員の大半の総被ばく線量が100ミリシーベルト以下だったことを挙げ「少なくとも引き上げ前に戻し、国と東電は綿密に健康リスクを考慮しながら作業計画を立てるべきだ」と指摘している。
2人は「入院の必要なし」と判断されたそうだが、これは「原子力村」の一員たる放医研の診断。体内に吸い込むなどした可能性のある放射性物質はヨウ素だけとは限らないのだから、甲状腺の被曝量を調べただけでは、内部被曝全体は分からない(だから「ホール・ボディ・カウンター」という特別な装置を使って、人体から放射される放射線をはかる必要があるのだが)。かりに250ミリシーベルトだとしても発癌のリスクは高くなる。いますぐ入院する必要がないからといって、たいした影響はないということにはならない。
【BGM】
ショスタコーヴィチ:交響曲第15番 イ長調 op.141/指揮:ジョナサン・ノット/管弦楽:NHK交響楽団/2011年2月16日、サントリーホール(2011年5月22日放送)