日経新聞が報じる原発事故の「残る謎」

「日本経済新聞」は、6月2日付で、「検証その時」と題し、見開き2ページを使って東京電力福島原発事故の検証記事を載せている。

右ページでは、「福島原発事故 地震発生100時間」として、1号機から4号機まで、それぞれについて地震発生からの事故の経過をふり返っている。

左ページでは、「原子炉で何が 残る謎」として、次の3つの疑問をあげている。

  1. 津波前に損傷はなかったのか?
  2. 炉心溶融 いつから認識?
  3. 水素爆発は回避できなかった?

そして「日本経済新聞」の結論は、「耐震性、万全と言えず」「早い段階で予測か」「状況認識の誤り響く」というもの。

たとえば、耐震性の問題では、3号機について、「緊急時に原子炉を冷すための『最後のとりで』とされる緊急炉心冷却装置(ECCS)の中心」となる「高圧注水系の配管に亀裂が入った恐れがある」と指摘。さらに、「耐震設計指針で事前に想定した揺れの3割程度上回る揺れ」が観測されたことや、1、2号機の受電用遮断機が「原子炉が停止中は作動するはず」であったにもかかわらず「揺れで不具合が起きてうまく作動しなかった」ことも指摘されている。

炉心溶融については、震災翌日の3月12日、放射性セシウムなどが原発周辺で検出されたことから、午後2時に、原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官が「1号機で炉心溶融がすすんでいる可能性がある」と言及した事実をふり返っている。しかし、その後、「あくまで被覆管の損傷であって、燃料そのものの溶融ではないとした」と指摘。掲載されている時系列表では、中村審議官の記者会見後に、菅直人首相が「メルトダウンとは考えていない」と発言し、それを受けて翌13日、保安院が「炉心溶融は正確には確認できていない」と全日の発言を訂正した事実をあげている。

水素爆発にかんしては、1号機の「非常用復水器」(炉心の1時冷却水の蒸気を復水させて、炉心冷却に用いるもの。電力がなくても作動するため、電源喪失時の最後の頼みの綱とされる)が、実際には動いていなかった(急激に炉心の温度が下がったため、手順書にしたがって、東京電力の作業員が11日午後3時3分に手動で停止していた。津波で電源喪失後に、非常用復水器の弁を開く作業がおこなわれたことになっているが、これが作動したかどうかが、その時点では、分からなかった)ものを、11日深夜に記者会見した保安院が動いていると誤認していたことが、その後の作業に影響したとしている。

また、2号機の隔離時冷却系について、バッテリーでは約8時間しか動かないはずのものが、起動と停止をくり返して30時間以上動いていたことに疑問を呈している。

そして、最後に結論的に、識者のコメントを掲載しているが、そのなかで、エネルギー総合工学研究所安全解析グループ部長の内藤正則氏は、次のように述べて、東京電力にたいして「より一層の情報開示を求めたい」としている。

報告書はデータ解析の結果のみを示しており、細かい前提条件や原子炉の構造などが分からない。我々専門家に対しては説得力に欠ける。爆発を引き起こした水素の発生量など、専門家の立場からすると疑問が残る。

ここで内藤氏が「報告書はデータ解析の結果のみを示しており」と指摘しているのがポイントで、東京電力が発表した膨大な資料が、実はデータ解析の結果であって、事故直後のデータそのものではない、ということだ。東京電力は、ことここにいたっても、いまだに生のデータは公表せず、自分に都合のいいような「解析結果」のみを発表し続けているのだ。

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