終わってみれば、大差で否決。民主党「造反」議員の一部は本会議を欠席し、引っ込みのつかなくなった2名が賛成票を投じたようだが、「大山鳴動ネズミ1匹」というより「大山鳴動ネズミ0匹」というところだろう。
自民党や公明党は、しきりに「茶番だ」と言っているが、もともと連休明けに小沢一郎氏の「働きかけ」を頼んで、自分たちで「政局」に持ち込んでおいて、最後の最後で小沢氏に裏切られただけで、「茶番」というなら、自民党・公明党がこの間やってきたこと自体が茶番だということを自覚すべきだ。
【内閣不信任案】自民・谷垣総裁「茶番だ」首相の期限付き辞任表明に:MSN産経ニュース
小沢氏の「菅降ろし」シナリオ始動 自民にも働きかけ:MSN産経ニュース
それにしても、卑怯なのは小沢一郎氏。ここまで「倒閣」をあおっておきながら、菅首相が「一定のめどがたったら退陣する」と表明したら、一転「自主投票」を表明。しかも、本人は、不信任案に賛成票を投じて初志貫徹するわけでもなく、さりとて党議にしたがって反対票を投じるわけでもなく、議員会館に立てこもって本会議を欠席。国民の前から逃げたとしか言いようがない。
不信任決議案 反対多数で否決
[NHKニュース 6月2日 18時59分]
菅内閣に対する不信任決議案は、2日午後に開かれた衆議院本会議で採決が行われ、民主党から2人の議員が賛成票を投じましたが、賛成152票、反対293票の反対多数で否決されました。一方、賛成する方針だった民主党の小沢元代表や小沢氏に近い議員の一部が採決を欠席し、同じく賛成する意向を表明していた鳩山前総理大臣は反対しました。
菅内閣に対する不信任決議案の採決に先立って菅総理大臣は、党の代議士会に出席し、「震災に一定のめどがついた段階、私がやるべき一定の役割が果たせた段階で、若い世代の皆さんにいろいろな責任を引き継いでいただきたい」と述べ、東日本大震災からの復旧・復興や東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束に一定のめどが立った段階で退陣する意向を表明しました。そして、午後1時半から開かれた衆議院本会議で、決議案の採決が行われた結果、自民党・公明党・みんなの党・たちあがれ日本が賛成しましたが、民主党内で賛成する意向を示していた小沢元代表らが採決を欠席し、鳩山前総理大臣や原口前総務大臣らが反対に回ったため、決議案は、賛成152票、反対293票の反対多数で否決されました。
民主党では、松木謙公氏と横粂勝仁氏が賛成票を投じ、小沢氏や田中眞紀子氏ら15人が欠席または棄権しました。また、共産党は棄権し、社民党は欠席しました。本会議のあと、民主党の岡田幹事長は、輿石参議院議員会長と会談し、内閣不信任決議案に賛成した議員は除籍、欠席や棄権の議員は党員資格停止の処分とし、現在、党員資格停止中の小沢元代表については除籍としたいという考えを伝えましたが、輿石氏は、認められないと反発し、調整が続いています。
自民・谷垣総裁「茶番だ」首相の期限付き辞任表明に
[MSN産経ニュース 2011.6.2 12:56]
自民党の谷垣禎一総裁は2日昼の党代議士会で、菅直人首相が東日本大震災への対応に「一定のめどがついた段階」との条件付きで退陣する考えを表明したことについて「一定のめどが一体いつなのか全く言及していない。茶番に過ぎない」と批判した。
石原伸晃幹事長も「民主党の行き当たりばったりの体質が明らかになった」と非難し、不信任決議案可決を避けるための発言にすぎないとの見方を示した。
小沢氏の「菅降ろし」シナリオ始動 自民にも働きかけ
[MSN産経ニュース 2011.5.14 02:00]
通常国会の会期末(6月22日)に向け、民主党の小沢一郎元代表が描く内閣不信任案同調による「菅降ろし」シナリオが始動した。複数の小沢氏の側近議員は党内で同調者の署名集めを始めるのと並行して、自民党幹部に不信任案の早期提出を持ちかけている。小沢氏は菅直人首相の早期退陣に弾みをつけたい考えだが、思うように首相を辞任に追い込めないことへの焦りの表れともいえる。
署名集めに動いているのは小沢グループの中核メンバー。13日もグループ議員の議員会館の控室を渡り歩き「まだ署名していないのか?」と圧力をかけた。
「不信任案に一直線で向かうべきだというのが小沢さんの本音だ。首相を今月下旬の主要国首脳会議(仏ドービル・サミット)に行かせないため、来週前半にヤマを設定している」
側近議員の一人は小沢氏の心中をこう推し量る。首相の党代表解任決議案の提出を念頭に、5月の大型連休前の両院議員総会開催を模索してきたのと同じように、5月中旬に不信任案可決の期限を設定することで、倒閣の機運が高まるのを期待しているようだ。
「谷垣禎一自民党総裁が今日の午後3時半に小沢氏と会談する」
自民党内では13日、こんな噂も流れた。実際にはそんな予定はなく、谷垣氏は「私が? いつ、どこで会うことになっているんですか」と目を白黒させてみせた。
谷垣氏周辺は「多数派工作に焦る小沢氏の情報戦では」といぶかしんだが、ここ数日、複数の小沢氏側近が、自民党幹部らに猛烈なアプローチをかけているのは事実だ。
「不信任案可決に必要な人数は足りてますから」
側近の一人はこう言って不信任案提出を促した。
ただ、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で刑事被告人となっている小沢氏への党内外のアレルギーは根強い。
「ポスト菅をどうするかのシナリオもなく、小沢氏が新党を作るかどうか分からないまま不信任案に同調するわけにはいかない」
署名を拒否した議員はこう語った。別の議員も小沢氏側近の動きを「ヤマ場は野党が不信任案を出す会期末直前なのに、情勢が見えていない」と批判する。
「小沢さんも焦っているのかな。首相は政局だけの人だから手ごわいぞ」
署名した中堅議員でさえ、小沢氏の戦略に疑問符を付けている。
昨日からの動きをふり返ると、午前中ぐらいまでは、あれこれ「造反」議員が出ても否決されるだろうという雰囲気だったが、午後になって急激に不信任案賛成への「流れ」が生じ、夜のニュースでは、小沢派の会合には70人以上集まり、鳩山派も「賛成」を決めた、と一斉に報道され、不信任案可決の流れはほぼ固まったかのように見えた。ところが、今朝目を覚ましてみると、鳩山派で賛成するのは鳩山氏だけという状況に。
永田町的には、午前中の菅・鳩山会談がどうだったとか、いろいろあるかも知れないが、昨日の夜から今朝にかけて、情勢を一気に変えたのは、「いま、そんなことをやっている場合か!」という被災者、国民の声。本当に、この間の一連の「政局」騒動に、国民の怒りは深い。
それにしても、「茶番」に踊ったのは、自民党、公明党だけではない。全国紙の政治部記者も、同罪だ。茶番に踊らされたのか、それとも茶番をあおったのか、それはともかく、それがまるで国政の中心問題であるかのような記事を連日垂れ流したのだから。このさい、「茶番」に踊った国会議員のみなさんも、勘違いな記事を流し続けたマスメディアの政治部記者のみなさんも、被災地へ出かけていって、泥の運び出しでも、がれきの後片付けでも、避難所のトイレ掃除でもやってみたらよいのだ。そうすれば、いま日本の政治に何が求められているのか、たちどころに分かるだろう。
東日本大震災と原発事故は、それぐらい、実は日本の政治のあり方を、根本的に変えてしまったのだ。その認識が持てない人は、政治家としても、新聞記者としても、まったく「時代遅れ」のぼんくら、役立たずにすぎないのだ。